1. トップ
  2. エピソード
  3. 「玄関のポストを、開けてたのか?」郵便物を覗く友人。理解出来ない主張に引越しを決意

「玄関のポストを、開けてたのか?」郵便物を覗く友人。理解出来ない主張に引越しを決意

  • 2026.7.30

先回りする友人

付き合いの長い友人がひとり、妙なことを言うようになった。

何も話していないのに、私の週末の予定や帰宅の時間を、先回りして言い当ててくるのだ。

「来週、実家に帰るんだろう」「あの店、予約したんだって」会うたびに、そんな調子だった。

どれも誰にも話していないことばかりだった。

何度か理由を尋ねてみた。そのたびに、彼は口の端をわずかに上げるだけで、のらりくらりとはぐらかす。

答えらしい答えは、一度も返ってこなかった。

偶然が続いているのだと、自分に言い聞かせていた。長い付き合いの友人を疑うのは、どこか気が引けたからだ。

帰宅した時間

その日は予定が流れて、いつもよりずっと早い時間に帰宅した。

ふだんなら、まだ職場のデスクに向かっている時刻だった。

アパートの一階、集合ポストが並ぶ壁の前に、見覚えのある背中があった。

私の部屋の番号の扉が開いていて、中の封筒を一枚ずつ引き出している。

近づいていくと、それは間違いなくあの友人だった。

私に気づいても、慌てるどころか、悪びれる様子すらない。

(玄関のポストを、開けてたのか?)

彼は封筒を手にしたまま、落ち着いた声で言った。

「これ、そろそろ締切だよ。払っておきなよ」

咎められているとは、まるで思っていない顔だった。

むしろ親切をしてやっている、という声色さえあった。

迷わなかった理由

その表情を見て、話し合っても無駄だと分かった。

本人の中では、これは友情のつもりなのだ。

悪いことをしている自覚がまるでない相手には、こちらの理屈はどこまでも届かない。

私はその場で、引っ越しを決めた。

腹を立てるより先に、この人との距離をゼロにすることだけを考えていた。

数日で手続きを済ませ、連絡先も変えた。行き先は、彼にも誰にも伝えなかった。

説明はいらないと思った。理由をわざわざ話したところで、また先回りされて終わるだけだ。

引っ越してからは、ポストを開けるたびに感じていた小さな緊張が、すっと消えていった。もう誰にも、私の一日を先読みされることはない。

迷わず決めたことを、後悔してはいない。得体の知れないものに怯えて縮こまるより、自分の暮らしを守る線を自分で引くほうが、ずっと楽だった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ