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統合失調症のある家族を、周囲はどう守ろうとした? 家族それぞれの葛藤を描いた理由【著者インタビュー】

  • 2026.9.16

【漫画】本編を読む

愛美は夫・賢二とごく普通の夫婦として、幸せに暮らしていた。しかしある日、突然賢二の両親が事故に遭い、義父が亡くなる。悲しみに暮れる中、義父の葬儀に現れたのは怪しげな男。その男は、夫の兄・聡一だった……。聡一という兄がいること、聡一は高校生の頃から引きこもっていることを愛美は初めて知る。義家族はなぜ聡一の存在を隠していたのか?

『隠された家族』(のむ吉:著、小瀬古伸幸:監修/KADOKAWA)は統合失調症を患う兄をめぐり、家族がどう向き合っていくかを描いた物語だ。著者であるのむ吉さんにインタビュー。自身も精神科で働いていたというのむ吉さんが、本作に込めた想いを伺った。

※統合失調症をはじめとした精神疾患の進行や症状は個人差がありますので、詳細は医療機関等にご確認ください

――統合失調症になった聡一は、幼い頃から跡取りとしての過度な期待のもと育てられていました。この背景はどのようにして考えたのでしょうか?

のむ吉さん(以下、のむ吉):統合失調症は明確な原因があって発症する病気ではなく、環境やストレスなどさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。そのさまざまな要因の一つとして、聡一が幼い頃から過度な期待を背負わされ、強いプレッシャーの中で生きてきたという背景を設定しました。統合失調症の発症は本人の弱さではなく、その人が置かれてきた環境や生きづらさが大いに影響を与えるということを描きたかったので、このエピソードを取り入れました。

――統合失調症について、本作のために調べたことはありますか?

のむ吉:精神科で看護師をしていた経験や知識を土台にしながら、改めて専門書などを参考にしました。統合失調症は思考をまとめる機能が低下し、日常生活に大きな影響を与える精神疾患です。原因が明確に特定できる疾患ではなく、遺伝的要因や環境的要因、ストレスなどさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。

――本作は、聡一の家族も聡一のためを思って奮闘してきたということがわかる描写があるのも印象的でした。母親と弟の賢二の行動や心情描写などはどのようにして描きましたか?

のむ吉:母親も賢二も、それぞれの立場で「聡一を守りたい」という思いを持つ人物として描きました。特に母親の心情については、精神疾患に対する偏見が今よりもはるかに強かった時代背景を意識して描きました。優生保護法(編集注:1948〜1996年施行。優生上の見地から、不良な子孫の出生防止を目的に障害者らへ不妊手術を強制した法律で、1996年に母体保護法に改正された)のもと、強制不妊手術の対象になってしまう可能性があった時代を知っている人としては、息子を精神科へ連れて行くことはとても勇気のいることだったと思います。そのため母親は「息子が今以上に傷ついてしまうかもしれない」という強い不安によって、社会から聡一を隠すことを選択します。

私自身にも子どもがいますが、当時のような社会の中であれば、精神科を避けたいという心情には共感できます。しかしその選択が正しいというわけではなく、結果として聡一が社会と関わる機会を長期的に失ってしまうこととなりました。

取材・文=原智香

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