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数々の映画賞を総なめした【国民的女優】22年前、日本中を泣かせた“海辺の初恋”とは

  • 2026.8.22
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2007年11月、「ベストスマイル・オブ・ザ・イヤー」著名人部門に選ばれた長澤まさみ(C)SANKEI

恋を失う少女を演じるとき、観客を泣かせる技術だけでは足りない。失う前の時間が、どれほど眩しかったかを信じさせる力が要る。長澤まさみは、その両方を早くから持っていた。

2004年公開の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で、長澤は海辺の町に生きる高校生・廣瀬亜紀を演じた。そこから鎌倉の生活者、ハワイで毎朝記憶を失う女性へ。長澤が海辺の恋に選ばれるとき、海は装飾ではなく、失われる時間を受け止める巨大な画面になるのだ。

一度きりの初恋を託された10代

『世界の中心で、愛をさけぶ』の亜紀は、森山未來演じる松本朔太郎と恋に落ちる。二人は同じ町で笑い、無人島へ出かけ、未来の約束を交わす。ところが亜紀は白血病を患い、当たり前だった高校生活から離れていく。

この役で重要なのは、病の重さだけではない。亜紀が教室や海辺で放つ明るさが本物でなければ、その後の喪失は観客へ届かない。長澤は声を上げて笑う開放感と、少しずつ弱っていく身体を一人の少女の中に置いた。

結果として、長澤は第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞などを受賞した。10代の俳優へ大作の感情を預けた制作側の判断は、興行の規模と受賞の両方で報われたのである。

海辺で笑う亜紀を先に焼きつけたから、病室の亜紀が忘れられない。長澤の明るさは、悲劇を深くする力として選ばれた。

恋だけでは終わらない鎌倉の次女

2015年公開の映画『海街diary』で、長澤が演じた香田佳乃は、鎌倉で暮らす四姉妹の次女だ。長女・幸を綾瀬はるか、三女・千佳を夏帆、異母妹・すずを広瀬すずが演じた。

佳乃は恋に失敗し、酒を飲み、仕事へ向かい、また家へ帰る。亜紀にとって初恋が世界のほとんどだったのに対し、佳乃の一日は恋だけで埋まらない。姉妹との食卓があり、職場があり、鎌倉の坂と海がある。

是枝裕和監督が長澤へ託したのは、四姉妹の中へ大人の体温を入れる役割だったのではないか。華やかな容姿がありながら、佳乃は失敗も酔いも隠さない。長い手足で古い家を歩く姿には、外の世界を知って戻ってきた次女の風がある。

同作は第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。海辺の初恋で日本の観客を泣かせた長澤は、11年後、恋を生活の一部として抱える女性で世界の映画祭へ立ったのだ。

毎朝、恋を始められる顔

2018年公開の映画『50回目のファーストキス』で演じた藤島瑠衣は、事故の後遺症により眠ると前日の記憶を失う。ハワイで瑠衣と出会う弓削大輔役は山田孝之。大輔は、翌朝には自分を忘れる瑠衣へ何度も思いを伝える。

この設定では、同じ出会いを繰り返しても初めてに見えなければならない。長澤の大きな笑い、疑う目、怒り、照れが、その朝ごとの瑠衣を作る。昨日の芝居を引きずらず、同時に観客には積み重なった恋を感じさせる。難しい二重構造である。

『世界の中心で、愛をさけぶ』では、亜紀との時間を朔太郎が記憶する。『50回目のファーストキス』では、瑠衣が記憶を持ち越せない。それでも長澤の表情が開くたび、恋はゼロから動き出す。

失う少女だけでなく、失ったことさえ忘れる女性まで成立させる。その振幅があるから、長澤まさみは海辺の恋へ何度も呼ばれる。

海が受け止めた、主演女優の時間

2004年の海辺の町、2015年の鎌倉、2018年のハワイ。亜紀は残り時間を生き、佳乃は失敗の翌日も働き、瑠衣は昨日を失って朝を迎える。

同じ海でも、長澤へ求められた仕事は違う。少女の眩しさ、生活者の疲れと快活さ、毎朝更新される驚き。長澤は海を背にして泣くだけではない。笑い、飲み、怒り、恋をもう一度始める。そのたび海の意味まで塗り替えてきたのである。


※記事は執筆時点の情報です

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