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『火の女神ジョンイ』の舞台となった司甕院とは? 朝鮮王朝の陶工たちの世界

  • 2026.8.4

ムン・グニョン主演の韓国時代劇『火の女神ジョンイ』は、陶磁器作りに人生を懸けた女性の成長を描いた作品である。

宮女や医女、絵師、芸妓など、さまざまな職業に就く女性を主人公にしてきた韓流時代劇。そのなかで本作が光を当てたのは、王室で使われる器を作っていた陶工たちの世界だった。

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物語の舞台となるのは、朝鮮王朝時代に王室用の陶磁器を製造していた司甕院(サオンウォン)の分院である。主人公ジョンイは男性中心の陶工の世界に飛び込み、朝鮮一の沙器匠(サギジャン)を目指して腕を磨いていく。

朝鮮半島では、古くから中国の製陶技術を取り入れながら、独自の陶磁器文化が発展してきた。高麗時代には青磁、朝鮮王朝時代には白磁が盛んに作られ、美しい色合いと洗練された造形で高く評価された。

朝鮮王朝では、国王の食事や宮中の食事供給を担当する官庁として司甕院が置かれ、宮中で使用する器の製作も管轄していた。その器を実際に作っていた職人が、沙器匠と呼ばれる陶工たちである。

『火の女神ジョンイ』では、この司甕院の分院を中心に、陶工たちの技術競争や宮廷内の権力争いが描かれる。ジョンイもまた、さまざまな妨害や身分の壁に直面しながら、陶工として成長していく。

ただし、ムン・グニョンが演じるジョンイは架空の人物である。その人物像のモチーフになったとされるのが、朝鮮王朝時代に生まれ、のちに日本で生涯を終えた女性陶工・百婆仙(ペク・パソン)だ。

百婆仙が実際に司甕院の分院で働いていたことを示す記録は確認されていない。また、ドラマで描かれる光海君(クァンヘグン)とのロマンスもフィクションである。

それでも、男性中心の陶工の世界で技術を磨き、自らの手で人生を切り開いた女性という設定には、百婆仙の存在が重ねられている。

ドラマでは宮廷ロマンスや出生の秘密が物語を盛り上げるが、その土台には朝鮮王朝の陶磁器文化と、それを支えた名もなき陶工たちの歴史がある。

『火の女神ジョンイ』は、一人の女性の成長物語であると同時に、王室の器を作り続けた職人たちの世界を知ることができる時代劇でもあるのだ。

文=森下 薫

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