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読み終わっても作品が続いている感覚を味わえた――EXILE/FANTASTICS世界が読む呉勝浩『法廷占拠 爆弾2』【n人のブックウォッチャー】

  • 2026.8.7

作家やクリエイター、お笑い芸人、音楽アーティストなど、多彩なジャンルで活躍する人たちが、心に残る一冊をセレクトして、自身の言葉で紹介! 本を選んだ理由やそれぞれならではの視点を通して、本との新しい出会いや、読書の楽しみを届けます。

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『法廷占拠 爆弾2』 (呉勝浩/講談社)
『法廷占拠 爆弾2』 (呉勝浩/講談社)

なぜ『法廷占拠 爆弾2』(呉勝浩/講談社)を1冊目にしたかと言うと、シンプルに前作の『爆弾』が面白かったからです。

『爆弾』といえば、呉勝浩先生による大人気ミステリー。警察に取り調べを受けていた中年男性・スズキタゴサクと刑事の類家の息詰まるやりとりと、東京都心に仕掛けられた爆弾をめぐるミステリー小説で、昨秋実写映画化され大ヒットしたことも記憶に新しい作品です。

『法廷占拠』はスズキタゴサクが逮捕され、その裁判中に起こる籠城事件から始まります。

僕はすぐ続きが読みたくなるタイプなので、『法廷占拠』も速攻で買って読みました。好きな先生の作品は、どんな作品を出したとしても読みたくなるタイプです。ある種の信頼があるというか。自分の直感は割と信じるタイプです。

なので、また呉先生の描く世界に入りたい、騙されたいなんていう欲求に飲まれてしまいました。

小説を先に読んでから映画を観たので、映画の完成度の高さにも驚いて、とてもワクワクしながら観ていたのを覚えています。『法廷占拠』もぜひ映画化してほしいです。

僕が最初に感じたのは、やはり文章の密度でした。

一冊を通して情報量はかなり多い。でも読みにくさはまったくなく、むしろテンポが気持ちいい!

『爆弾』も、凄まじいテンポとスズキタゴサク、類家という二人の強烈な人物を中心に、決して周りの人物も薄くならない濃度で目から脳に襲いくる文章だったのですが、『法廷占拠』はさらに、一人ひとりの立場や思惑が複雑に絡み合いながら、それでも読者を迷子にさせない。この気持ち良さは凄いです。

これをダンスにたとえると、難しい振りを踊っているのに、それを難しく見せない感覚に近かったです。だから気付けばどんどん読み進めてしまう。この「読ませる力」は技術なんだろうなと感じました。

印象的だったのは、『爆弾』が東京という街全体を巻き込む物語だったのに対して、『法廷占拠』は法廷という限られた空間を舞台にしていることです。でも、不思議とスケールが小さくなった感じはしませんでした。

事件の中心人物が法廷の中から配信という形で外の世界に問いを投げかけ、その言葉一つで世論が揺れ、警察も類家も判断を迫られていく。法廷の中の出来事なのに、日本全体が事件の当事者になっていくような感覚があって、その構成がすごく面白かったです。

ラップやダンスでも多いことなのですが、誰が表現するかはすごく大事で、その人が積み重ねてきた時間があるから、同じ言葉やダンスのステップでも、受け取る側が感じる説得力や言葉の重さは変わります。

呉先生の作品には、その人物がそこに至るまでの時間や背景を、読者に自然と想像させる力があると感じました。

『法廷占拠』を読んで思ったのは、その背景を知ることと、その人を肯定することは全然違うということです。

その人物の過去を知っても事件は正しいとは思わない。でも、なぜあの行動に至ったのかは知りたくなる。スズキタゴサクも同じで、「史上最悪の爆弾魔」という肩書きだけでは、この人物は語れません。

読み終わったあとに残ったのは、「何をした人か」より、「なぜそうなったのか」を考え続けてしまう感覚でした。僕はそこが、この作品の一番面白いところだと思っています。

僕は『マスターズ・オブ・ユニバース』(※編集部注:2026年公開のアメリカのSFアクション映画)みたいな、良い意味で何も考えずに楽しめる作品も大好きです。ああいう勢いだけで「最高!」ってなれるエンターテインメントって、それだけで価値があると思っています。

でも、『法廷占拠』は全然違いました。

読み終わったあとも、気付いたら登場人物たちのことを考えているんです。「あの選択しかなかったのかな」とか、「もし自分が同じ立場だったらどうしたんだろう」とか。事件よりも、人のことを考えてしまう作品でした。

特にスズキタゴサクは、『爆弾』がその人物の輪郭を描いた作品だとするなら、『法廷占拠』はその輪郭の内側を少しだけのぞかせてくれるような終わり方だったと感じています。

だから理解できたというより、もっと知りたくなった。不思議なんですけど、その「分からなさ」が魅力なんですよね。

僕はラップでもダンスでも、全部を説明し切る表現より、観た人が「あれってどういう意味だったんだろう」と考え続けてしまう表現に惹かれます。『法廷占拠』もまさにそうでした。

事件は終わっているのに、人への興味は終わらない。

僕にとって『法廷占拠』は、読み終わったあとまで作品が続いているような感覚を味わえる一冊でした。

◆世界さんが紹介した本

『法廷占拠 爆弾2』(呉勝浩/講談社)

https://link.amazon/B0bAmTWiv

【プロフィール】

世界(EXILE / FANTASTICS)

2月21日生まれ、神奈川県出身。2014年、EXILEに新パフォーマーとして加入。2017年、FANTASTICSとしても活動を開始。現在はEXILEとFANTASTICSのパフォーマーを兼任し、活躍の場を拡げている。漫画・アニメ・ゲームなどエンタメに造詣が深く、2025年4月から上演された『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage《MAD TRIGGER CREW&どついたれ本舗 feat. 道頓堀ダイバーズ》に、寶井灯依里役で出演。2025年7月公開の映画『仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者』では、謎の組織・ミューターの王・カリエス役を熱演し、話題に。

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