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罵声を浴びせる夫→婚活男へ。人気アナと結婚した俳優の「結婚」を3つの温度で演じた振れ幅

  • 2026.8.20
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2022年3月、映画『ウェディング・ハイ』初日舞台挨拶を行う中村倫也(C)SANKEI

結婚という題材ほど、俳優が受け止められる感情の広さを露わにするものはない。祝福だけでは終わらず、相手を求める心細さも、生活が崩れる恐怖も、周囲の騒動に押し流される可笑しさもある。その振幅を、一本ごとに別の顔で引き受けてきたのが中村倫也だ。

2018年のテレビ朝日系ドラマ『ホリデイラブ』では家庭を支配する夫。2019年公開の映画『美人が婚活してみたら』では恋に不慣れな婚活中の男。2022年公開の映画『ウェディング・ハイ』では、晴れの日に騒動の集中砲火を浴びる新郎。並べると、同じ俳優への配役とは思えないほど温度が違う。

中村が任されてきたのは「結婚する男」という一枚の札ではなく、結婚の周囲で人間の弱さや滑稽さが噴き出す瞬間そのものなのだ。

場の空気を変えた『ホリデイラブ』の夫

最初に置かれたのは、祝福から最も遠い場所だった。『ホリデイラブ』で演じた井筒渡は、妻の里奈(松本まりか)を罵倒し、相手を支配しようとする夫である。

画面に必要なのは、家の中から逃げ道を消してしまう圧力だ。しかし撮影では、暴力的な場面ほど動きを柔らかくし、松本へ声をかけながら安全に進めていたという。見せる恐怖は鋭く、作る手つきは冷静。その両方がなければ、渡の危うさは単なる大声に縮んでしまう。

中村自身も、井筒家を「崩壊」から始まる家庭と捉え、かつての幸福を視聴者が想像できる余地を残した。すでに壊れた関係の奥へ、失われた日常の影を置く。その影があるから、渡の苛立ちは一層痛い。

渡の暴力性を強く見せながら、共演者が恐れず飛び込める場を整える。中村は、激しい夫婦劇を成立させる技術まで含めて選ばれたのだろう。

婚活の場に立つ園木の頼りなさ

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2019年撮影、中村倫也(C)SANKEI

翌2019年、『美人が婚活してみたら』で中村は園木を演じた。主人公のタカコ(黒川芽以)が婚活で出会う男性だ。

作品は、理想の条件を並べれば結婚へ進めるという話ではなく、婚活の場へ来てもなお揺れる人間を描く。そこで園木に要るのは、鮮やかに相手をさらう格好よさより、言葉が一拍遅れるような頼りなさだ。華やかさを抑えた時にも観客の視線をつなぎ止められるから、中村は園木の逡巡を物語の前景へ運べる。

威圧感で部屋を支配した翌年、今度は相手の返事を待つ側に立つ。強く出ない芝居でも人物を薄くしないことが、中村の役幅を支えている。

新郎を笑いの受け皿にした『ウェディング・ハイ』

そして『ウェディング・ハイ』。中村が演じる石川彰人は、新田遥(関水渚)と準備を重ね、結婚式当日を迎える。ところが主賓の挨拶、余興、紹介映像にまで参列者の情熱が暴走し、元恋人や招かれざる人物まで現れる。主役の新郎新婦が、周囲の見せ場を受け続ける喜劇だ。

中村は役に多くの「新郎あるある」が含まれていると考え、その感覚を少しずつ手繰り寄せた。「結婚は墓場だ」という悲劇的な言葉を引きながら、作品を「間違いなく喜劇」と言い切った。この映画で彰人が笑いを独占してしまえば、クセの強い招待客たちの暴走は散らかる。困惑し、耐え、時に巻き込まれる新郎が中央にいるから、騒動は一つの披露宴としてまとまるのだ。

『ウェディング・ハイ』の中村は、笑わせる人である以上に、周囲の笑いを受けて膨らませる人である。主演級の存在感を持ちながら、自分を喜劇の受け皿にできる。

2023年3月25日、中村は日本テレビアナウンサーの水卜麻美との結婚を連名で報告した。「支え合いながら、地に足をつけ精進して参ります」と結ばれた短い言葉は、静かでまっすぐだった。

その報告より前、画面の中では渡が崩れ、園木が迷い、彰人の式には他人の熱量が雪崩れ込んでいた。結婚の正解を語るのではなく、そこに集まる感情を一役ずつ違う重さで持つ。中村倫也に預けたくなるのは、きれいな幸福だけでは収まらない男たちなのである。


※記事は執筆時点の情報です

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