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自分の心が展示された不思議なミュージアム。忘れていた記憶や心の奥にしまいこんだ本音と向き合ったとき、人は何を思うのだろうか【書評】

  • 2026.8.17

【漫画】本編を読む

『自分ミュージアムへようこそ』(あきばさやか/KADOKAWA)は、自分の心を展示する不思議な博物館を舞台にしたコミックエッセイ。思い出や、自分でも気づいていなかった本音を映し出すミュージアムへの招待状が届いた7人の男女の物語だ。

本作に登場する人々は年齢も立場も悩みもばらばらだ。定年退職を迎えた直後に妻が家を出て行ってしまった60代男性、運命の相手と信じていた彼氏にフラれて半年以上立ち直れない20代女性、常に周囲と比較して劣等感を抱えるゲーム実況系動画配信者、高校生になった息子の反抗期に心を痛める母親などだ。彼らの悩みはどれも簡単には解決できない。誰かに話すほどではないと思いながら、心の奥ではずっと重く残っている傷に向き合っていくのである。

招待されたミュージアムに展示されているのはただの過去ではない。本人が忘れたつもりでいた記憶や、見ないふりをしてきた感情が展示物として目の前に現れているのだ。それぞれの登場人物たちはその展示を眺めながら、少しずつ「本当は何に傷ついていたのか」「何を欲しがっていたのか」に気づいていく。

印象的なのは、彼らが「変わらなければならない」と追い詰められるのではなく、「そう思っていた自分もいた」と真っ直ぐに受け止めていくところだ。人はえてして、嫉妬したり、見栄を張ったり、誰かに言われた言葉を何年も気にしたりする自分を恥ずかしいと思ってしまう。けれど本作を読んでいると、そういう感情も自分を形づくる大切な一部だと教えられるのだ。深刻なテーマも描かれているが、やわらかな絵柄のおかげで読後は重たい気持ちにならないのも魅力である。

気づかなかった、もしくは気づかないふりをしてしまっていた本音を認めたとき、人は前に進めるのかもしれない。本作は、そんな胸の奥にしまい込んできた気持ちと向き合うきっかけをくれるだろう。

文=ゆくり

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