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なぜ“正解のライン”は安全にもつながるのか?|中野真矢が語るライン取りの本質

  • 2026.5.12

“正解のライン取り”は、ただ速く走るためだけのものではない。クリッピングポイントを意識しながら正しいラインをトレースすることで、安心感を持ってスポーツライディングを楽しめるようになる。今回は中野真矢さんが、プロレーサーが重視するクリッピングポイントの考え方と、サーキット走行を安全かつ爽快に楽しむためのライン取りの本質について語る。

ライン取りの本当の目的は“爽快な加速”にある

この特集にあたり、自分自身の走りを改めて振り返ってみて気づいたのは、「プロレーサーは“クリッピングポイント命”で走っている」ということでした。

実際、プロライダーがクリッピングポイントそのものについて語る機会は、ほとんどありません。しかしそれは、“付けて当然”“できて当然”のものだからかもしれません。その証拠に、レースの世界では「クリップを外す」というミスは、かなりカッコ悪い走りとして認識されています。

もちろんレース中には、タイヤの消耗やライダーの疲労によって理想的なマシンコントロールが難しくなったり、激しいバトルでムキになってしまったり、あるいはマシントラブルを抱えていたりと、さまざまな要因でほんの少しラインが狂うことがあります。その結果としてクリップを外してしまうケースも当然あり得ます。

現在のMotoGPでは、走路外走行がペナルティ対象となっていますが、クリッピングポイントを外すというのは、それに近い状況とも言えるでしょう。レース観戦の際に、クリップを外しているライダーを見つけたら、「タイヤが厳しいのかな?」などと想像しながら見ると、より深くレースを楽しめるかもしれません。

そして、この特集で解説してきたように、クリッピングポイントが重要な理由は、“正確なクリッピングポイント”が“正解のライン”を導いてくれるからです。

「このクリップに、この車体姿勢と角度で入りたい」というイメージができると、自然と進入ラインや立ち上がりラインが決まってきます。さらに、そのラインを実現するために必要なコーナリングスピードも見えてきます。

もちろん、ライン取りに絶対的な正解はありません。しかし、“速く走るためのセオリー”は確実に存在しています。同じクラスのレースであれば、ライダーやマシンが違っても、速いライダーが選ぶラインは驚くほど似通ってくるものです。ロードレース最高峰のMotoGPでも、それは変わりません。

ただし、時には常識を超えたライン取りで速く走る“天才”も現れます。僕の現役時代で言えば、2007年にドゥカティへ移籍したケーシー・ストーナーがまさにそうでした。

「あんなイン側から立ち上がるの!?」
「そこまで縁石を使うの!?」

そんな走りの連続で、本当に意味が分からないレベルでした。それでいて圧倒的に速く、最終的にはシリーズチャンピオンまで獲得したのです。

ただ、ここまでレースの話をすると、「サーキットのライン取りは、レーサーが速く走るためだけのもの」と思われるかもしれません。しかし、決してそうではありません。

確かに“正解のライン”を覚えることで、サーキットを速く走れるようになります。逆に、ライン取りが悪ければ、速く走ることは難しいでしょう。

しかし、“正解のライン”にはもうひとつ大きなメリットがあります。それは、安心感を持ちながら安全にスポーツライディングを楽しめることです。だからこそ、ファンライド層にとってもライン取りは非常に重要なのです。

実際、ライディングパーティで先導をしていると、「そこじゃないんだよなあ……」というラインで追走してくる参加者を頻繁に見かけます。バックミラー越しでも分かるほどズレている場合、実際には1m近くラインが違っていることもあります。

ライテク
【エキスパートライダーのラインをマネすることから始めるのが近道だ!】今回の特集で、サーキットにおけるライン取りと、“正解のライン”を導く最大要素となるクリッピングポイントの重要性を理解してもらえたと思う。しかし実際のところ、ビギナーが的確なラインやクリッピングポイントを頭の中に思い描くのは難しい。そこで活用したいのが、ライディングパーティの先導走行。プロの走行軌跡を確実にトレースすることで、正しいラインを習得でき、経験値を上げられる

ビギナークラスの慣熟走行のように、追い越し禁止かつ低いペースで走っている場合、極端な話、どんなラインでも曲がれてしまいます。しかし、先導ライダーと同じラインをしっかりトレースし、“正解のライン”を覚えなければ、フリー走行でペースアップできなかったり、ペースを上げた際のリスクが大きくなったりしてしまいます。

速く走るというのは、マシンのポテンシャルを最大限に引き出すということ。それは、サーキット走行会の醍醐味そのものでもあります。

特にミドルクラス以上のスポーツバイクでは、最大の爽快感を味わえる瞬間は加速時です。“正解のライン”は、「直線区間でいかに車速を伸ばすか」が大きなテーマになっているため、それをマスターすることで、スポーツライディングの楽しさはさらに大きくなります。

サーキットビギナーの皆さんにも、ぜひ早い段階で“正しいライン”をトレースできるようになってほしいと思っています。

ただし、そのためには正確なマシン操作が必要不可欠。そして正確な操作には、正しいライディングフォームが欠かせません。ぜひ、前回特集したライディングフォームの内容も忘れずに取り組んでみてください。(中野真矢)

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