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「邪魔なんだけど」靴屋で試着用の箱を蹴って出ていった客。箱を蹴られた直後、他のお客様が見せた気遣い

  • 2026.9.16

平日の夕方、通路に5足を並べたままだった

モールに入っている靴屋で働いていたころの話だ。平日の夕方は客足がまばらで、店内にはパンプスを探しに来たお客様と、私しかいなかった。

サイズ違いと色違いを次々に出していくうちに、通路には箱と靴が5足ぶん、細長く並んでいた。

片づけながら接客するより、先に全部見ていただくほうが早いと思ったのだ。

お客様は鏡の前で何度か足を動かしてから、履いている靴を見下ろした。

「あ、こっちのほうが楽かも。さっきのは少し当たる感じがして」

「そうですね。こちらのほうが甲に少し余裕があります。黒も並べてみますか?」

「お願いします。黒も気になってて」

そんな話をしていたとき、入口から2人連れが入ってきた。

母親と、高校生くらいの娘さんに見えた。

二人は通路を進みかけて、並んだ箱の前で足を止めた。娘さんが棚側へ体を寄せたのを見て、私はそこで初めて、通路をかなり狭くしてしまっていたことに気づいた。

「すみません、今どけますね」

私が慌ててしゃがもうとすると、母親が足元を見て眉をひそめた。

「…邪魔なんだけど」

そう言って、目の前にあった箱を足で押しのけるように蹴った。

箱は棚の脚まで滑り、中の薄紙と型紙が床にこぼれ、靴も片方転がった。

「ちょっと、お母さん…」

娘さんが袖を引いたが、母親は「もういい、行こう」と言い、そのまま店の外へ出ていった。娘さんも一度こちらを振り返ってから、あとを追った。

閉店後、店長が並べ方を変えた

あまりに一瞬のことで、私もお客様もすぐには動けなかった。

「申し訳ありません。すぐ片づけますので…」

私がしゃがむと、お客様も隣で床に落ちた薄紙を拾い始めた。

「あ、お客様、大丈夫です。私がやりますから」

「いいですよ、これくらい。二人でやったほうが早いですから」

「でも…すみません」

「大丈夫ですよ。それより、まだ迷ってるので、続き見てもいいですか?」

お客様が少し笑ったので、私も「もちろんです」と答えた。

床に落ちた靴と薄紙を箱へ戻し、通路に出していた残りの靴もいったん壁際へ寄せた。

改めて黒とベージュを並べると、お客様は何度か履き比べたあと、ベージュのほうを指した。

「うん、やっぱりこっちにします」

「ありがとうございます。サイズは大丈夫そうですか?」

「はい。こっちなら長く歩いても平気そう」

ようやく普段の接客に戻れた気がして、私も少しほっとした。

レジで商品を包み、袋を渡すと、お客様は「また見に来ますね」と笑った。

「ありがとうございます。今日は本当に助かりました」

そう伝えると、お客様は軽く会釈をして店を出ていった。

閉店後、レジを締めながら店長に一部始終を伝えた。

「さっき、通路の箱を見たお客様に『邪魔なんだけど』って言われて、箱を蹴られてしまって……」

店長は私と一緒に売り場へ出て、箱を並べていた通路を見た。

「ここに5足出してたの?」

「はい。履き比べてもらっていて……。私も出しすぎました」

店長は通路の幅を見てから、壁際のベンチを指した。

「箱を蹴るのはもちろん困るけど、これだけ並ぶと通りにくいね。明日から出し方を変えよう」

「はい」

「試し履きの靴はベンチの横までにして、空いた箱はその都度台車に戻そうか」

翌日の朝礼で手順が全員に共有され、それから通路に箱が並ぶことはなくなった。

ベンチの横のマットには、人が無理なく通れるだけの余白を残して、試し履きの靴を置くようになった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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