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「幾らだ、もう1本開けてもいいか」買い物に来た2人の男性。だが、店内での非常識な行動に背筋が凍った

  • 2026.7.29

プシュッという音

ドリンクの棚の前で迷っていたときに、背中のほうで自動ドアが開きました。

体格のいい男性が二人、まっすぐこちらへ歩いてきます。夜の十時を過ぎた頃でした。

私は棚の前を空けて、脇へどきました。

一人が扉を開けて、350mlの缶を取り出します。

次の瞬間、プシュッ、と音がしました。

その人は缶をレジへ持っていかずに、その場で口をつけたのです。喉が鳴る音が聞こえました。

私は棚に手をかけたまま、動けませんでした。

カウンターの前で笑った連れ

もう一人が、レジのほうへ歩いていきます。

カウンターにいたのは、若い女性の店員さんでした。

缶を持った人のほうを見たまま、表情が固まっています。

「幾らだ、もう1本開けてもいいか」

笑いを含んだ声でした。

「え、あの」

「聞いてんだけど」

店員さんは何も言えませんでした。返事を待つ気などない聞き方だったからです。

その人はポケットから小銭をつかみ出して、カウンターへ放りました。硬貨が跳ねて、いくつか床へ落ちます。

缶を持った人が、こちらを振り返りました。

店員さんの顔と、棚の前の私と、雑誌コーナーで立ち尽くしていた男の子を、順に見ていきます。

そして、ゲラゲラと笑い出したのです。

「見てるぞ、みんな」

もう一人も声を上げて笑いました。二人は缶を持ったまま、自動ドアのほうへ歩いていきます。

誰も止めませんでした。止められなかったのです。

窓の外の光が消えてから

ドアが閉まったあとも、店内は静かなままでした。

笑い声だけが、耳の奥に残っています。

男の子と目が合いました。どちらも何も言わずに、窓の外を見ます。

駐車場の車にライトがつき、しばらくして道路へ出ていきました。

その光が見えなくなって、やっと息が吐けたのです。

レジへ行くと、店員さんは床の硬貨を拾っているところでした。

「あの、大丈夫ですか」

「大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」

そう言ってから、店員さんはカウンターの奥のモニターに向き直りました。

「記録を確認して、本部に報告します」

その手つきは、思っていたよりしっかりしていました。

このまま黙って終わらせるつもりはないのだと、その背中で分かったのです。

会計を済ませて、私は足早に店を出ました。

大声を出されたわけでも、手を出されたわけでもありません。それでも、家の鍵を開ける手が震えていました。

誰も動けない場所で、動けない人たちを見て笑う。あの笑い声が、いちばん怖かったのだと思います。

それからしばらく、あの時間帯にあの店へ行けなくなりました。昼間は何ともないのに、暗くなってから前を通ると、足がそちらへ向かないのです。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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