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淡水えびやワニ肉を美しい一皿に。オーストラリアの植物園の中にある「レストラン・ボタニック」をレポート

  • 2026.8.20
ⒸRestaurant Botanic,ⒸBotanic Lodge

オーストラリア初となるミシュランガイドの進出地に選ばれたのは、なんと南オーストラリア州。州都アデレードは、極上のローカル食材、至高のワイン、そして気鋭のシェフたちの感性と技術が交差する、まさに南半球を代表する美食の街。「最も3つ星に近い」と噂される注目のレストランを訪れた。

©Frankie The Creative, Tourism Australia / South Australian Tourism Commission

2026年10月の発表を控え、どのレストランがミシュランの星を獲得するのか、世界の食通たちの間で早くも大きな話題となっている。

南オーストラリア州の中心都市アデレードが「美食の街」と評される理由は、その恵まれた環境と豊かな食文化。車を1時間も走らせればバロッサ・バレーをはじめとする世界有数のワイン産地が広がり、南半球最大級の生鮮市場を中心に「地産地消」のスタイルが日常に根付いている。

アデレードを訪れる人が最初に感動するのは、その比類なきコンパクトさだ。空港から市街地まではわずか約6km。徒歩で巡れる16km²ほどの中心街には、歴史あるアデレード大学や「世界で最も美しい図書館」と称される南オーストラリア州立図書館、博物館や美術館といった文化施設が凝縮されている。

なかでも“憩いの場所”として市民に深く愛されているのが、1857年に開園した「アデレード植物園」(広さは東京ドーム10個分以上!)だ。広大な敷地には多様な固有種や世界の希少植物が青々と茂り、市民が思い思いに散策やピクニックを楽しむ、豊かな日常の舞台となっている。

ⒸRestaurant Botanic

植物園そのものを味わう独創的な料理の数々

そんなアデレード植物園の美しい緑に囲まれた場所にあるのが「レストラン・ボタニック」だ。単なる「植物園の中にあるカフェレストラン」ではなく、「グルメトラベラー・レストラン・アワード2023」の「レストラン・オブ・ザ・イヤー」などオーストラリアの美食シーンで最高峰の評価を総なめにし、今や世界中のフーディーがこのためだけにアデレードを訪れるほど。

ⒸRestaurant Botanic

コンセプトは「植物園そのものを味わう」

2024年にエグゼクティブシェフに就任した、ジェイミー・マスグレイブ率いるキッチンチームが手掛ける料理は、「植物園そのものを味わう」というコンセプトに基づいたモダン・オーストラリアン料理。

ジェイミーは国内の有名店に加え、香港での「One Star House Party(世界中を旅するポップアップ・レストラン)」で研鑽を積み、西オーストラリア州を拠点にオーストラリア固有のネイティブ食材を使ったポップアップダイニングを展開する有名レストラン「Fervor(ファーバー)」でもシェフとして活躍した経歴をもつ。

植物園内で収穫された新鮮なハーブ、葉、花、果実をふんだんに取り入れ、カンガルー、エミュー、クロコダイル、ブッシュトマト、フィンガーライム、アリなど、オーストラリアならではのネイティブ食材を融合し、独創的な技術で洗練された一皿に仕立て上げる。

「植物園のなかにレストランがあることのメリットはなんですか?」とシェフに聞くと、こう教えてくれた。

「最大の利点は、極限までフレッシュな素材を摘み、最も状態がよい瞬間を見極められる点にある。そして、通常の青果業者からは到底手に入らないような、植物の多様な部位を余すことなく活用できることだ。果実にとどまらず、葉、根、枝、そして蕾や花まで余さず料理に活かせるのは、料理人として大きな強みになる。それに、心が解き放たれるようなこの穏やかな植物園の環境自体が、洗練された食事の時間を引き立てる最高の舞台になってくれるんだ」

ⒸRestaurant Botanic

淡水えびやワニ肉が奏でる五感の体験コース

ゲストは「Friends Gate(フレンズ・ゲート)」から巨大なイチジクの木、モートンベイ・フィグの並木道を散策してレストランへと向かう。そこからコースの体験は始まっているといっても過言ではない。ダイニングは単なる食事ではなく、約3時間をかけて五感すべてで楽しむ多体験型のテイスティングメニューで構成されている。

ⒸRestaurant Botanic

たとえば、「キャビアと発酵サワークリームをあしらったボタニカル・カップケーキ」は、クリームに数種類のネイティブハーブのオイルを使用し、キャビアの重厚な海のうま味と発酵クリームの乳的なコクに対し、園内で摘まれたレモン系の清涼感あるハーブや酸味のあるネイティブシトラスをぶつけることで、重たくならず洗練されたひと皿に。鴨肉は熟成させてローストし、デイビッドソンプラムと自生ハチミツのソースで。

「クロコダイルの茶わん蒸し」は、ワニの骨からとっただしと卵液を合わせて蒸し、温燻製にしたワニのあばら肉を重ねて、上品な味わいに。シェフのお気に入りの食材であるオーストラリアの大型の淡水えび「マロン」は、直火で香ばしく焼き上げ、発酵ペッパーやうなぎの燻製風味を効かせて濃厚なソースで。マロンの身の甘さ、うま味を味わう逸品だ。

ⒸRestaurant Botanic

「この土地は、国内でもとりわけ良質な食材に恵まれた実に贅沢な場所だ。たとえば、アソール・パークに拠点を置くパルー・カンガルー肉。非常に柔らかく上質な肉質で、炭火で香ばしく焼き上げるのに最適だ。野性味が強すぎず、非常に上品な味わいを持っている。

ポートリンカーンから届くシーフードの鮮度や質も素晴らしい。特にマグロは絶品で、身の柔らかさと濃密なうま味をそのまま味わってもらうため、常に生の状態で提供している。そして冬の楽しみといえば、キノコのシーズンだ。アデレード・ヒルズはハツタケやポルチーニの名産地として知られており、この季節の料理に特別な魅力を与えてくれる」とシェフ。

ⒸRestaurant Botanic

アリの酸味が弾ける発酵味噌のシグネチャー

フードロスを出さないため、使用しなかった食材の端などは発酵させて、さまざまなピクルスや塩漬け、ガルム(魚醤)や味噌などの調味料や加工品に使用。

味噌と言っても日本のものとは異なり、原材料がものすごくユニークだ。コーヒーの風味のあるワトルシード(アカシアの種)を長時間煮込み、穀類と麹を加えて発酵させ、クイーンズランド北部産のグリーンツリーアントと合わせたものは定番。レモンユーカリでマリネしたヒラマサをのせたタルトのなかにこの味噌クリームが詰められた一品はシグネチャー的存在。

ひとくち噛むと、タルトのサクサク感、ヒラマサの脂の乗りと味噌の深いうま味・コクが広がり、そこにアリの爽烈なシトラスのような酸味が弾けるという、計算し尽くされた一品だ。

ⒸRestaurant Botanic

シトラス炸裂のデザートと最先端のノンアルコールドリンク

デザートにもネイティブ食材を贅沢に使用。サンライズなど3種のライムを使ったソルベに、低木クンゼアのゼリーと、ライムゼラニウムを瞬間冷凍して粉砕した冷たいスノーを合わせた一皿。弾ける酸味と爽やかなアロマが立体的な味わいを描き、まさにアデレード植物園の緑豊かな庭園の中にいるかのような感覚を五感で味わえる。

ドリンクペアリングでは、バロッサ・バレーやマクラーレン・ヴェイル、アデレード・ヒルズといった世界のワインラバーたちが注目する南オーストラリアの銘醸ワインはもちろん、地元のネイティブハーブや発酵エキスを駆使した自家製ノンアルコールペアリングも圧巻。2024年、2025年には「オーストラリア・ワイン・リスト・オブ・ザ・イヤー・アワード」の最優秀ノンアルコールペアリング賞を受賞している。

一部を紹介すると、「スイート・ティアーズ・マティーニ」は、新玉ねぎから抽出したうま味の強いオニオンウォーターをベースに、オレンジの皮やオーストラリア固有のデザートライムのピクルスを合わせて攪拌し、甘みとピリッとした酸味・塩気を表現。

「マリーゴールド・ヴァジュース」は、「ヘンチキ・ワイナリー」の未熟成ぶどう果汁に植物園でとれたツリーマリーゴールドの花や葉を漬け込んだアペリティフ。華やかな香りと爽やかな酸味が特徴だ。余談だが、レストランのクリエイティブチームから生まれた自社ボタニカル・ドリンクブランド「BTNC Beverages」も要チェックだ。

ⒸBotanic Lodge

「植物園の植物だけでなく、オーストラリアが誇る最高の生産者、そして彼らが人生を捧げて育て上げた食材の魅力を余すことなく見せたい。世界トップクラスの素材と並べながら、洗練されたひと皿のストーリーとして語り尽くすつもりだよ」とシェフ。

数カ月先まで予約が埋まることも珍しくないが、この場所でしか味わえない唯一無二の食体験は、アデレード旅のハイライトになるはずだ。

ⒸBotanic Lodge

姉妹店ロッジで楽しむ水辺のカジュアルランチ

もし「レストラン・ボタニック」の予約が取れなかったり、もっと気軽にアデレード植物園の魅力を味わいたいなら、同じ園内にある姉妹店のカフェレストラン「ボタニック・ロッジ」へ足を運んでみてほしい。

こちらは予約なしでふらりと立ち寄れるカジュアルな空間ながら、提供される料理のクオリティは折り紙付きだ。滞在中に二度訪れたが、香ばしくサクサクに焼き上げられたタルト生地が秀逸なキッシュや、フレッシュな旬のフルーツを贅沢にあしらったオーストラリア伝統のパブロヴァ(16AUD)は、まさに絶品。

水辺の真ん前に位置するテラス席は、野鳥たちが集い遊ぶ憩いの場でもある。風に揺れる緑と水面を眺めながら、素晴らしいコーヒーや軽食とともに過ごすひとときは、旅の愛おしい思い出になるはずだ。

Hearst Owned

Restaurant Botanic レストラン・ボタニック
住所/Adelaide Botanic Garden, Plane Tree Dr, Adelaide SA 5000, Australia(アデレード植物園内)
Google Map
電話番号/+61 08-8223-3526
営業時間/木・金曜18:00~24:00 土曜12:00~15:00、18:00~24:00 日曜12:00~17:00
定休日/月~水曜 要予約
テイスティングメニュー 395 AUDワインペアリング 220AUD~、ノンアルコール・ボタニカルペアリング150AUD
https://restaurantbotanic.com....
インスタグラム/@restaurantbotanic_adl

Botanic Lodge ボタニック・ロッジ
住所/Adelaide Botanic Garden, Plane Tree Dr, Adelaide SA 5000, Australia(アデレード植物園内)
Google Map
電話番号/+61 08-7082-0177
営業時間/9:00~16:00
https://www.botaniclodge.com.a...
インスタグラム/@thelodge_adl

Special Thanks
Tourism Australia
South Australian Tourism Commission

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