1. トップ
  2. エピソード
  3. 「昨日はもっと安かっただろ」値段をめぐって止まったレジ。だが、店長が示した変わっていない事実

「昨日はもっと安かっただろ」値段をめぐって止まったレジ。だが、店長が示した変わっていない事実

  • 2026.9.18
「昨日はもっと安かっただろ」値段をめぐって止まったレジ。だが、店長が示した変わっていない事実

土曜の昼、レジの前で列が止まった

大学生のころ、駅前の喫茶店でアルバイトをしていました。

土曜の昼は一週間でいちばん混む時間で、その日もレジには人が並んでいました。

50代くらいの男性の番になったときです。男性はレジ横の品書きを何度か見直すと、少し納得できないような顔で私に言いました。

「これ、昨日はもっと安かっただろ?」

突然そう言われ、私はもう一度品書きに目をやりました。

「こちらには、この金額で出ていますが…」

すると男性は眉を寄せ、少し声を強めました。

「いや、そんなはずないよ。昨日はもっと安かっただろ」

2度目は、後ろに並んでいる人にもはっきり聞こえる声でした。

「すみません。私ではこれ以上分からないので、責任者に確認しますね」

「そうしてくれよ。日によって値段が違うなんてことはないだろ?」

男性は何度も品書きに目をやっていました。怒っているというより、本当に値段が違うと思っているようにも見えました。

私は店の奥にいた店長へ声をかけました。その間にも会計は止まり、後ろのお客さんたちは黙ってレジのほうを見ています。

店長は、確認できることだけを伝えた

店長はすぐに出てきて、私の隣に立ちました。

「お待たせしました。どうされましたか?」

男性は品書きを指しました。

「これだよ。昨日はもっと安かったと思うんだけど」

「昨日ですね。確認します」

店長は品書きとレジに登録されている金額を確かめました。

「現在はこちらの金額で登録されています。それと、この商品の価格変更はしていません」

「でもなあ…昨日見たときは違ったと思うんだよ」

さっきまでより、男性の声は少し小さくなっていました。

店長は言い返すような調子にはならず、落ち着いた声でもう一度伝えました。

「そう思われたんですね。ただ、こちらで確認できる限り、価格は変わっていません」

男性はしばらく品書きを見つめていました。

「…そうか。じゃあ、俺が何かと勘違いしたのかな」

そう言うと、少し気まずそうに財布を開きました。

「まあ、いいや。これでお願いします」

「ありがとうございます」

男性は会計を済ませると、それ以上何も言わずに店を出ていきました。

店長は男性の背中を見送ると、すぐにレジの前へ向き直りました。

「お待たせしました。次の方、どうぞ」

その声で、止まっていた列がようやく動き始めました。

昼の混雑が少し落ち着いたころ、店長が私のところへ来ました。

「さっき、びっくりしたでしょう。大丈夫だった?」

「はい。でも、何て答えればいいのか分からなくなってしまって…」

すると店長は、小さくうなずきました。

「分からないことは、無理に答えなくていいよ。ちゃんと呼んでくれれば大丈夫だから」

「ありがとうございます」

その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けました。混んでいる時間ほど何とか自分で対応しなければと思っていましたが、確認できないことを曖昧に答えないのも大切なのだと、そのとき初めて実感しました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ