1. トップ
  2. エピソード
  3. 「旦那さんって、いくらくらい稼いでるの?」夫の収入からローンまで聞かれた私が、笑って流すのをやめた理由

「旦那さんって、いくらくらい稼いでるの?」夫の収入からローンまで聞かれた私が、笑って流すのをやめた理由

  • 2026.9.14

待合の椅子で話すようになった

子どもの習い事の待合で、毎週顔を合わせる人がいました。

レッスン中は、保護者がガラス越しに教室の様子を見ながら待つことができます。いつも同じ時間に顔を合わせるうち、自然と話すようになりました。

私は自分から話しかけるのがあまり得意ではありません。その人はいつも明るく声をかけてくれるので、最初は気さくで話しやすい人だと思っていました。

ただ、何度か会ううちに、聞かれることが少しずつ踏み込んだ内容になっていきました。

「ご主人って、休みの日は家にいる?」

「そうですね。だいたい家にいます」

「いいなあ。うちはすぐ出かけちゃうのよ。たまには家にいてよって思うんだけどね」

そんな会話なら、私も笑って返せました。

困ったのは、そこから先でした。

その日は、私を含め四人ほどの保護者が待合にいました。家を建て替えた知り合いの話から、住宅ローンの話題になったときです。

隣にいたその人が、ふいにこちらを向きました。

「そういえばさ、旦那さんって、いくらくらい稼いでるの?」

あまりに突然だったので、私は一瞬返事に詰まりました。

「ええ…まあ、普通だと思いますよ」

曖昧に笑えば終わると思っていました。

ところが少しして、また聞かれました。

「でも、だいたいでいいから。月にどのくらい?」

「いや、そこまではちょっと……」

私が笑って濁すと、その人は「あ、そう?」と言いながら、さらに続けました。

「じゃあ家のローンは?毎月けっこう払ってる?」

「細かいところは夫が見てるので、私はそこまで把握してなくて」

「えー、そうなの? 私だったら気になっちゃうな」

私は壁の時計を見て、「今日は少し長いですね」とレッスンの話へ戻そうとしました。

それでも、しばらくするとまた声をかけられました。

「じゃあさ、貯金は?どのくらいあるの?」

今度は、すぐに言葉が出てきませんでした。

さっきまで話していたほかの二人も黙っています。待合の空気が一瞬止まったように感じました。

私が返した言葉

私は鞄の持ち手を握り直しました。

これまでのように笑って流していたら、たぶんまた聞かれる。

そう思って、相手の顔を見ました。

「ごめんね。お金の話は、私あんまりしたくないんだ」

なるべく角が立たないよう、普通の声で伝えました。

相手は少し目を丸くしました。

「あっ……ごめん。私、こういうのすぐ聞いちゃうんだよね。遠慮ないってよく言われる」

「うん。ほかの話なら全然いいんだけどね」

「そっか。ごめんね。じゃあ、この話はやめよ」

少し間が空いてから、その人はガラスの向こうを見ました。

「そういえば発表会の衣装、もう決めた?」

「まだなんです。そろそろ決めないとですよね」

そこで話題は切り替わりました。

少し気まずさは残りましたが、その日以降、お金について聞かれることはありませんでした。

私も以前より、家のことを細かく話さないようになりました。避けたいわけではありません。ただ、ここまでは話せる、ここから先は話さない、という線を自分の中で決めただけです。

何週間かたった日、またその人と隣の席になりました。

ガラス越しに教室を見ていたその人が、小さな声で言いました。

「今日、いい感じじゃない? 最後までいけそう」

「そうだといいんだけど。いつも途中で止まっちゃうから」

「でも今日は頑張ってるよ」

ほどなくしてレッスンが終わり、ドアが開きました。

うちの子は私を見つけると、うれしそうに駆け寄ってきました。

「今日ね、最後まで弾けたよ!」

「ほんと?よかったね」

隣にいたその人も、子どもに向かって「やったね」と笑いました。

人との距離は、近ければいいというものでもありません。相手との関係を悪くしたくないからこそ、話したくないことは曖昧に笑うのではなく、きちんと伝えてもいいのだと思った出来事です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ