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「新品と交換しろ、客だぞ」保証書なしのドライヤーで30分居座った客。だが、店長が冷静に向き合った結果

  • 2026.8.13

休日の売り場に響いた怒声

週末で混み合う、家電量販店のサービスカウンター。

レジの奥では会計の電子音が絶え間なく鳴っていた。私が問い合わせの応対に追われていたところへ、一人の男性客が箱も袋もなく、ドライヤーだけを握って足早に歩いてきた。

「昨日、急に動かなくなった。買って半年だ。新品と交換しろ」

台に無造作に置かれたドライヤーには、購入を証明するものが何ひとつ添えられていない。

箱もなければ、レシートの一枚も見当たらなかった。

私は返品と保証の手続きを頭の中で順に思い浮かべながら、相手を刺激しないよう、できるだけ丁寧に切り出した。

「恐れ入ります。保証をお受けするには、保証書かレシートのご提示をお願いしております」

その瞬間、男性の声が一段跳ね上がった。

周りのお客様が一斉に振り返る。それでも彼は少しも引かず、カウンターに肘をついたまま、動こうとしなかった。背後の列が少しずつ長くなっていくのが、視界の端に映る。

30分の膠着を崩した一言

「俺がここで買ったんだから、保証書なんていらないだろ。客を疑うのか」

疑っているわけではありません、と言いかけても、こちらの声にかぶせるように怒鳴られる。言葉を挟む隙すら与えてもらえない。

列の後ろに並んだお客様が、気まずそうに視線を落とした。誰かが小さくため息をつくのも聞こえる。埒の明かない押し問答は、気づけば30分を超えていた。

喉が渇き、ペンを握った指先が冷たくなっていく。どう切り返しても平行線で、頭の芯がぼんやりしはじめた頃だった。そのとき、奥から店長が静かに歩いてきた。

「お待たせして申し訳ございません。ここからは私が承ります」

店長は声を荒らげなかった。男性の勢いを正面で受け止めたまま、まっすぐ目を見て続けた。

「保証の対象かどうかを確認させていただくのが、私どもの決まりです。大声はご遠慮ください。ほかのお客様もいらっしゃいますので」

威圧が、ふっと行き場を失った。男性は口を開きかけ、言葉を飲み込み、やがて視線を床へ落とした。

「……なら、もういい」

ドライヤーをつかんで背を向ける後ろ姿に、さっきまでの勢いはなかった。周りで様子をうかがっていたお客様が、ようやく安心したように会計の列へ戻っていく。店長は私に向き直り、静かに言った。

「よく耐えたね。あとは任せて」

その一言で、張り詰めていた肩の力がすっと抜けていく。もしあの圧に押されて規定を曲げていたら、この後味の悪さを一日じゅう引きずっていたはずだ。大声で正しさを主張する人より、静かに筋を通す人のほうがずっと強い。そう思い知らされた一日だった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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