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「もっとしっかり歩け」転んだ子を振り返らず歩く親。だが、ようやく足を止めた瞬間

  • 2026.9.14
「もっとしっかり歩け」転んだ子を振り返らず歩く親。だが、ようやく足を止めた瞬間

前を歩く大人と、うしろの子どもたち

休みの日の昼過ぎ、私は公園のベンチで缶コーヒーを飲んでいた。

特に予定もなく、木陰から遊具のあたりをぼんやり眺めていた。

そこへ、親らしい大人二人と子ども二人が歩いてきた。

上の子は小学生くらいで、下の子はまだ歩幅が小さく、ときどき小走りになっていた。

気になったのは、大人二人が少し先を歩いていたことだった。

二人とも手元の画面に目を落とし、ときどき指を動かしている。

「あ、ちょっと待って。これ、あと一回だけ」

「まだやってるの?じゃあ先行くよ」

そんなやり取りをしながら歩いていて、後ろの子どもたちを見る様子はなかった。

下の子は離されまいと何度か小走りになっていた。

そのとき、砂の浮いたところで足を取られた。前のめりに転び、両手とひざを地面につく。

「ねえ、転んだよ」

上の子が足を止め、前を歩く二人に声をかけた。

すると、一人が画面から目を上げないまま答えた。

「もっとしっかり歩け」

下の子は起き上がらず、地面に手をついたままだった。

「まだ立ってないよ」

上の子がもう一度言うと、同じ声が返ってきた。

「もっとしっかり歩け」

二人はすぐには戻らず、さらに二、三歩進んだ。

私はさすがに気になり、缶をベンチに置いて立ち上がった。

差し出した手と、戻ってきた足音

近づいてしゃがむと、下の子は顔を伏せたまま、手についた砂を見ていた。

「大丈夫?痛かった?」

声をかけると、小さくうなずいた。

「……ひざ、いたい」

「そっか。びっくりしたね。立てそう?」

私が手を差し出すと、その子は少し迷ってから握ってきた。

「ゆっくりでいいよ」

手を支えると、子どもは自分で立ち上がった。ひざは少し赤くなっていたものの、血は出ていないようだった。

そのとき、前のほうから足音が近づいてきた。

先ほどまで歩いていた大人の一人が、こちらへ戻ってきたのだ。手にしていた画面は下ろしていた。

「ごめん。大丈夫か?」

子どもの前にしゃがみ、ひざをのぞき込む。

「ころんだ…」

「うん。痛かったな。ちゃんと見てなくてごめん」

子どもは少し口をとがらせながら、もう一度うなずいた。

「歩けそう?ちょっと休む?」

「歩ける」

「そっか。じゃあ今度はゆっくり行こう」

親はひざについた砂をそっと払ってから、私のほうへ向き直った。

「すみません。ありがとうございました」

「いえ。大きなけがじゃなさそうでよかったです」

「ほんと、ちゃんと見てないとだめですね…」

そう言って、手にしていたものをポケットへしまった。

少し遅れて、もう一人の大人と上の子も戻ってきた。

「大丈夫だった?」

上の子が聞くと、下の子は小さく「うん」と答えた。

四人がまた歩き始めると、今度は大人の一人が下の子の手を握っていた。もう一人も上の子のすぐ横を歩いている。

さっきまで開いていた距離はなくなり、子どもたちの歩幅に合わせるように、四人はゆっくり公園の奥へ向かっていった。

私はベンチへ戻り、置いていた缶を手に取った。ほんの数分の出来事だったが、転んだ子がようやく安心したように手をつないだ姿が、しばらく頭に残っていた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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