1. トップ
  2. エピソード
  3. 「揚げたてのポテト、ありますか」指を立てるだけで注文が通るようになった常連客。同僚から見た時の不思議な光景とは

「揚げたてのポテト、ありますか」指を立てるだけで注文が通るようになった常連客。同僚から見た時の不思議な光景とは

  • 2026.8.3

朝7時の揚げ物ケース

学生のころ、通学路の途中にあるコンビニで朝のシフトに入っていました。週に4日か5日、7時から10時までレジに立ちます。

その時間に必ず来る男性のお客様がいました。

買うものはいつも決まっていて、揚げ物のケースを覗いてからこう言います。

「揚げたてのポテト、ありますか」

並んでいるものではなく、揚がったばかりのものが欲しいという意味です。

数はポテト2個の日と3個の日があって、その日の気分で変わるようでした。

「5分ほどお時間をいただきます」

「待ちます」

この短いやりとりを、たぶん三か月は繰り返したと思います。

指が2本立った朝

梅雨に入ったころの朝でした。自動ドアが開いて、その人が傘をたたみながら入ってきます。

いつもの言葉はありませんでした。代わりに、こちらを見て指を2本立てます。

「ポテト2個ですね。揚げたてを準備します」

男性は小さくうなずいて、雑誌の棚のほうへ歩いていきました。私はフライヤーにポテトを落として、タイマーを押します。

それから先は、言葉がほとんど要らなくなりました。

指が3本なら3個、2本なら2個。

出来上がったら私が声をかけに行き、その人がレジへ戻ってくる。流れはそれだけです。

「お待たせしました」

「ありがとう」

会話らしい会話は、この二言しかありませんでした。

他の人に見えていたもの

ところが、後から入った同僚には、まったく違う光景が見えていたようです。

「さっきの人、何も言わずに出ていきましたけど」

「指で2って出していたので、ポテトを2個です」

「……全然、分からなかったです」

言われて初めて気づきました。あの合図は、私にだけ注文として届いていたのだと。

事情を知らない人の目には、入ってくるなり店員へピースサインを向ける男性にしか映っていなかったはずです。

挨拶なのか、ふざけているのか、判断のしようがありません。

(毎朝ピースして入ってくるお客さん)

そう思うと、レジの内側で少し笑ってしまいました。

シフトを終える最後の日も、その人はいつもどおり指を2本立てました。

「今日で最後なんです。ありがとうございました」

「そうか。…揚げたて、うまかったよ」

三か月分の言葉を、まとめて聞いた気がしました。

今も揚げ物のケースの前を通るたびに、あの2本の指を思い出します。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ