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「相手が10割ですよね」夏休みのT字路で衝突した50代女性…ドラレコに全部映っていたのに“2割”ついたワケ

  • 2026.8.26
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

事故の状況を証明する強力な手段、ドライブレコーダー。記録される映像は公平性に優れるため、客観的な証拠としても役立ちます。

では、相手の落ち度が映像にはっきり残っていれば、相手の過失は10割になるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、私が事故対応をしたT字路での接触事故。そこには、ドライブレコーダーだけでは動かせないものが隠れていました。

狭い道から、止まらずに出てきた

契約者のAさん(50代・女性)が走っていたのは、片側一車線ほどの幅の道路でした。夏休みに入って間もない、平日の昼下がりのことです。前方には、左から狭い道が突き当たるT字路。センターラインも一時停止標識もない、住宅街ではよく見かける形状の交差点です。

その狭い道から、Bさん(20代・男性)の車が左折して進入。Bさんは、減速はしていたものの停止まではせず、そのままAさんの車の左前方に接触しました。

事故直後、Aさんはこう話していました。

「向こうは止まらずに出てきたんです。ドラレコにも映っています。これは相手が10割ですよね」

事故対応の現場では、Aさんと同じ受け止め方をされる方に何度も出会ってきました。相手の落ち度が映像に残っているのだから、相手の過失が10割になるはずだ、と。

たしかに映像は、事故の状況を伝える有力な資料です。ただ、映像で明らかにできることと、映像では動かせないことがあるのです。

映像に映っていた、もう一つの真実

私はAさんにドライブレコーダーの映像を送るよう依頼し、内容を確認することにしました。

映像には、たしかにBさんの車が停止することなく交差点へ進入する場面がはっきりと記録されていました。Aさんの説明どおりです。

ただ、この「はっきり映っていた」ことが問題となりました。

Bさんの車は、接触の直前に突然現れたわけではありません。かなり手前の段階から、画面の左側にその姿が映っていました。狭い道を進んでくる車が、Aさんの視界に入る位置にいた。映像はその事実を示していたのです。

そして、その間のAさんの車の動きにも変化はありませんでした。画面に映る景色の流れ方は一定のままで、減速した形跡は確認できません。

ドライブレコーダーは、起きたことをそのまま記録します。相手が止まらなかったことも、こちらから相手が見えていたことも、区別なく残ります。

Aさんが注目していたのは、Bさんの動きだけでした。

なぜ直進していた側にも過失がつくのか

では、映像に残っていた「見えていた」という事実は、過失割合の判断でどのように扱われるのでしょうか。

事故の過失割合は、事故の形態ごとに基本となる割合が定められています。この基本の割合に個別の事情を加減したものをもとに、当事者間で話し合って決めていくことになります。

今回のように、T字路で直進車と右左折車が接触し、直進側の道路が明らかに広い形状であった場合、基本の割合は直進車20:右左折車80とされています。

ここで押さえておきたいのは、この20:80が何によって決まっているのかという点です。

狭い道から広い道へ出る車は、広い道を走っている車の進行を妨げてはならないとされています。優先関係は、道幅の差から生じており、一時停止の標識があるかどうかとは別の話です。

つまり今回のケースでは、Bさんが停止せずに出てきたこと自体は、この20:80という数字を動かす要素ではありませんでした。

標識のない交差点では、一時停止をしたかどうかは過失の修正要素として扱われません。狭い道から出てくる以上は譲るべき立場にある。その前提で、すでに8割が割り当てられています。

では、一時停止はどこで効いてくるのでしょうか。

一時停止の標識がある形態では、基本の割合は直進車15:右左折車85とされています。そのうえで、標識に従って一時停止をしてから進入していた場合には修正が入り、直進車30:右左折車70となります。

一時停止をしなかったことで相手の過失が増えるのではありません。一時停止をしたことで、相手の過失が減る。数字はこのようにしか動かないのです。

そして直進側に残る2割は、狭い道から車が出てくる可能性を予測し、前方に注意を払う必要があるという考え方から来ています。この2割は、相手が何をしたかによって消えるものではありません。

私はAさんと映像を一緒に確認しながら、以上の説明をしました。

最終的に、基本の過失割合どおり20:80(Aさん:Bさん)でAさんは納得し、解決となりました。

今回のケースから考えられる対策

では、どのような認識を持って運転していれば、結果は変わっていたのでしょうか。今回のケースからは、2つの点が挙げられます。

一つは、広い道路イコール優先道路ではないということ。

Aさんは「こちらが優先道路ですよね」とも話していました。しかし道路交通法上の優先道路とは、標識によって優先道路として指定されている道路や、センターラインが交差点を突き抜けて引かれている道路を指します。単に道幅が広いだけでは、優先道路にはあたりません。

普段走っている道であれば、どこに標識があるかは自然と頭に入っているものです。ただ、帰省先や旅行先の道となるとそうはいきません。広い道に出たからといって優先道路とは限らない。この前提は、慣れない土地を走るときにこそ意味を持ちます。

二つ目は、見えている車は止まらないかもしれないと考えること。

相手に明らかな落ち度があったとしても、直進側の過失がゼロになるとは限りません。狭い道から車が出てこようとしているのが見えた時点で、速度を落とせるかどうか。それが結果として、自分の過失を左右することがあります。

ドラレコにできること、できないこと

ドライブレコーダーは、事故のときに大きな助けになります。今回のケースでも、事故の状況そのものは映像があったからこそ争いになりませんでした。

ただ、映像が語るのは、何が起きたかという部分までです。その事故形態でどちらにどれだけの責任があるかは、映像とは別のところで決まります。ドライブレコーダーは、そこまでひっくり返してくれるわけではありません。

ドライバーの過失を動かすのは、ドライブレコーダーではなく、ドライバー自身の運転であることを忘れないようにしましょう。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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