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医師「様子を見続けるのはやめて」→実は『糖尿病』を悪化させる原因になるかも…歯に現れる「4つの危険な変化」とは?

  • 2026.9.5
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ふと鏡を見たとき、歯ぐきが赤く腫れていたり、歯みがきのときに出血したりして、不安に思ったことはありませんか?ネット上では「歯ぐきからの出血は糖尿病の兆候」といった情報を見かけることもありますが、それは本当なのでしょうか。なぜ歯ぐきにトラブルが起きるのか、そして体の中で何が起こっているのでしょうか。

今回は、そんなお口のトラブルと糖尿病の意外な関係について、歯科医の鷹巣多紀さんに詳しくお話を伺いました。明日からすぐに始められるお口のケア方法もご紹介します。

歯ぐきの出血や口臭は糖尿病のサイン?知っておきたい「双方向」の関係

---実際のところ、歯ぐきの腫れや出血、口臭は糖尿病の初期症状と言えるのでしょうか?

鷹巣 多紀さん:

「歯ぐきの腫れや出血のきっかけは、ほとんどの場合、歯と歯ぐきの境目にたまった歯垢(プラーク)による炎症です。『血糖値が高いせいで血管が傷ついて出血する』というわけではありません。

炎症が起きている歯ぐきは細い血管が広がってもろくなっているため、歯ブラシが軽く触れただけでも血がにじみます。口臭も、歯垢や歯周ポケットの中で増えた細菌が主な原因です。つまりどちらも、糖尿病の方だけに起こる症状ではありません。

ただし、血糖値の高い状態が続くと、この炎症は強く出て、しかも治りにくくなります。理由はいくつか重なっています。ひとつは、細菌を取り込んで処理する白血球の働きが鈍くなること。もうひとつは、余った糖が体のたんぱく質と結びついてできる『AGEs(終末糖化産物)』という物質が、歯ぐきの土台であるコラーゲンの質を変えてしまうことです。さらに、歯ぐきの細い血管の血流が悪くなる、唾液が減って口の中が乾く、傷の治りが遅れる、といった条件も加わり、歯周病が進みやすいお口の環境になっていきます。

ここで誤解されやすいのが、『糖尿病になると免疫力がまるごと落ちる』という説明です。実際はもう少し複雑で、細菌を退治する力は落ちる一方、炎症そのものはむしろ過剰に出やすくなります。いわば『攻める力』と『鎮める力』のバランスが崩れた状態です。その結果、赤み・腫れ・出血がなかなか引かず、だらだらと長引いてしまいます。

そして、この関係は一方通行ではありません。歯周病が進むと、深くなった歯周ポケットの中で炎症がくすぶり続け、そこから細菌の成分や炎症を伝える物質が血液に入り込みます。これが全身の炎症をわずかに高め、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きを悪くすることがわかっています。糖尿病が歯周病を悪化させ、歯周病もまた血糖コントロールを難しくする。まさに『双方向の関係』なのです。

とはいえ、歯ぐきの腫れや出血だけで糖尿病と決めつけることはできません。糖尿病のない方の歯肉炎・歯周炎でも、まったく同じ症状が起こります。お口の変化は『糖尿病の証拠』ではなく、『体を見直すきっかけ』と受け止めていただくのがちょうどよいでしょう。

気になる症状があれば、まず歯科で歯周病の検査を受けてください。あわせて健診や内科で、血糖値と、過去1〜2か月の血糖の平均を映すHbA1cの値を確認しておくと安心です。」

歯周病を放置すると糖尿病が悪化する?セルフケアの限界と治療の効果

---もし歯ぐきの腫れや出血をそのまま放置してしまった場合、本当に糖尿病が悪化してしまう可能性はあるのでしょうか?

鷹巣 多紀さん:

「結論から言えば、可能性はあります。歯周病の炎症をそのままにしておくと、すでに糖尿病のある方や血糖値が高めの方では、血糖のコントロールが難しくなることがあります。

ただし、これは『歯ぐきから血が出たら、すぐに糖尿病が悪くなる』という話ではありませんし、『市販の塗り薬を使うと糖尿病が悪化する』という意味でもまったくありません。本当に問題なのは、症状だけを一時的に抑えて受診を先送りし、原因が歯ぐきの奥に残り続けてしまうことです。

歯周病の主な原因は歯垢(プラーク)で、歯石はそのプラークがくっつきやすい足場をつくります。市販の塗り薬や洗口液の中には、痛みや腫れ、口臭を和らげてくれるものもあります(効能は製品によって異なります)。ただ、どれだけ丁寧に使っても、歯周ポケットの奥にこびりついた歯石を取り除くことはできませんし、歯を支える骨がどれくらい減っているかを自宅で確かめることもできません。表面上は落ち着いたように見えても、見えない場所では炎症がくすぶり続けている――これが放置のこわいところです。

こうした慢性的な炎症から出る物質は、血流に乗って全身に回り、インスリンの効きを悪くする一因になると考えられています。逆に言えば、歯を治療することで血糖にプラスに働くこともあります。実際、2型糖尿病と歯周炎の両方をお持ちの方を対象にした複数の研究をまとめると、歯周治療を受けたグループは、受けなかったグループに比べて3〜4か月後のHbA1c(血糖管理の目安となる数値)が平均でおよそ0.3〜0.5%ポイント低下していました。日本歯周病学会も、糖尿病のある歯周病患者さんに対して、歯石除去やブラッシング指導といった歯周基本治療を強くすすめています。

とはいえ、期待しすぎは禁物です。全員の血糖値が下がるわけではなく、効果には個人差があります。研究の多くは2型糖尿病の方が対象という点にも注意が必要ですね。そして何より、歯周治療は糖尿病のお薬や食事・運動療法の『代わり』にはなりません。歯科で炎症の火種を減らし、内科で血糖を管理する。この両輪を回していくことが大切です。また、糖尿病のない方が歯周病を放置したら必ず糖尿病になる、と言い切れる段階でもありません。

数日〜数週間、歯科の予約を先延ばしにしたからといって、それだけで急に糖尿病が悪化するわけではありません。ただし、次のような変化があれば、セルフケアで様子を見続けるのはやめて、歯科を受診しましょう。

  • 歯ぐきの出血や腫れを何度も繰り返す
  • 歯ぐきを押すと膿が出る
  • 口臭が続いている
  • 歯がグラグラする感じがある」

お口の異変に気づいたら!今すぐ始めたい「3つのアクション」

---歯ぐきの出血や腫れに気づいたとき、私たちはまず何をすればよいでしょうか?具体的な対策を教えてください。

鷹巣 多紀さん:

「やることは3つだけです。

①鏡でチェックする
②毎日の歯みがきを見直す
③歯科と、必要なら内科へ

このうち一番大事なのは、実は③です。セルフケア用品を買い足すことより先に、まず予約の電話を入れてください。歯ぐきの見た目だけでは、炎症が歯ぐきの表面にとどまっている『歯肉炎』なのか、歯を支える骨まで傷み始めた『歯周炎』なのかは、どうしても判断がつかないからです。

①鏡でチェックする
明るい場所で、次の3つの変化を見てください。

  • 出血・腫れ:歯みがきのたびに同じ場所から血が出る、赤みや腫れがなかなか引かない
  • 膿、口臭:歯ぐきを押すと膿が出る、しっかり磨いても口臭が続く
  • 歯ぐきの後退、歯のぐらつき:歯ぐきが下がって歯が長く見える、歯のすき間が広がってきた、歯が揺れる

一度少し血がにじんだくらいで、すぐに糖尿病を疑う必要はありません。これらはいずれも、糖尿病の方だけに出る症状ではないからです。ただし、同じ症状が何度も繰り返されるようなら、複数当てはまるほど歯周炎の可能性は高まります。そのまま様子見にしないでください。

②毎日の歯みがきを見直す
歯ブラシの毛先を、歯と歯ぐきの境目に軽く当てて、小刻みに動かします。ゴシゴシ強くこする必要はありません。

ここでよくあるのが、『血が出るのがこわいから、その場所だけ避けて磨く』というパターンです。気持ちはよくわかるのですが、これは逆効果です。磨かない場所にプラークが残り、炎症が居座り続けてしまいます。出血が気になっても、やさしく磨き続けてください。

あわせて、歯と歯の間には、デンタルフロスや自分の歯のすき間に合った太さの歯間ブラシを。洗口液や市販の塗り薬は『補助』としては役立ちますが、歯ブラシでこすり落とすケアや、歯科での歯石除去の代わりにはなりません。

③歯科と、必要なら内科へ
出血や腫れを繰り返しているなら、歯科で歯周ポケットの深さ、出血の範囲、歯石の付き具合、歯を支える骨の状態を調べてもらいましょう。これが確実な第一歩です。

さらに、健診で血糖値やHbA1cの異常を指摘されたことがある方、しばらく健診を受けていない方、あるいはのどが渇く・水をたくさん飲む・トイレが近い・理由なく体重が減った・強い疲れが抜けないといった心当たりがある方は、歯科と並行して内科や健診でも血糖値とHbA1cを確認してください。糖尿病は自覚症状だけでは気づきにくく、歯ぐきの見た目から診断できるものでもありません。

すでに糖尿病の治療を受けている方は、歯科の初診時にそのことを必ず伝えてください。そして、内科のお薬を自己判断でやめてしまわないこと。『お口の中は歯科、血糖は内科』――この2つを並行して続けることが、見逃しを防ぐいちばん確実な方法です。」

「お口は歯科、血糖は内科」のダブルケアで健康な体を守ろう

一見、別々の問題に思える「歯ぐきの腫れや出血」と「糖尿病」ですが、実はお互いに悪影響を及ぼし合う「双方向の関係」にあることが分かりました。だからこそ、お口に現れるささいなサインを見逃さず、自分の健康状態を見直す貴重なきっかけにすることが大切です。

明日からできることは、まず鏡の前で自分の歯ぐきをじっくりチェックし、丁寧なブラッシングを心がけること。そして何より、自己判断でのケアにとどめず、早めに歯科を受診してプロの検査を受けることです。

お口のケアは歯科へ、血糖の管理は内科へ。この両輪を並行して進めていくことが、お口の快適さだけでなく、全身の健やかな暮らしを守るためのいちばんの近道となります。


監修者:鷹巣 多紀
大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として育児に奮闘しながら ママさん歯科医をしています。

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