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「水も出さない店なのか」お店のルールに不満をぶつける客。最後まで納得してもらえなかった

  • 2026.8.4

手が挙がった昼のホール

働いていたのは、定食と丼を出す大衆食堂のような店です。

水とおしぼりはお客様に取っていただく形で、入口の脇と給水機の上、レジの横の3か所に案内の紙を貼っていました。

昼の混み合う時間、奥の席から手が挙がりました。

テーブルの呼び出しボタンは、押されていません。

「水も出さない店なのか」

四十代くらいの男性が、何もないテーブルを指で示しました。

「申し訳ございません。お水とおしぼりは、あちらのコーナーでお取りいただく形になっておりまして」

「なんで注文を取りに来ない。座ってからずっと待ってるんだけど」

「ご注文はこちらのボタンでお呼びいただけましたら、すぐに伺います」

男性の眉が寄りました。説明がうまく届いていないのが、その顔で分かります。

3か所に貼った紙

体の向きを変えて、給水機の上の紙を手で示しました。

入口の脇にも、レジの横にも同じ紙があります。

「あちらと入口と、レジのところにも、同じご案内を出しております」

「そんな紙、誰が見るんだよ」

「見えにくいところに貼っておりまして、申し訳ございません」

「気づかない場所に貼っておいて、案内も何もないだろ」

頭を下げるほど、話は前に進みませんでした。

「そうじゃなくて、なにすんの」

何をすればいいのかと聞かれている。そう受け取って、お冷やとおしぼりを持って戻りました。

「お待たせしました。ご注文をお伺いします」

「……日替わりで」

注文は通りました。それでも、男性の顔はほどけないままです。

端の浮いた紙を押さえて

料理を運んだときも、器を下げに行ったときも、返ってくるのは短い返事だけでした。

会計のとき、男性はレジの横の紙を一度だけ見ました。読んだのかどうかは分かりません。

「次からは、最初に持ってきてよ」

「ご意見、ありがとうございます」

それ以上、言える言葉がありませんでした。

伝えるべきことは全部伝えたのに、伝わった手応えだけが来ません。

自動ドアが閉まると、店内の話し声がゆっくり戻ってきます。

「大丈夫だった?」

厨房から顔を出した店長に、私は首を横に振りました。

「説明は、ちゃんとできたと思うんですけど」

「できてたよ。それでも通らない日はある」

給水機の上の紙は、端が少し浮いていました。指で押さえ直して、私は次のテーブルへ向かいます。

店内の3か所で、同じ言葉が今日も黙って待っていました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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