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「うん。忘れないでね」卒業式の夜に立て替えた3000円。10年後、友人が差し出した封筒の中身

  • 2026.9.14
「うん。忘れないでね」卒業式の夜に立て替えた3000円。10年後、友人が差し出した封筒の中身

卒業式の夜、友人の手が財布の中で止まった

定時制の高校の卒業式が終わった夜、同じ学年の何人かでカラオケへ行った。

昼は働き、夜は学校へ通った三年間。

その日で終わると思うと、なかなか帰る気になれなかった。

「そろそろ出る?」

「うん。明日も朝から仕事なんだよね」

帰り支度が始まり、それぞれ自分の分を出すことになった。

すると、隣にいた友人が財布を開いたまま困った顔をした。

「どうしたの?」

「ごめん。ちょっと足りなくて…今日だけ立て替えてもらっていい?」

友人の分は3000円ほどだった。

一瞬迷ったものの、卒業式の夜に会計でもめるのも嫌だった。私は「分かった」と答え、自分の分と一緒に支払った。

店を出る前、友人がもう一度そばに来た。

「ほんと、ごめんね。ちゃんと返すから」

「うん。忘れないでね」

冗談っぽく返すと、友人は少し申し訳なさそうに笑った。

「忘れないよ。ありがとう」

外へ出ると、みんなそれぞれ違う方向へ帰っていった。

けれど卒業後、その友人とは会わなくなった。3000円が返ってくることもなかった。

10年後、友人が差し出した小さな封筒

それから10年ほどたったころ、同じ学年で集まるという知らせが届いた。

3000円のことで今も怒っていたわけではない。

ただ、卒業式を思い出すと、あの夜の会計まで一緒に思い出すことはあった。

会場へ入ると、あの友人も来ていた。

「久しぶり」

「ほんと久しぶり。元気だった?」

最初は仕事や昔の学校の話をしていたが、友人はどこか落ち着かない様子だった。

しばらくして、友人が鞄から小さな封筒を取り出した。

「あのさ…これ、ずっと渡さなきゃって思ってた」

中には3000円が入っていた。

「あのときの?」

「うん。連絡先もちゃんと聞いてなくて、探そうと思ったこともあったんだけど……そのままになっちゃって。本当にごめん」

「まだ覚えてたんだ」

「卒業の時期になると、思い出してた」

私は封筒を受け取った。

「10年は長かったね」

そう言うと、友人は「ほんとだよね」と苦笑した。

「でも、返してくれてありがとう」

友人はようやく少し笑った。

3000円が戻ってきたことより、あの夜のことを気にしていたのが私だけではなかった。そのことのほうが、少し意外だった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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