1. トップ
  2. エピソード
  3. 「放し飼いにしないで欲しい」隣人の猫が散らかしたゴミ。4年間我慢した私を救った、町内の決まりごととは

「放し飼いにしないで欲しい」隣人の猫が散らかしたゴミ。4年間我慢した私を救った、町内の決まりごととは

  • 2026.8.3

朝の道に散らばるもの

隣の家の女性は、飼い猫を朝から晩まで外に出していました。

窓際で丸くなっている姿を見かける日のほうが、むしろ少なかったと思います。

困っていたのは、猫そのもののことではありません。

ゴミを出す場所に、当時はまだ防護ネットというものがなかったのです。

収集車が来る前に袋が破れて、中身が道路の真ん中まで転がっていきます。

卵のパックも、みかんの皮も、風に押されて散っていきました。

「またやられてますね」

袋を提げてきた向かいの奥さんが、足を止めて言いました。

私はしゃがんで拾っている最中でした。

「気づいた人が拾えばいいので」

そう答えるのが、いつのまにか決まりのようになっていました。

4年、言えないまま

隣の女性が謝ってきたことは、一度もありません。

悪気があったわけではないのだと思います。外に出して飼うのが当たり前だと考えている人が、あのころはまだ何人もいました。

「おたくの並びでしょ、今朝もひどかったよ」

回覧板を持ってきた人にそう言われたときは、さすがに手が止まりました。

私が散らかしているわけではありません。

台所で、夫に向かって声に出してみたことがあります。

「放し飼いにしないで欲しい」

「言えばいいじゃない」

「言えないよ。明日も明後日も、隣に住んでるんだから」

結局その一言は、玄関のドアの外に一度も出ませんでした。そのまま4年が過ぎています。

回覧板にはさまっていた一枚

変わったのは、その年の秋の町内会の集まりでした。

カラスや猫でゴミが散るという話が出て、集積所に防護ネットを置くことがその場で決まったのです。

誰の名前も出ませんでした。

翌週、たたまれた青いネットが電柱の脇に届きました。

当番の人が朝いちばんに広げて、出し終わった袋の上からかぶせます。やることは、それだけです。

道路にみかんの皮が転がっている朝は、なくなりました。

「重石、こっち側に置いときますね」

ある朝、先にネットを広げていたのは隣の女性でした。

四隅にブロックを載せています。私は袋を置いて、反対側の角を一緒に引っぱりました。

「助かります」

「いえ」

それきりで、二人ともゴミ捨て場を離れました。私が言えなかった一言は、とうとう誰の口からも出ないままです。かわりに毎朝、あのネットがここにかかっています。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ