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「おい。こっち、早く来てよ」閉鎖中のレジを開けろと迫られた店員。後日、店舗で決めたルールとは

  • 2026.9.15
「おい。こっち、早く来てよ」閉鎖中のレジを開けろと迫られた店員。後日、店舗で決めたルールとは

閉じているほうの台に、かごが置かれた

学生の頃、近所のスーパーでレジのアルバイトをしていた。

日曜の昼過ぎは客足が少し落ち着く時間で、二台あるレジのうち一台だけを開け、もう一台には閉鎖の札を立てておくのが決まりだった。

その日も、私が入っているレジには三人ほどが順番に並んでいた。

そこへ、スーツにネクタイ姿の男性がやってきた。

かごの中に入っていたのは、缶コーヒーが一本だけだった。

男性は列の最後には並ばず、そのまま閉鎖札の立っている隣のレジへ向かった。

そして誰もいない台に、ガタン、とかごを置いた。

「おい。こっち、早く来てよ」

私は一瞬、自分に言われたのか分からなかった。

「申し訳ありません。そちらのレジは今、閉めているんです。こちらへお並びいただけますか」

男性は閉鎖札を見てから、こちらを向いた。

「一本だけなんだから、こっち開ければいいだろ」

「順番にご案内していますので…」

「そんなのいいからさ。早くしてよ」

声が少しずつ大きくなり、並んでいた人たちも振り返り始めた。

私は目の前のお客様の会計を続けながら、どうしたらいいのか迷った。

言い返せば余計に長くなりそうだったし、だからといって男性だけを先に通すのも違う。

近くにいた社員に声をかけると、その人が男性のところへ行ってくれた。

「申し訳ありません。今はこちらのレジだけなんです。順番にご案内しますので、お並びください」

「たった一本だよ?」

男性は不満そうだったが、結局は列の最後に並んだ。

順番が来てバーコードを通している間も、男性はまだ納得できない様子だった。

「これくらい、先にやってくれてもいいじゃん」

「お待たせして申し訳ありません」

そう返したものの、手にはじっとり汗をかいていた。

男性が帰ったあと、次に並んでいた年配の女性が小さな声をかけてくれた。

「大変だったわね。気にしなくていいからね」

その一言で、張っていた肩が少しだけゆるんだ。

勤務が終わったあと、私は店長にそのことを報告した。

「閉じてるレジにかごを置かれて、『早く来い』って言われて…。どうしたらいいのか分からなくなりました」

店長は少し顔をしかめた。

「そういうときは、一人で対応しなくていいよ。すぐ呼んで」

「でも、呼んでる間に列が止まったらと思って…」

「列のことはこっちで考えるから。無理に相手しなくていい」

レジの内側に、交代の合図を決めた

店長はその場で、対応に困ったときの合図を決めてくれた。

同じようなことがあったら、私は手を止めずにレジのボタンを二回押す。

それを聞いた店長か社員が、レジまで来ることになった。

「次からは俺が出るから」

「でも、私が逃げてるみたいになりませんか」

思わずそう聞くと、店長は首を横に振った。

「逃げるんじゃないよ。対応を代わるだけ。アルバイト一人で抱えることじゃないから」

その言葉を聞いて、少し気持ちが軽くなった。

それからひと月ほどした、日曜の昼だった。

見覚えのあるスーツ姿の男性が自動ドアから入ってきた。

棚から缶コーヒーを一本取る姿を見た瞬間、前回のことが頭に浮かんだ。

男性がレジのほうへ歩いてきたところで、私はボタンを二回押した。

ほどなくして店長が事務所から出てきて、営業中のレジのそばに立った。

男性はまた閉じている隣のレジへ目を向けた。

「そっち、開けられないの?」

店長がすぐに答えた。

「申し訳ありません。今はこちらの一台だけなんです。順番にご案内します」

「一本だけなんだけど」

「はい。すぐ順番が来ますので、少々お待ちください」

強い言い方ではなかった。でも、迷いのない声だった。

男性は少し不満そうな顔をしたものの、それ以上は何も言わず、列の最後に並んだ。

私はそのまま目の前のお客様の会計を続けた。

男性の順番が来たときも、店長はレジの横に残っていた。

私は缶コーヒーのバーコードを通し、いつもどおり会計を終えた。

「ありがとうございました」

男性はレシートを受け取ると、その日は何も言わずに店を出ていった。

列も止まらなかった。

その男性は、私がアルバイトを辞めるまでに何度か店へ来た。

姿を見るたびに少し緊張はしたけれど、もう一人でどうにかしなければとは思わなくなっていた。

困ったときに誰かへ対応を代わってもらうことは、仕事を放り出すことではない。

あのとき店長に言われた「対応を代わるだけ」という言葉を、私は長く覚えている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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