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なぜ「不倫」がこんなにも似合うのか?危うい愛の4つの立場を演じ分けた「怪演系女優」

  • 2026.8.9
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2025年7月、ドラマ『奪い愛、真夏』の会見に出席した松本まりか(C)SANKEI

家庭に割って入る女、夫の心が離れる気配に傷つく妻、15年の裏切りに復讐を誓う妻。そして、過去の不倫を断ち切った後、元恋人に瓜二つの妻帯者へ惹かれていく独身女性。

松本まりかは「不倫」を扱うドラマに何度も出演してきた。しかし、そこで繰り返しているのは同じ役ではない。愛を奪う側、裏切りの気配にさらされる側、復讐する側、再び危うい愛へ引き寄せられる側。立つ場所が変わるたびに、声や表情の強さだけでなく、感情の向かう先まで変えてきた。

笑顔のまま家庭を揺らした初期不倫役

松本の名前を広く知らしめた作品の一つが、2018年放送のテレビ朝日系ドラマ『ホリデイラブ』だ。

演じた井筒里奈は、妻子ある男・高森純平を誘い、その家庭を揺さぶる女性。かわいらしい顔の奥に強い執着を抱え、欲しい相手へ迷いなく近づいていく。松本は、無邪気に見える笑顔や甘い声を崩しすぎないまま、里奈の危うさを際立たせた。

ここで印象的なのは、里奈が最初から恐ろしい顔を見せるのではないことだ。真っすぐな愛情にも見える思いが、相手の都合や家庭をのみ込むほど膨らんでいく。松本は「奪う女」を単純な悪役に閉じ込めず、愛らしさと執着が同じ場所から生まれる人物として見せた。

夫婦の内側で裏切りの気配に揺れる

2021年放送のABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『それでも愛を誓いますか?』では、結婚8年目の純須純を演じた。純は子どもを望みながら、夫とのセックスレスが5年目に入り、自分が女性として見られていないことに苦しんでいる。そこへ夫の高校時代の同級生が現れ、夫婦の関係はさらに揺れ始める。

『ホリデイラブ』の里奈が欲望を相手へ押し出したのに対し、純は満たされない思いを胸の内にためる。夫を責めたい気持ちがあっても、長く一緒にいた時間まで簡単には否定できない。松本は、言葉になる前の戸惑いや、自信が少しずつ削られていく痛みを静かな表情ににじませた。

誰かの家庭を外から揺らした役から、夫婦の内側で関係の変化に耐える役へ。同じ不倫周辺の物語でも、松本の感情表現は外向きの執着から、内側に沈む孤独へと反転した。

傷つくだけの妻から復讐する側へ

2024年放送のテレビ東京系ドラマ『夫の家庭を壊すまで』で演じた如月みのりは、夫が15年にわたって不倫し、別の家庭まで持っていたことを知る。信じてきた結婚生活を根底から覆されたみのりは、夫と不倫相手への復讐を決意。不倫相手の息子へ接近し、自ら計画を動かしていく。

みのりは、ただ裏切られて泣く「サレ妻」では終わらない。怒りを行動へ変え、相手の日常へ踏み込むうちに、復讐する側の危うさも帯びていく。松本は、傷ついた人が力を取り戻す痛快さと、その力が別の誰かを傷つけかねない怖さを同時に背負った。

『ホリデイラブ』では家庭を揺らす側だった松本が、今度は壊された家庭から反撃する。立場は正反対でも、感情が一線を越える瞬間から目をそらさない点は共通している。

過去を精算したのに再び危うい愛へ

2025年放送のテレビ朝日系ドラマ『奪い愛、真夏』で演じた海野真夏は、過去に妻帯者・大浦隼人との不倫を終え、新生活を始めた独身女性だ。転職先で真夏が出会うのは、隼人に瓜二つの妻帯者・空知時夢。

真夏は、何も知らずに愛へ飛び込む人物ではない。一度は不倫関係を断ち切ったからこそ、越えてはいけない線も、その先にある痛みも知っている。それでも、過去を呼び起こす顔を持つ時夢に心を揺さぶられる。松本は、衝動だけでは説明できないためらいを重ね、理性と感情がせめぎ合う独身女性を演じた。

奪う女、裏切りの気配に揺れる妻、復讐する妻、そして過去の過ちを知りながら妻帯者へ惹かれる独身女性。松本は「不倫モノ」に何度出演しても、人物の立場と感情の温度を変えてきた。

同じなのは、不倫という設定ではない。愛が正しさからはみ出す瞬間に、その人が何を失い、何を選ぶのかを映すことだ。「また不倫役?」では片づけられない違いを積み重ねてきたからこそ、松本まりかは危うい愛の物語で、そのたびに別の顔を見せるのである。


※記事は執筆時点の情報です

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