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「成瀬シリーズ」の宮島未奈・最新作『ギャルにひかれて寺マルシェ』。元同級生がギャル僧に!? 悪友に巻き込まれ平凡な毎日が動き出す、大人たちの青春譚【書評】

  • 2026.9.16
ギャルにひかれて寺マルシェ 宮島未奈/KADOKAWA
ギャルにひかれて寺マルシェ 宮島未奈/KADOKAWA

どこか懐かしくて、ほのぼのしていて、くすぐったくて。それでいて、予想もしなかった“異質”な存在の登場に、思わずふふっと笑ってしまう。

いつもの地元、いつもの友だち、久々の再会と、新しい挑戦。『ギャルにひかれて寺マルシェ』(KADOKAWA)を読んでいると、不思議と元気が湧いてくる。この作品は、2024年に本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』(新潮文庫)で知られる宮島未奈の最新作。とある田舎町を舞台にした、大人になりきれない大人たちの青春譚は、ページをめくればめくるほど、私たちを前向きな気持ちにしてくれる。

「まみたん法話」にひかれて寺を訪れると、元同級生がギャル僧に!?

主人公は、亡き父の酒屋を継いだものの、商売への情熱もなく、なんとなく日々を過ごしている30歳の英介。そんな彼のもとに、高校卒業後に町を出た幼なじみの悪友・光司が現れる。この男は、しばしば厄介ごとを土産に帰ってくるのだが、今回の目的は、子どものころ、近所の陵泉寺に埋めたタイムカプセル。中に入れたポケモンカードが、今では数十万円で取引されているため、どうしても掘り起こしたいというのだ。かつて寺への出入りを禁じられた光司は、自分の代わりに陵泉寺で開かれる〈寺マルシェ〉を偵察してほしいと英介に頼み込む。気乗りしない英介だったが、マルシェのチラシにあった「まみたん法話」の文字に興味を引かれ、寺へ足を運ぶ。そこで英介が再会したのは、英介や光司と中学まで同級生だった片倉真実子。かつては真面目な優等生だった彼女が、今では実家の陵泉寺で副住職を務め、ギャルメイクで法話をしていたのだ。その変貌に英介が呆気にとられる一方、光司は彼女を〈ギャル僧〉として売り出し、ひと儲けしようと思いついて……。

ギャル僧「まみたん」のまっすぐさが胸を打つ

周囲からは“異質”に見えても、本人はただ、自分の信じる道をまっすぐ進んでいる。その姿が、ときにおかしく、ときに胸を打つ。「成瀬」シリーズにも通じる、そんな生き方のまぶしさが、この物語には息づいている。

なかでも強く心を引かれるのが、「まみたん」こと真実子だ。副住職なのにギャルメイク。袈裟をまとったギャルが法話をするという姿には、英介と一緒になって面食らってしまうが、本人は至って真面目。「ちょこちょこ言ってくる人はいるけど、あたしにはやめるって選択肢がないから逆にラクなの」と言い切り、周囲の目に左右されず、自分のスタイルを貫いている。そして、「このお寺をもっと有名にしたいの!」と、陵泉寺とマルシェを心から盛り上げようとしている。そんな真実子が、飾らない自分の言葉で語るからこそ、法話も堅苦しくならず、すっと心に入ってくる。読んでいるうちに、「ギャルと寺、ギャルと説法は、案外相性抜群なのかも」と妙に納得させられる。なんとなく毎日を過ごしてきた英介が心を動かされるように、私たちも真実子のまっすぐさに引き込まれ、いつしか彼女のファンになってしまう。

幼なじみと始める、大人たちの青春

異彩を放つのは、真実子だけではない。金儲けに目がなく、思いついたら突っ走る光司も強烈だ。英介にとっては、いつも厄介ごとを持ち込んでくる、少々うっとうしい友人。ところが、その突拍子もない思いつきに巻き込まれるうちに、代わり映えのしなかった英介の日常が動き始める。

「ひかるリザードン」に「ギャル僧まみたんシール」、そして「エクセレント・コージ」。「どうしてそうなる?」と聞きたくなる展開の連続に、笑いが止まらない。やがて思いがけない波乱も訪れるが、その災難があったからこそ、気づけることもある。

幼なじみって、いいものだなぁ。この本を読めば、そう思わずにはいられない。離れていた時間があっても、顔を合わせれば、いつだって子ども時代に戻れる。なんだってできると思っていた、あのころの気持ちを取り戻せる。それだけではない。大人になった今、再会したからこそ、一緒に新しいことへ挑戦することもできるのだ。

どうしてだろう。この本を読んでいると、停滞していた自分の日常にまで、新しい風が吹き込んでくるような気がする。大人になってからだって、なんだってできる。友だちと一緒なら、きっと怖いものなどない。代わり映えのしない日々を少しだけ動かす元気をくれる、予測不能の痛快エンターテインメント。毎日がつまらないと感じている人にこそ、いつもの日々から一歩踏み出すおともとして、ぜひこの本を手に取ってほしい。

文=アサトーミナミ

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