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ソウルの昌徳宮で出合う、韓国の工芸と現代アート【エディターの偏愛録】

  • 2026.9.15

白磁壺が出迎えてくれた『Kヘリテージ アート展』

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9月の初め、雲一つない空の下、ソウルの昌徳宮(チャンドックン)で韓国の工芸とアートを見る清々しいひと時を持ちました。9月1日~6日まで開かれた『Kヘリテージ アート展:つながりの線』という展覧会で、伝統工芸と現代アート・デザインの作家48名が参加。朝鮮王朝時代の宮殿である昌徳宮内の楽善斎(ナクソンジェ)一帯が会場に。戸が開け放たれ、訪れた人は外から順々に室内の展示を見て回ります。まず目を奪われたのは、大きな白磁の満月壺(タルハンアリ)。シン・ウォンドン(MUJIN)の作品で、悠々と佇み、人々を迎え入れてくれます。

隣の間には、韓国の伝統的な紙、韓紙にモノトーンで人物を描くアーティスト、ムナッシの絵画が並んでいたのですが、サイズ感もあってあたかもそこに人物がいるかのように感じられました。伝統的な飾り金具、装錫(チャンソク)を白銅で製作し、プレキシガラスに合わせた、チョン・グホのバンダジ(韓国の箪笥)が自然光を受けてきらめきます。

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陶芸家のチャン・ドンスがつくり出した、いくつもの表情豊かな像にも見入ってしまいました。魔除けとして屋根の上に並べられる、雑像(チャプサン)から着想を得て制作されています。一見すると古いもののようですが、チャン・ドンスが途絶えていた井戸茶碗の技法を研究し創作した現代の作品です。

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シン・ウォンドンの白磁壺の展示には、さまざまな大きさのものを並べたインスタレーションもありました。白い座布団の上に一つ一つが座っている光景は、白磁壺が和やかに寄り集まっているようでもあり、ぷかぷかと海原に浮かんでいるようでもあり。眺めていると心が和みます。

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歴史的な場で、現代アートまで創造の線がつながっていく

匠の技による刺繍や象嵌、矢、刀剣などの伝統的な品々にとどまらず、コンテンポラリーなクラフトや、絵画や写真、立体作品などのアートも選ばれていたのが新鮮でした。タイトルにある「線」とは、時代を超えて人々の創造の線をつないでいくという意味が込められています。

例えば巨大な岩は、現代アーティストのイ・テスの作品。金属のバーの上に絶妙なバランスで岩が浮いているようですが、発泡ポリスチレンに着色して本物の岩そっくりに描き込んで制作されています。

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下の写真の3点の家具は、木工家具デザイナーのパク・ジョンソンの作品。朝鮮の伝統的な木工技術を学び、シェーカー家具の精神に影響を受けたクリエイターで、ミニマルであり、かつ空間の中で強い存在感を放つ作品が特徴です。ポン・ジュノ監督の映画『パラサイト』の家具を手掛けたことでも知られており、デザインマイアミなど国際的な舞台での発表も行っています。

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多彩なクリエイションを見ていくうちに、楽善斎という場の端正な美しさを改めて意識させられました。楽善斎は1847年に朝鮮王朝の第24代国王、憲宗の書斎兼居所として建造。翌年隣接して建てられた側室の住居の錫福軒(ソクボッコン)と純元王后の住居の壽康斎(スガンジェ)を含めた楽善斎一帯は、もとは昌徳宮の東に位置する昌慶宮(チャンギョングン)に属していました。晩年の李方子が、1989年に世を去るまで暮らした場所としても知られています。

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ほかの宮殿のように、カラフルな色彩で、壁や柱、天井に絵や模様を描く丹青という装飾がありません。住まいをベースにした楽善斎のシンプルな建築美が、伝統の技やマテリアルに目を向けたこの展覧会を引き立てているように感じます。『Kヘリテージ アート展』は今年で4回目の開催とのこと。歴史的な建築の中でクリエイターの創造性と伝統が交差して生まれる景色はなんとも楽しく、来年もぜひ楽善斎で、工芸やアートを披露する展覧会を開催してほしいと思いました。

楽善斎は昌徳宮の東側に位置。 Hearst Owned
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