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「あなたは何も悪くないよ」レジで投げられたお金を拾った私。だが、次の客がかけた一言に救われた瞬間

  • 2026.8.29

台の上に散らばった小銭

ずいぶん前、たこ焼き屋でアルバイトをしていたころのことです。

注文を聞いて焼き担当の人に伝え、出来上がったものを渡して会計をする。覚えてしまえば難しい仕事ではありません。ただ、混み合う時間には次々とお客さんが来るので、慌てず手際よく、丁寧に対応することを心がけていました。

ある日の夕方、一人のお客さんが注文に来ました。最初からどこか機嫌が悪そうで、こちらが声をかけても返事は短く、ほとんど目も合いません。

理由は分かりませんでしたが、私はいつもどおり注文を通し、焼き上がったたこ焼きを包んで渡しました。

そして会計をしようとしたときです。

その人は手にしていた小銭を、こちらへ投げるように出しました。硬貨がトレーに当たり、何枚かが台の上に散らばります。

あまりに突然で、私は何も言えませんでした。

一枚ずつ拾い、金額を確認して、お釣りを渡します。最後に「ありがとうございました」と言いましたが、自分でも分かるほど声が小さくなっていました。

顔を上げたときには、その人はもう店を離れていました。

次のお客さんが、注文より先に言ったこと

後ろにはまだお客さんが並んでいます。気持ちを切り替えなければと思い、私は次の人の前に立ちました。

すると、そのお客さんは注文を言うより先に、私の顔を見ました。

「レジであんな渡し方をされて、あなたは何も悪くないよ」

どうやら、すぐ後ろで一部始終を見ていたようでした。

一瞬、返事ができませんでした。けれど、その言葉を聞いた途端、張り詰めていた気持ちが少しだけほどけたのを覚えています。

そのときになって、自分の手がわずかに震えていることにも気づきました。

小銭が散らばった音が聞こえていたのか、焼き場から担当の人もこちらをのぞきました。

「大丈夫?」

「大丈夫です」

今度は、さっきより普通の声で答えることができました。

声をかけてくれたお客さんは、それ以上その話を続けませんでした。いつもと同じように注文をして、たこ焼きを受け取ると、そのまま帰っていきました。

嫌な出来事だったことは確かです。それでも今になって強く覚えているのは、小銭を投げられた瞬間より、そのあとにかけてもらった短い言葉です。

接客中に困っている人を見かけると、ときどき、あのとき助けられた気持ちを思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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