1. トップ
  2. エンタメ
  3. “教師に恋する生徒”から“10歳下を魅了する大人”へ 広瀬すずが【禁断の恋】で見せた鮮やかな反転

“教師に恋する生徒”から“10歳下を魅了する大人”へ 広瀬すずが【禁断の恋】で見せた鮮やかな反転

  • 2026.8.6
undefined
2026年1月、ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した広瀬すず(C)SANKEI

10歳年下の高校生から、想われる26歳の女性。2023年公開の映画『水は海に向かって流れる』で、広瀬すずが演じた榊千紗は、年下の少年を積極的に誘惑するような存在ではない。むしろ恋愛から距離を置き、誰にも踏み込ませまいとする“大人側”の人物だ。

それでも高校生の心を動かしてしまうところに、千紗の危うさがある。

思えば広瀬は、かつて教師にまっすぐな思いをぶつける生徒を演じていた。追いかける側だった少女が、数年後には10歳年下から追いかけられる側へ。二つの作品を並べると、同じ「簡単には許されない恋」の中で、広瀬がまったく違う立ち位置を演じていたことが見えてくる。

好きになった相手は、学校の先生

2017年公開の映画『先生! 、、、好きになってもいいですか?』で、広瀬が演じたのは恋を知らない高校生・島田響。弓道部に所属する響が初めて好きになったのは、生田斗真演じる世界史教師・伊藤貢作だった。愛想がよいわけでも、甘い言葉をかけてくれるわけでもない。それでも、ぶっきらぼうな態度の奥にある伊藤の優しさに気づいた響は、自分の気持ちを抑えられなくなっていく。

教師と生徒という関係を考えれば、伊藤が簡単に応えられないのは当然だ。響の恋には、最初から越えられない線が引かれている。それでも彼女は、好きになった理由を理屈で整理するより先に、相手へ向かって走り出す。

ここで印象に残るのは、広瀬の視線のまっすぐさだ。伊藤を見つめる目には、期待も不安も隠されていない。拒まれれば傷つき、わずかな優しさに触れれば表情がほどける。感情がそのまま顔に出てしまう危うさが、初めての恋に揺れる高校生の未熟さと重なっていた。

この作品での広瀬は、相手の心を動かそうと必死になる側だったのである。

10歳下に恋を教えられる“大人側”へ

それから6年後の『水は海に向かって流れる』で演じた千紗は、響とは正反対の場所に立っている。

千紗が暮らすシェアハウスにやって来るのは、大西利空演じる高校生・熊沢直達。直達にとって千紗は、10歳年上のつかみどころのない女性だ。料理を作り、淡々と日常をこなす一方で、恋愛については頑なに心を閉ざしている。

その背景にあるのが、二人の親同士にまつわる過去だ。かつて大人たちの恋愛で傷ついた千紗は、「恋愛はしない」と決めて生きてきた。ところが事情を知った直達は、距離を置くどころか、彼女への淡い思いを加速していく。

追われる側になっても、千紗は露骨に動揺しない。声を荒らげるのではなく、冗談めかしてかわし、平静な表情の奥へ感情を押し込める。

『先生! 、、、好きになってもいいですか?』の響が、気持ちを隠せない少女だったとすれば、千紗は隠すことに慣れすぎた大人だ。広瀬は表情や声の熱を抑えることで、恋を遠ざけながらも、完全には無関心でいられない複雑さをにじませている。

“禁断の恋”で反転した広瀬すずの立ち位置

二つの作品に共通するのは、年齢や立場の差によって、気持ちのままには進めない恋が描かれていることだ。

ただし、広瀬の立ち位置は鮮やかに反転している。

響は、大人が引いた線を越えようとする生徒だった。千紗は、年下の相手に踏み込まれまいと線を引く大人になった。一方は感情をぶつけ、もう一方は受け止めながらかわし続ける。同じ恋愛という題材でも、演技の重心はまるで違う。

千紗は、年下の少年を意図的に惑わせているわけではない。恋を拒む理由や、ふとした瞬間に見せる柔らかさが、直達には放っておけないものとして映るのだろう。何も仕掛けていないのに相手の心を乱してしまう。その受け身の色気は、教師を追いかけていた響にはなかった“大人側”の顔である。

かつては許されない恋に飛び込む少女として、数年後には年下から思いをぶつけられる女性として、広瀬は恋の矢印が向く方向まで変えてみせた。

追いかけるまっすぐさと、追いかけられても動けない臆病さ。その両方を成立させるからこそ、広瀬すずが演じる“禁断の恋”は、立場が変わっても目を離せない。


※記事は執筆時点の情報です

の記事をもっとみる

注目コンテンツ