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18歳のモデル仕事で渡ったパリへ 17年後、子どもと「2つのおうち」を持った朝ドラ俳優

  • 2026.8.15
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2022年7月、没入体験型ミュージアム「Immersive Meseum」内覧会に来場した杏(C)SANKEI

18歳頃、モデルの仕事で初めてパリへ渡った。約17年後、その街は子どもたちと暮らす場所の一つになった。

がフランスへ渡ったのは、2022年のこと。本人は日本を離れきるのではなく、「2つのおうちを持つ」ような形だと説明している。現在の生活を正確に言えば、パリと東京を行き来する二拠点生活だ。

海外移住という言葉には、すべてを置いて新天地へ向かう響きがある。しかし杏の歩みをたどると、見えてくるのは仕事、暮らし、家族のどれか一つを選ぶのではなく、それぞれを持ち続けるための移動である。

パリはオーディションを受ける街だった

杏は2005年から、ニューヨークやパリ、東京などの主要ファッション・コレクションで活動した。パリを初めて訪れたのは18〜19歳頃。ファッションショーのオーディションを受けるためだったという。

見知らぬ土地で仕事をつかもうとしていたモデル時代、パリは生活の場ではなく、挑戦のために足を運ぶ街だった。その後は日本で俳優としての活動を本格化させ、ドラマや映画で主演を重ねていく。

2022年の二拠点生活は突然現れた海外志向ではなく、杏が若い頃から仕事を通じて何度も接してきた街との、新しい関わり方だった。

ただし、モデル時代の経験が移住を直接決めたと本人が語っているわけではない。仕事で訪れた街と、後年に家族で暮らすことを選んだ街。同じパリでも、二つの時期は分けて見る必要がある。

さまざまな家族と居場所を演じてきた

俳優として早くから向き合ってきたのは、家族や居場所をめぐる物語だった。2011年放送のフジテレビ系ドラマ『名前をなくした女神』では連続ドラマに初主演。5歳の息子を持ち、お受験とママ友社会の中で揺れる母・秋山侑子を演じた。

2013年度後期のNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』では、ヒロインの卯野め以子役で広く知られるようになる。東京から大阪へ嫁いだめ以子が、複雑な家族関係の中で食卓を守り、夫婦となり、子どもを育てていく。戦争を挟む約20年を通して、暮らす場所と家族の形が変わり続ける物語だった。

翌2014年放送の日本テレビ系ドラマ『花咲舞が黙ってない』では、銀行の不正や理不尽に声を上げる花咲舞を演じた。家庭を描く役だけでなく、働く人の矜持を背負う主演シリーズも、杏の俳優としての輪郭を作っている。

家族の中で生きる人も、組織の中で声を上げる人も演じながら、杏は日本で俳優としての確かな居場所を築いてきた。

だからこそ、2022年からの生活は日本での仕事を手放す話ではない。東京にも拠点を残しながら、家族の暮らしをパリへ広げる選択だった。

子どもの入学に合わせ準備した「2つのおうち」

杏は子どもたちが小学生になる時期に合わせて二拠点生活を始め、その準備に2年をかけたと語っている。思い立ってすぐに飛び立ったわけではなく、教育の節目を見据え、生活と仕事を調整してきたのだ。

2022年8月、フランスへ行くことを明かした際には、3人の子どもと愛犬を伴うことも伝えた。そこで使ったのが「2つのおうち」という表現だった。

杏が選んだのは、日本かフランスかの二者択一ではない。子どもの生活を整えながら、日本で続けてきた仕事にも戻れるよう、二つの街に居場所を持つ形だった。

華やかな海外生活だけを見れば、大胆な転身に映るかもしれない。しかし、その裏側にあったのは2年間の準備である。軽やかに見える移動ほど、実際には地道な段取りに支えられていた。

暮らす街が再び仕事の舞台に

二拠点生活を始めた後も、杏は日本の作品への出演を続けている。2024年公開の映画『かくしごと』では、認知症の父と暮らしながら、虐待の痕がある少年を守ろうとする里谷千紗子を演じた。母、娘、介護者という複数の立場を背負い、血縁だけでは割り切れない家族の形に向き合う役だった。

そして2025年公開の『劇映画 孤独のグルメ』では、パリ編に松尾千秋役で出演。凱旋門を背景にした撮影に参加し、監督・脚本・主演を務めた松重豊から頼まれ、現地の店探しにも協力した。

18歳頃にはオーディションを受けるために訪れた街で、今度は暮らす人として日本映画の制作に加わる。長く関わってきた街で暮らし、その土地を知る経験が制作現場で頼られたことは確かだ。

仕事で出会ったパリは、家族と暮らす街になり、さらに仕事を迎える街にもなった。杏の二拠点生活は、何かを捨てる移住ではなく、居場所を増やしてきた歩みとして続いている。


※記事は執筆時点の情報です

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