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27年前、歌姫が「ケロケロ」した超ハイトーン曲 今聴き直しても新しいglobeの高音サビ曲

  • 2026.9.17
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1999年2月、公開レコーディングを行ったglobe(C)SANKEI

声が二つ、交互に飛び交うところから曲は始まる。KEIKOの声が短い言葉を置くと、MARCの声がすぐに言葉を返す。歌とも語りともつかない応酬で、旋律が立ち上がる前に会話のほうが先に走り出す。伴奏はまだ薄く、低く一定に刻むキックと、輪郭の細い電子音があるだけだ。

その会話が少しずつ速くなり、二人の声が重なりかけたところで、サビが一気に高い場所へ抜ける。ここまでの数十秒に、この曲の全部が入っていると言っていい。歌の順番を待たせる前置きがなく、聴き手は最初の数秒で二人の声の関係を知らされ、そのままサビへ連れていかれる。

globeの曲は、こうした声の配置そのものが作品だった。言葉を刻んで差し込む声と、旋律を高く運ぶ声。二つが互いの持ち場を守りながら、ときどき境目を越える。この曲はその境目の越え方が、いちばん露骨に、いちばん気持ちよく設計されている。

globe『still growin' up』(作詞:KEIKO・MARC/作曲:小室哲哉)ーー1999年9月8日発売

歌とサビの往復だけで最後まで走り切る

日本のポップスは多くの場合、Aメロで景色を置き、Bメロで気持ちをためて、サビで放つという三段の積み上げで進む。この曲にはその階段がない。二人の掛け合いで進む部分と、KEIKOが高く伸ばすサビ。この二つを行き来するだけで最後まで走り切る。洋楽のダンス曲に近い組み方で、聴き手を待たせる時間を作らない。

伴奏の音を減らしてあるのは、声の応酬を前に出すための処置に映る。低く刻むキックと細い電子音の上で、二人の声だけが立体になる。厚い伴奏で押すのではなく、薄い伴奏で声を浮かせる。そのぶん、サビ手前で掛け合いのテンポが上がった瞬間の加速が、体にそのまま伝わる。

役割分担も潔い。KEIKOとMARCが自分たちの言葉で詞を書き、小室哲哉が曲と編曲で器を用意する。globeの基本の形をそのまま使いながら、器の側は徹底して軽く仕上げてあるのが、この曲の作りの要だ。

強がりの顔をした硬い輪郭の高音

サビでKEIKOが繰り返す旋律は、相当に高い。カラオケで気軽に真似できる高さではなく、サビの手前で息を整えても、多くの人はまだ届かない。しかもその声には、いわゆるケロケロボイスと呼ばれる機械的なエフェクト処理が掛けられていて、生の息づかいよりも輪郭の硬さで耳に届く。声を柔らかく包む方向ではなく、金属のように磨いた方向の加工だ。

この硬さと高さの組み合わせが、詞の中身と噛み合っているように感じる。詞が描くのは、人前では強く見せている人の内側だ。加工で硬くした高音は、その「強く見せている」表情そのもののように鳴る。本当の弱さは掛け合いの低い語りの側に置かれ、サビでは硬い声が前に立つ。二つの声色が、一人の人間の表と裏を分担していると読める。

前作『MISS YOUR BODY』は、ブラックミュージックに寄せた暗めの手触りを持つ曲だった。そこから一転して、ラップとサビの反復で耳に残る、明るく開いた形へ戻っている。初期のglobeが得意にした組み立てに、加工された高音という新しい武器を一つ足した曲として聴くと、この明るさは単なる回帰ではない。

全速力の作り替えに残った原曲の骨

この曲には、後年に別の顔がある。2015年の『Remode 1』で、小室哲哉は自分の過去曲を再構築し、この曲を全速力で走り続けるエレクトロに作り替えた。電子音の連打で体を押し続けるダンス音楽の一種だ。1999年版の軽く薄い伴奏は、隙間のない音の壁に置き換わっている。

それでも掛け合いの応酬とサビの高音は、音の密度を上げても骨として残り、逆に原曲のほうが二人の声を近くで聴かせていたことを教えてくれる。薄い伴奏は貧しさではなく、声を前に出すための選択だったと、作り替えられた版が裏付けている。

1999年版は、globeが8cmシングルとして出した最後の一枚でもあり、2026年1月には8cmのBOXに収められて戻ってきた。あの縦長の盤で最初に聴いた人には、薄い伴奏と硬い高音が、そのまま当時の手触りになっているはずだ。

二つの声が数秒で交代する頂点

改めて1999年版を最初から流すと、掛け合いが速まり、伴奏がほとんど増えないまま、サビの高音だけが上へ抜けていく一場面に戻ってくる。強く見せる声と、弱さを語る声が、同じ数秒の中で交代する。

音を足して盛り上げるのではなく、声の配置と高さの差だけで頂点を作る。globeの三人が手にしていた設計の精度を、いちばん軽い伴奏で証明した曲として、この一枚を聴き直したい。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

(文・笄坂かける)

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