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東大で開催された「大学キャンパス出張授業2025」ホンダの三部敏宏社長は東大生に何を伝えたのか?

  • 2026.8.4

自工会主催のイベント“大学キャンパス出張授業”にホンダ社長の三部敏弘さんが登壇。最難関で知られる東京大学の学生に伝えたこととは?

12月4日、東京大学本郷地区キャンパスで「日本自動車工業会大学キャンパス出張授業2025」が開催された。ホンダの三部敏弘(みべとしひろ)社長は、日本の中枢で活躍するだろう学生たちを前に何を語ったのか。

ジャパンモビリティショーに展示された最新の電動コンセプトモデルも!
本イベントでは、モビショー(東京)で公開された電動二輪コンセプト「EV OUTLIERCONCEPT」も展示された。時期的にはジャパンモビリティショー関西(大阪会場)とかぶっていたが、1台しかない実車は東京大学の構内展示に用いられた。

VUCA時代の失敗と第二創業期のホンダ

とその前に、出張授業の後になるが、3月12日、ホンダが四輪電動化戦略の見直しとそれに伴う巨額の赤字を見込んでいるという発表が行われた。後日、ソニーグループとの合弁事業でもEVの開発・販売中止が発表されたこともあってホンダの経営を不安視する声が広がった。

その赤字の大きな要因となったのが第2次トランプ政権。バイデン前政権からのEV購入補助金の打ち切り、充電インフラ整備への政府資金拠出の一時停止といった政策転換により米国内のEV需要が急速に減退してしまった。

21年4月の三部さん就任当時、グローバル市場で米国販売比率の高いホンダが、前政権のもとでEV戦略を推し進めたのは当然の判断だった。カーボンニュートラルの推進とモビリティ革命のなか、「第二の創業期」として覚悟を決め、モビリティの概念を再定義した上で「脱エンジン宣言」をしたホンダ。

不確実で先の読めないVUCA(ブーカ)時代にあって挑戦を続けていれば失敗もあるだろう。「失敗を恐れるよりも挑戦を続けることを選ぶ」というのはホンダの信念でもあるが、その企業精神の本質について、三部さんはこのとき学生に真摯に話していた。

モビリティの概念を再定義新しい価値を生み出す

話を出張授業に戻そう。まず、この催しは自工会に加盟するメーカーのトップが自ら講師となって、各地の大学生・院生らに向けてものづくりの魅力や業界の今後について直接講義を行うイベントだ。

ホールを埋め尽くした学生を前に、カジュアルなブレザースタイルで登壇した三部さんは、自身も大学で内燃機関学を専攻したエンジニア出身であることを踏まえ、下積み時代から社長となった現在まで、自身が見てきたホンダという会社について、またこの難しい時代でものづくりをどう考えるべきか、そのために何が求められるのかなど、将来ある学生たちに忌憚なくして聞かせた。

その内容は主に以下のような構成であり、授業の最後には聴講生との質疑応答も行われた。

〇ホンダとは、モビリティとは?
〇ホンダの歩みと現在
〇エンジニア時代のホンダ
〇社長となってからのホンダ
〇VUCA時代とホンダ
〇これからのホンダ
〇ホンダのイノベーション手法

ホンダは1年間で約2800万台の商品を販売する世界一のパワーユニットメーカーだが、モビリティ革命期のいま、これからのモビリティは、エネルギー(グリーンエネルギー)、モビリティ(動力機械)、コミュニケーション(情報通信・デジタル)の3つを融合して新しいものになっていくと考えている。

それらは陸・海・空にとどまらず宇宙までを含めた「3Dモビリティ戦略」として構想され、再使用可能なサステナブルロケットや宇宙空間でも遠隔操作できるアバターロボットなどクルマ・バイク以外のものづくりもこれまで以上に進めている。人間並みの繊細さを持つ多肢ハンド技術も世界トップレベルのもので、今年から工場への実装が予定されており、製品づくりをロボットたちが行う時代も遠いことではない。

これからのモビリティとホンダという話の他にも、エンジニア出身の三部さんがホンダに入社して経験してきたこともかなり生々しく伝えられた。チューニングすればもう少しパワーが出せるといった「差」ではなく、VTEC機構のように他車との「違い」を明確に生み出すことが重要であること。また、現代のようなVUCA時代は70年代(オイルショック、環境問題など)にもあって、その時は創業者・本田宗一郎のもと「こんなにいいチャンスはない」と社員が知恵を出し合って団結することで乗り越えたこと。イノベーションはひとりの天才だけが起こすものではなく、やる気のある人間たちがとことん議論する「ワイガヤ」によっても起こせるものであり、ホンダはそうやって、世界一、世界初、独創性にこだわったものづくりをしてきたことを説明した。

「挑戦しないことをリスクと考え、みずから高い目標を掲げよ!ひとりひとりが、変革の主体者として野心的な存在で在れ。」

三部さんから聴講生にメッセージを送るという段では、スライドには大きくこう書かれていた。そして「面白い仕事というのは、やりがいがあると同時に非常に厳しいんです。新しい価値に到達できてこそ達成感、満足感が生まれる。そこにチャレンジするということです」とその意を説いた。

エンジニアとして、社会人の先輩として、社長としての強い信念が伝わってきた講義だった。レッドブルF1でホンダのパワーユニットを再び頂点へと押し上げた三部さんは、EV戦略においても今回の失敗を糧に再び大きな成功へと導いてくれるだろう。

レーサーからロケットまでホンダ製品がズラリ!

講演会場近くの理学部三角広場では、モビリティショーで公開されたコンセプトモデルや四輪・二輪のレーサーマシンなどが展示された。早期参加申込者には抽選でF1マシン(マクラーレン・ホンダMP4/5)に乗車しての写真撮影といった特典も用意されていた。

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本郷地区キャンパスのランドマーク、東京大学大講堂(通称、安田講堂)。国の登録有形文化財で、観光客も大勢訪れていた
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新基準原付「スーパーカブ110 Lite」やモバイルパワーパックe:採用の電動原付二種「CUV e:」も展示された
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高度300mまでの離着陸実験に成功した再使用型ロケット実験機。サステナブルな輸送機開発への取り組み

陸・海・空に加えて宇宙まで!

ホンダの3Dモビリティ戦略三部さんが本田技術研究所にいた頃に描いたビジョン。陸・海・空に宇宙を含め、社内では「3Dモビリティ戦略」と呼ばれているもの。人工衛星による通信構想はスターリンクよりも先だった。

ホンダの社内評価基準は「違い」世界一・世界初・独創性!

三部さんがエンジニア時代に言われたのが「差ではなく違いを生み出せ」ということ。世界一か、世界初か、世界最速かのいずれかが盛り込まれていないと提出資料が評価されなかった。

VUCA時代は70年代にもあった創業者に学ぶ“逆境はチャンス”

近年と同じく、70年代のホンダは環境問題、オイルショック等のなか、これをチャンスと捉えてアイデアを原資に社員が団結した。三部さんは「必ず道は開ける」事例として当時の映像を学生に見せた。

屈辱と挫折を乗り越える!それがホンダ

F1参戦での挫折として、2015年日本 GP での「GP2 エンジン!」事件の映像を聴講生に見せた。三部さんは社内中からトップエンジニアを集めてF1の成績を上向かせレッドブル時代の成功へと至る。

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2015年日本GP、ストレートで他車に抜かれ続けたアロンソが「GP2(F2)のエンジンだ!」と連呼。ホンダF1の屈辱だった
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学生158名、 教職員34名の計192名が聴講した。参加学生の9割弱は理系学部で、うち6割は工学部の学生だった
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