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「ちょっと重くて」電車で背中にもたれてきた乗客。だが、我慢せずに伝えた結果

  • 2026.9.14

背中に、ずしりと重さがかかった

退勤時間の車内は、扉のそばまで人で埋まっていた。

私は入口の脇に立ち、暗い窓に映る自分の輪郭をぼんやり眺めていた。あと二つ先で降りる。それまでやり過ごせばいいと思っていた。

駅に停まり、扉が開くと、さらに人がまとまって乗り込んできた。

イヤホンをつけたスーツ姿の人が、私に背を向ける形で最後に入ってくる。

扉が閉まり、電車が動き出した瞬間だった。

背中に、ずしりと重さがかかった。

最初は、混んでいるから押されたのだと思った。私は半歩だけ前へ出た。けれど、背中に触れている重さも、そのままついてくる。

「え…?」

思わず小さく声が漏れた。

肩ごしに見ると、その人はスマートフォンの画面を見ていた。動画らしきものが流れ、指がときどき画面を滑っている。

つり革にも、手すりにも、手は伸びていなかった。

もしかして、私にもたれている?

そう気づいてからも、すぐには声をかけられなかった。混んでいるし、本人も気づいていないだけかもしれない。少しくらいなら我慢したほうがいいのかもしれない。

そう思っているうちに電車が揺れ、また背中に重さがかかった。

さすがに足に力を入れ続けるのがつらくなり、私は前を向いたまま声を出した。

「すみません…もたれないでもらえますか」

返事はなかった。

イヤホンで聞こえていないのかもしれない。もう一度言うのは気が重かったけれど、このまま我慢するのもしんどい。

私は少しだけ振り返り、さっきより声を大きくした。

「あの、すみません。ちょっと重くて…もたれないでもらえますか」

二度目で、その人がはっと顔を上げた。

「えっ…あ、すみません」

背中の重さがふっと消えた。

その人は少し慌てた様子で体を離し、すぐ上にあった手すりへ手を伸ばした。

「……大丈夫です」

私も、それ以上は何も言わなかった。

気まずい数秒のあと、車内はいつもどおりに戻った

そこからしばらく、私のまわりだけ妙に静かになった気がした。

相手は手すりにつかまり、私はそのまま前を向いていた。

次の停車案内が流れるころには、車内は何事もなかったようにいつもの空気へ戻っていた。

翌日の昼休み、同じ部署の先輩にその話をした。

「昨日、電車で知らない人にずっともたれられてたんですよ」

先輩が驚いた顔をした。

「え、ずっと?寝てたわけじゃなくて?」

「スマホ見てました。最初は混んでて押されてるだけかなって思ったんですけど、私が動いてもそのままで…」

「それはきついね。何か言えた?」

「一回言ったんですけど聞こえなかったみたいで。もう一回、『ちょっと重くて』って」

先輩は少し眉を上げた。

「よく二回目を言えたね。私だったら、たぶん固まっちゃう」

「私も、言うまで結構かかりました。こっちが細かいこと言ってるみたいになったら嫌だなって思って」

「いや、それは言っていいでしょ。ずっと支えるのは無理だよ」

「…ですよね」

そう言ってもらえて、ようやく少し肩の力が抜けた。

相手がなぜ私にもたれていたのかは、今も分からない。気づいていなかったのか、それとも深く考えていなかっただけなのか、それは本人にしか分からない。

ただ、声をかけると相手はすぐに離れ、手すりにつかまった。

最初からそこに手すりがあったのなら、できれば使ってほしかった。それでも、何も言えないまま降りるより、あのとき二度目の声を出せてよかったと思っている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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