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「ベッドから起き上がろうとしたら…」激しいめまいと吐き気に襲われた50代女性→救急外来で告げられた“意外な原因”にあ然

  • 2026.9.5
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさん、こんにちは。救急や全身管理の現場で患者さまの安全管理に携わっている、麻酔科専門医の松岡雄治です。

「朝、ベッドから起き上がろうとしたら、突然天井が激しく回り出した」——。激しいめまいと止まらない吐き気に襲われ、強い不安からパニックになりそうになってしまった50代女性のAさん。

救急外来へ駆け込み、告げられた病名にAさんはあ然としました。原因は脳ではなく、なんと耳の奥にある「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」だったのです。 適切な処置を受けてひとまず落ち着いたものの、「あの発作が襲ってきたらどうしよう……」と、不安な日々を送られています。

なぜ、朝起き上がるだけの動作で、これほど激しいめまいが起きるのでしょうか? 今回は、突然の激しいめまいを引き起こす「耳の奥のサイン」とメカニズムについて詳しく解説します。

耳の奥で起こる、小さくて厄介な「石の迷子」のメカニズム

そもそも私たちの耳の奥には、体の傾きを感じ取るための「耳石(じせき)」という小さなカルシウムの粒が乗ったセンサーがあります。この石は本来、頭を動かすと重力に合わせて動き、脳に「体がどちらに傾いているか」を正しく伝える「おもり」のような大切な働きをしています。

ところが、この大切な石が本来の場所から外れてしまうと、以下のようなメカニズムで激しいめまいを引き起こします。

【耳の奥の石が迷子になるフロー】

  • 耳石のはがれ(剥離):加齢やカルシウム代謝の乱れにより、耳の奥のセンサーから、炭酸カルシウムの結晶である「耳石」がポロリとはがれます。
  • 三半規管への迷入:はがれた耳石が、体の回転を感知する「三半規管」というリンパ液で満たされたチューブ内に迷い込みます。
  • リンパ液の波立ち:頭を動かすたびにチューブ内で石が転がり、周囲のリンパ液を大きく揺らして波を立てます。
  • 脳の錯覚:実際は体が動いていないのに、リンパ液の揺れを感じた脳が「体が回転している」と錯覚し、視界がぐるぐる回るめまいを招きます。
     

「視界が激しく回り、吐き気に襲われたら、脳の重病に違いないと不安になってしまうものです」。「大騒ぎして恥ずかしい」などとご自身を責める必要はまったくありません。実際に、こうした迅速な対応が一命を取り留めることもあるのです。

一方で、ちょっと疲れただけだろうと不調があっても様子を見る方もいらっしゃいます。連日とても忙しかったなど妥当な理由が見つかる場合には、特にその傾向があります。
今回のケースを通して覚えておいていただきたい「注意すべき境界線」があります。
この良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、耳が原因のめまいのなかで最も頻度が高い代表的な病気です。特に50代以降の女性や、骨粗鬆症をお持ちの方、あるいは高血圧、脂質異常症、運動不足などの背景がある方に多く見られます。骨が弱くなると、耳の奥にある耳石の結合も緩み、はがれ落ちやすくなるためです。

さらに、このめまいは「お薬だけでは根本的に治りづらい」のが特徴です。物理的に迷い込んだ石を溶かして消す薬はないからです。
ただし、仕組みを知っていれば怖くありません。実は、頭を特定の順序で傾けて、迷子の石を元の位置に物理的に滑り込ませて戻す「耳石置換法」や「寝返り体操」が、お薬以上に優れた効果を示す確かな治療法なのです。

受診時や状況把握のための3つの観察ポイント

命に関わる「脳卒中」のめまいと、耳の石の迷子による「BPPV」を見分ける参考目安として、また受診時に医師へ正確に状況を伝えるためのチェックポイントとして、以下の3つのサインをご自身で確認してください。(※初めて経験する激しいめまいや、強い不安・不快感がある場合は自己判断で放置せず、必ず医療機関を受診してください)

1. めまいは「頭を動かしたときだけ」起き、通常1分以内でピタッと治まる

石が転がり終わってリンパ液の波が静まると、めまいは収まります。脳卒中の場合は、頭を動かさなくても何時間も持続します。

2. 手足のしびれ、ろれつが回らないなどの「脳の症状」を伴わない

脳の血管障害であれば、半身の動かしにくさや言葉のしゃべりにくさが伴うことが多いです。これらが一切ないのは、耳が原因である可能性が高い証拠です。

3. 同じ動きをすると、繰り返すたびに「めまいが軽くなる」

繰り返すことで、脳や感覚器が刺激に慣れていく現象が見られます。脳卒中の場合は、繰り返しても軽くなりません。

めまいがしたら慌てずに

「突然のめまいで大変な病気かと思ったけれど、まさか原因が耳の奥の小さな石だったなんて」。そうやって一時の強い不安を恥じる必要はまったくありません。めまいで気持ち悪くなったときには、慌てず前述のサインをチェックすることから始めましょう。

もしBPPVが疑われる場合でも、自己流で体操を行うのは避け、まずは耳鼻咽喉科や脳神経外科などを受診してください。医師の診察を受けて原因となる箇所を特定し、正しく指導された体操(寝返り体操など)を行うことが、安全かつ確実な改善への一番の近道です。

激しいめまいの不安を取り除き、安心して朝を迎えられる穏やかな日常を取り戻せるよう、私たち医療従事者がサポートします。少しでもおかしいと感じたら、いつでも医療機関を頼ってくださいね。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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