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「できれば住み続けたい」母の死後“5,000万円の実家”を相続した50代姉→後日、税理士から告げられた“思わぬ事実”に「そんな…」

  • 2026.9.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。アディーレ法律事務所の弁護士・正木です。

相続は、「争族」とも呼ばれるくらい、家族の関係を悪化させてしまうこともあります。今回は、たくさんの遺産を相続する人がいることに納得していたにもかかわらず、思わぬ落とし穴から関係が悪くなってしまったケースをご紹介します。

母が突然語った最後の願い

50代女性のAさん(仮名)は、20年前、夫の浪費が原因で離婚しました。財産分与もほとんどなく、当時まだ小さかった息子を一人で育てることになったAさんを、母は何かと助けてくれました。
父はAさんがまだ幼い頃に亡くなっており、母は女手一つでAさんと妹を育ててきました。母は、Aさんが自分と同じような辛い思いをしないように、と願っていたようです。
息子が成人して独立した後も、Aさんは、年齢を重ねた母の病院の付き添いや買い物など、母の身の周りのことを手伝っていました。

ある年の正月、Aさんや妹家族が帰省したときのことです。食事を終えてテレビを見ていると、母がぽつりと言いました。
「ねえ、私、老人ホームに入ろうと思って。空き家にするのも不安だから、Aがここに住んでくれないかしら。万一のことがあったら、この家はAに渡したいと思っているの」

突然の話に、Aさんたちは驚きました。
「そんなこと、今から考えなくてもいいよ」
「いつ何があるかわからないからね。Aにはずっと面倒も見てもらっているし」

すると、妹は、
「私は戻ってくる予定もないし、お姉ちゃんが住んでくれるならいいんじゃない?」
「そんな突然のことすぎて…また考えておくね」

母が老人ホームに入所すると、Aさんは、しばらくは実家に通って掃除をしたり、母の様子を見に行ったりしていました。しかし、仕事と実家の管理や母の面会の両立を続けるのは大変です。そこでAさんは、借りていた家を引き払い、実家に引っ越すことにしたのです。

これで「円満相続」のはずだった

それから2年後、母は病気のため亡くなりました。葬儀やさまざまな手続きが一段落した頃、妹と会うことにしました。
「ところで、お母さんの遺産の話なんだけど…お母さんの預金が約3,000万円、この家の価値が5,000万円くらいみたい。どうしようかと思って…」

今回母の財産を相続するのはAさん姉妹のみなので、法定相続分はそれぞれ2分の1ずつです。ただし、姉妹で合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることもできます。

「お姉ちゃんは、これからもこの家に住むの?」
「うん、思い出もあるし、この家を残したいから、できれば住み続けたいなって」
「私は家をもらっても管理できないし、お姉ちゃんがもらうのがいいと思う」

妹は少し考えてから続けました。
「じゃあ、私は預金をもらうっていうのはどう?今うちも大変で…正直、現金のほうがありがたくて」
「え?それじゃ私が得しすぎじゃない?本当にいいの?」
「うん、お姉ちゃん、お母さんの面倒もずっと見ててくれたし。じゃあ、決まりね!」

二人は、実家をAさんが、預貯金を妹が相続することで話を進めることにしました。
「よかった。私は家に住み続けられるし、妹は現金をもらえる。二人とも納得してるし、お母さんもきっと喜んでくれるよね」
Aさんは、そう思っていました。

姉の大誤算

後日、Aさんは税理士に相談したところ、思いもよらない話を聞くことになりました。

「Aさん、相続税の納税資金は大丈夫ですか?」
「え? 納税資金ですか?」
「はい。今回は遺産が約8,000万円だとすると、基礎控除額を超えているので相続税がかかります。Aさんが相続するご実家の評価額が5,000万円なので、Aさんの相続税額は妹さんより多くなります」

Aさんは耳を疑いました。
「私は現金をもらっていないのに、税金は払わないといけないんですか?」

相続税は、「受け取った遺産が現金かどうか」で決まるのではありません。実際に多くの遺産を取得した人は、結果として負担する相続税額も大きくなります。

「お母様が老人ホームに入所された後ご実家に引っ越された今回のケースでは、小規模宅地等の特例は使えないですし、Aさんの負担は300万円弱になると思います。妹さんは相続した預金から納税できますが、Aさんはご自身で用意する必要がありますね」
「そんな……」

得したはずの姉と妹に生まれた溝

帰宅したAさんは、自分の通帳を開きました。しかし、300万円もの税金を支払えるほど余裕はありません。一方、約3,000万円の預金を相続した妹は、相続税を支払っても手元に現金が残ります。複雑な気持ちになったAさんは、数日後、妹に電話をしました。

「ねえ…相続税のことなんだけど、私、結構な額を払わないといけないみたい」
「えっ? でも、お姉ちゃんは家をもらったんだから、その分じゃないの?」
「そうなんだけど…。私、家を売るつもりはないし、家をもらっただけで現金が増えたわけじゃないから、税金を払うお金が足りないの」
「……そんなこと言われても」
「わかってる。でも、私だって困ってるの」

電話の向こうから、妹の少し冷たい声が聞こえました。
「ねえ、そもそもお姉ちゃんが家をもらうって決めたんだよね?」

その言葉に、Aさんも思わず言い返してしまいました。
「そうだけど、お母さんが住んでいた家を守りたいと思っただけよ」
「でも、それだけ大きな財産をもらったってことでしょ?」
Aさんは、それ以上言葉が出ませんでした。

Aさんは実家を売って納税することも考えましたが、母との思い出が詰まった家を手放したくはありません。そこで結局、金融機関から借入れをして、納税資金を準備することにしました。
家は残りました。しかし、これからは借入れの返済が待っています。

「財産の価値」と「使えるお金」は同じではない

「実家を相続できてよかった」
相続の話をしていたときには、そう思っていたAさん。ところが実際に相続してみると、家を維持しながら税金を支払うための資金繰りに頭を悩ませることになりました。妹との間にもわだかまりが残っています。

Aさんは後になって思います。
「実家と預金の金額を比べて、公平に分ければいいと思っていました。でも『相続した財産の価値』と『実際に使えるお金』は、同じじゃありませんでした」

二人とも納得して決めたはずの遺産分割。もし、相続税を「誰が、どのお金で支払うのか」まで考えていれば、Aさん姉妹は今でも仲の良いままだったかもしれません。


※実際の事例を参考に構成したストーリーです。

執筆・監修:弁護士 正木 裕美(アディーレ法律事務所)
南山大学法学部、及び同大法科大学院卒。一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。テレビの情報番組などにもコメンテーターや法律解説者として多く出演し、悩みを抱えた方に寄り添いながら、難しい法律もわかりやすく的確に解説することに定評がある。愛知県弁護士会所属。

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