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「在庫を見せろ、奥にまだあるだろ」閉店後も文句を言う客→時計を見て走り出した理由

  • 2026.8.3

閉店10分前のレジ前

駅前の雑貨店で販売スタッフとして働いていたころの話です。

閉店10分前、レジを締める準備をしていたところへ、中年の男性が入ってきました。

探していたのは、棚の一角に並ぶ品でした。ちょうど売り切れたばかりで、次の入荷は週明けです。

「申し訳ございません。こちらはお取り寄せになります」

男性の顔つきが変わりました。

「在庫を見せろ、奥にまだあるだろ」

「バックヤードにも置いておりませんので、ご注文の形でお預かりできます」

「客が来てるのに、売る物がないってどういうことだ」

言いながら、片手でカウンターを二度叩きます。

閉店の音楽が流れ終わり、店内に残るお客様はこの男性だけになりました。

始まった武勇伝

「もう閉店のお時間になりますので」

やんわり伝えたつもりでしたが、聞き入れてはもらえません。というより、話の向きが途中から変わっていきました。

「俺はな、若いころは百人単位の部下を動かしてたんだ」

取り寄せの話は、いつのまにかどこかへ消えていました。

「災害のときもボランティアで現地に入ってな。あれは大変だったぞ」

「そうでしたか」

相づちを打つたび、話は次の章へ進みます。

表彰されたときのこと、後輩に慕われたときのこと。

私は品出しのかごを抱えたまま、カウンターの内側に立っていました。

売り場の照明を落とすきっかけも、結局つかめないままです。

壁の時計を見た瞬間

気づけば、閉店時間から1時間が過ぎていました。

「だからな、今の若い連中は根性が」

そこで男性の言葉が切れました。

時計に目が留まったようです。

「……今、何時だ」

「11時を10分ほど回りました」

顔から血の気が引くのが、はっきり見えました。

ポケットを叩いて定期入れを探し、二度ほど言いかけて、その言葉を飲み込みます。

「終電がなくなる」

それだけ言うと、男性は入口へ走り出しました。開ききらない自動ドアの隙間を、体を斜めにして抜けていきます。

「お取り寄せのご注文は、いつでも承ります」

背中に声をかけましたが、届いたかは分かりません。

改札へ駆けていく足音が、閉じたドアの向こうで小さくなっていきました。

店長が奥から出てきて、壁の時計を見上げます。

「ずっと一人で立ってたのか」

「はい。最後まで、ご注文はいただけませんでした」

レジを締めて外へ出ると、駅のホームの明かりがまだついていました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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