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「目の中に黒いゴミが…」“市販の目薬”で放置→ある朝、視界が真っ暗になり…50代男性を襲った病に「すぐ眼科に行けばよかった」

  • 2026.9.3
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

周術期管理や救急・全身管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「最近、目の前に黒いゴミがふわふわ浮いているな。パソコン仕事で目が疲れているのだろう」。市販の目薬でやり過ごしたSさん(50代男性)。

しかしある朝、視界の端から黒いカーテンが静かに降りてきました。眼球の奥でカメラのフィルムの役割をする組織がはがれ落ちる「網膜剥離(もうまくはくり)」でした。

網膜を元の位置に戻す手術は成功したものの、現在も「物が歪んで見える」という後遺症に悩み、「あの時、ただの疲れ目だと油断せず、すぐ眼科に行けばよかった…」と深い後悔を口にしています。なぜ、ただの疲れ目という楽観が、生涯にわたる見え方の違和感を招くのでしょうか。

網膜剥離は眼球の奥での「フィルムの静かなはがれ」

なぜ、眼球の奥で壁紙がはがれるような現象が起きるのでしょうか。そのメカニズムは、以下のように静かに進みます。

【網膜剥離が起きるまでのフロー】

  1. 硝子体の変化:眼球の中を満たすゼリー状の組織(硝子体)が、加齢により少しずつ収縮して水のように変化します。
  2. 網膜が引っ張られる:収縮した硝子体が網膜を強く引っ張り、フィルムに目に見えない小さな裂け目(網膜裂孔)を作ります。
  3. 水分の侵入:変化した水分が裂け目から網膜の裏側へ入り込み、壁紙がはがれるように網膜を浮かせていきます。
  4. 細胞の機能低下:はがれた網膜は栄養が十分に届かなくなり、視細胞の機能が失われることで、最終的に著しい視力低下へと至ります。

「ただの疲れ」と「生涯残る見え方の歪み」に潜む注意すべき境界線

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「毎日スマホを見ているのだから、目が疲れるのは当然だ」「ゴミが見える程度で眼科に行くなんて面倒だ」。日々を懸命に生きる皆さんが、目の不調を一時的な疲れと捉えて様子を見るのは、ごく自然な心理です。

しかし、本件を通してぜひお伝えしたい「術後の厳しい現実」があります。
実は、網膜剥離は手術をして視力が回復したとしても「完全に元通り」になるわけではありません。筑波大学眼科などの先進的な臨床研究によると、網膜剥離の手術後1年が経過しても、約4〜5割の患者様に「物が歪んで見える(変視)」、約4割に「物が小さく見える(小視症)」といった後遺症が残ることが報告されています。

現在の眼科医療では、単なる視力の数値だけでなく、こうした「視覚の質(Quality of Vision:QOV)」の低下が、患者さまの生活の質を大きく下げる要因として問題視されています。

網膜には痛みを感じる神経が通っていないため、お腹が痛い時のように「病院に行こう」というアラームが鳴りません。しかし、痛みがなく進行するからこそ、発見が遅れて剥離の範囲が広がるほど、この「見え方の歪み」は生涯にわたって残りやすくなるのです。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

ただの疲れ目や自然な飛蚊症(糸屑のようなゴミが舞っているように見える症状)と、網膜がはがれかけている状況を見分けるため、以下の3つの初期サインをご確認ください。

1. 目の前のゴミ(飛蚊症)が「急激に」増えた

それまで数個だった黒い影が突然多数に増え、大きなススの塊のように見えます。

2. 暗い部屋でもピカピカと「光が走る」(光視症)

目を動かした瞬間に、稲妻やカメラのフラッシュのような光が視界の端に見えることがあります。

3.視界の端に「黒いカーテンやモヤ」が広がってくる

網膜の一部が実際にはがれたサインです。時間が経つにつれて、見えない範囲がどんどん中心に向かって広がります。

見えにくいと感じたら

「まさか目の前の小さなゴミが、大きな病気のサインだったなんて」と驚かれるのも無理はありません。

まずは「片目ずつ手で隠して、テレビの画面やカレンダーが欠けたり歪んだりせずに見えているか確認する」、そんな簡単なチェックから始めましょう。

もし少しでも怪しいサインがあるときは、我慢せずに今すぐ眼科を受診して詳しい検査を受けてください。
見えづらさへの不安を取り除き、いつまでも美しく鮮明な景色を見続けられるよう、少しでもおかしいと感じたらぜひ医療を活用してください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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