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「私が8割でしょう」と主張した40代男性、ドライブレコーダーが映していた“事故の本質”に絶句

  • 2026.8.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「センターラインのない道路ですよね。だったら私が8割で相手が2割でしょう。それが基本の過失割合ですから」

夏休みに入り、行楽地へ向かう車が増える時期のことでした。センターラインのない道路で、対向車と正面衝突。契約者のAさん(40代・男性)は、電話口でそう話しました。

センターラインのない道路で中央を越えて衝突した場合、基本の過失割合は8:2。ネットを調べればその数字が出てくるため、そのように考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし今回のケースでは、Aさんの過失は10割で決着しました。

今回ご紹介するのは、損害保険会社で私が担当した事故のお話です。

センターラインのない道路で、正面からの衝突

事故が起きたのは、センターラインのない道路でした。Aさんは走行中にハンドル操作を誤り、対向車線側にはみ出します。そこへ対向から走ってきたのが、Bさん(50代・男性)の車でした。

正面からの衝突です。Bさんは、治療を要する状態になりました。

Aさんの話は、過失割合の数字から始まりました。8:2(Aさん:Bさん)という数字自体は、調べれば実際に出てくるものです。センターラインのない道路は道幅が狭いことが多く、対向車側にも相応の注意が求められるため、対向車に2割の過失が付きます。

一方、Bさんは自分に過失はないという立場でした。そのうえで、Bさんから一つの申し出がありました。

「私のドライブレコーダーを確認してください」

Bさんのドライブレコーダーに映っていた“事故の本質”

映像には、衝突までの数秒が残っていました。

対向車線を走ってきたAさんの車は、道路の中央を越えたところで止まっていません。Bさんが走行していた車道の4分の3ほどまで入り込んでいます。Bさんの側に残された幅は、車一台が通れるものではありませんでした。

さらに映像には、Bさんが左へ寄せていく動きも残っています。ガードレールが迫り、車体が接触しても、ハンドルは左へ切られたままでした。

それでも避けきれず、衝突しています。Bさんに回避の余地はない。そういっていい状況でした。

なぜ、8:2にならなかったのか

映像の内容をお伝えすると、Aさんはこう返します。

「でも、基本の過失割合はそうではないんですか」

基本の過失割合は、事故の形態ごとに定められた出発点にあたるものです。そこから個別の事情に応じて修正が加えられ、最終的な割合が決まります。調べた時点の数字で確定するものではありません。

正面衝突の場合も、対向車が速度違反をしていたり、こちらが道路の左端を走行していたにもかかわらず対向車が中央を走ってきたりといった事情があれば、修正の対象となります。

今回のケースでは、Aさんのはみ出しが大きかったこと。そしてBさんが左に寄って回避行動をとっていたことから、仮に裁判となった場合でもAさんの過失が10割と判断される可能性が高い状況にありました。

あわせてBさんが負傷し、治療が必要な状態になり、損害も相当な規模になること。Bさんから当初の対応について不満の申し出があり、弁護士が入る可能性が高いこと。それらを順にお伝えしました。

それでもAさんは、数字の話に戻ろうとします。そこで、私はこう尋ねました。

「Aさんが逆の立場でしたら、いかがでしょうか」

Aさんが避けきれずにガードレールへ車体を当て、それでも正面から衝突された側だったとしたら。その状況で、あなたにも2割の過失があると言われたら。

しばらくして、Aさんはこう話します。

「確かに、私がBさんと逆の立場なら、2割の過失があると言われても納得できませんね」

こうしてAさんの過失を10割として、Bさんとの示談交渉を進めることになりました。

避けるために壊したものは、誰の負担か

Bさんの損害には、車の修理費や治療費のほかにも含まれるものがありました。

一つは、ガードレールです。Bさんは衝突を避けようとして左に寄り、その際に車体を接触させています。この分の損害についても、今回のケースではAさんの保険で対応しました。

対向車を避けようとして物を壊した場合、その原因は中央を越えてきた側にあるとされます。そのため修理費も、原則として対向車側の負担です。

もう一つは、Bさんが予定していた夏の行事に参加できなくなったことで生じた費用でした。行けなくなった日の宿泊費、そして移動のために支払った高速道路料金や燃料代です。事故によって目的を果たせなくなった費用として、今回のケースにおいては、賠償の対象と判断しました。

夏休みの旅行や行事で車を使う機会が増える時期は、それだけ移動にかかった費用も積み上がっています。事故で失われるのは、車と身体の健康だけではありません。その日に向かうはずだった予定も、損害として残ります。

数字より先に、確かめること

Aさんは、記憶違いをしていたわけではありません。調べた数字は正しく、事故の形態も合っていました。

思い違いがあったとすれば、それは基本の過失割合を最終的な数字だと受け取っていたことです。

基本の過失割合は、その事故が実際にどのようなものだったかが分かって初めて意味を持ちます。どちらがどれだけ避けられたのか。どのように双方の車が動いたのか。その中身が決まらないうちは、当てはめる数字も決まりません。

つまり、「調べたものがすべて」ではないのです。

何が起きていたのかを、ドライブレコーダーのような客観的な記録から確かめる。過失割合の話は、そのあとから始まります。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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