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寿司を食べた50代男性→「お腹が痛くて息苦しい」数十分後に意識を失い…搬送先で告げられた“病名”に「すぐ病院に行けばよかった…」

  • 2026.8.28
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「お寿司を食べた後にお腹が痛くて息苦しい。食中毒かな。」週末にお寿司を楽しんだKさん(50代男性)。

しかし、帰宅した数十分後、血圧が低下し、意識を失ってしまったのです。救急搬送されて告げられた診断名は「アニサキスアレルギー」。事なきを得たものの、それ以来、彼は生魚を食べることに強い不安を抱き、「あの時、ただの食中毒だと油断せず、すぐに病院に行けばよかった…」と深い後悔を口にしています。

なぜ、ただの食中毒だと思っていた症状が、大好きな魚を食べられなくなる事態を招くのでしょうか。今回は、ぜひ知っておきたい「アニサキスアレルギー」について解説します。

アニサキスアレルギーは加熱すら通用しない「原因物質の侵入」

一般に「アニサキス」といった場合には、アニサキス症のことを指しています。今回のアニサキスアレルギーとの違いを整理しましょう。

アニサキス症

アニサキスという白くて太い糸のような虫が、生きた状態で胃などの消化管に寄生するもの。これによってみぞおちの違和感や痛みを引き起こす。

アニサキスアレルギー

他の食物アレルギー同様、アニサキスの摂取によって症状が出ます。アニサキスが生きている場合も、冷凍や加熱によって死亡している場合でもいずれの場合でも起こり得ます。

【アレルギー反応が起きるフロー】
感作(異物としての登録):生きたアニサキスの侵入を契機に、体がこれを「有害な異物(抗原)」として認識します。
抗体の形成(IgEの準備):異物に対抗するため、体内で「アニサキス特異的IgE抗体」が作られ、免疫システムが反応しやすい状態になります。
原因物質の侵入:アニサキスに含まれる主要な原因物質は、加熱や冷凍でも形が崩れず、アレルギーを引き起こす性質を保ち続けます。
全身の過剰反応:死んだアニサキスが含まれる食品を食べただけでも、作られたIgE抗体と結合し、全身の細胞から化学物質が一気に放出されます。

若き日にアニサキス症の経験があったKさんは実はすでに感作されていました。これにより、食べてから速やかにアナフィラキシーと呼ばれる激しい症状を引き起こすのです。

「ただの食中毒」と「アレルギー」の違い

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「新鮮な魚が食べたい」「週末の贅沢にお寿司を楽しみたい」。美味しい魚介類が豊かな日本で生きる皆さんが、生魚を摂取した後の胃痛をよくある食中毒と捉え、様子を見るのは当然の心理です。

今回のケースを通して、ぜひ知っておいていただきたいのは、アニサキスによるトラブルが、いわゆるアニサキス症の腹部の激痛だけではないということです。

アニサキス症であれば、胃カメラで胃壁から虫体を摘出すれば痛みは治まります。一方、アニサキスアレルギーという「免疫のスイッチ」が一度入ってしまうと、状況は異なります。アニサキスの原因物質となるタンパク質はとても頑丈です。十分に冷凍したり、中心まで熱を通したりして虫体を完全に死滅させても、アレルゲンとしての性質は失われないことがあります。
そのため、加熱されたサバの味噌煮や冷凍のしめさば、魚のすり身が入った練り製品や缶詰を食べただけでも、アレルギー症状が引き起こされる可能性があります。

また、アレルギーの原因が魚そのものなのか、寄生虫であるアニサキスなのかは、問診や血液検査で区別できます。実は、「サバアレルギー」とされた方の中には、正しくはアニサキスアレルギーの方もいます。

確認すべき3つのサイン

ただの胃もたれや魚そのもののアレルギーと、体内でアニサキスアレルギーが起きているサインを見分けるため、以下の3つの初期サインをご確認ください。

1. 魚を食べた数分から2時間以内に「全身に強いかゆみや蕁麻疹が出る」

食べた魚の消化吸収に先立ち、アニサキスの原因物質が反応して全身の皮膚に赤い膨らみを作ります。

2. 激しいみぞおちの痛みとともに「息苦しさ、めまい、吐き気」を伴う

生きたアニサキスを摂取してしまった場合、胃壁に虫が刺さる痛みだけでなく、全身症状を伴います。
気管支が狭まり血圧が急低下している、アナフィラキシーショックの初期兆候かもしれません。

3.火の通った魚料理を食べても「同様の赤い腫れや喉の違和感」が起きる

魚のタンパク質に反応している場合もありますが、アニサキスの熱に強いタンパク質に反応している可能性があります。病院で何に対するアレルギーか特定しましょう。

食後の不調の原因を知るために

「まさか大好きだったお寿司や焼き魚が、自分の体に合わなくなるなんて」。
不意の事態に困惑し、自分の過去の食べ方を悔やみ続ける必要はまったくありません。

まずは「魚を食べてじんま疹が出たら、魚そのものではなくアニサキスを疑ってみる」という、簡単な一歩から始めてみましょう。もし少しでも怪しいサインがあるときは、我慢せずにアレルギー科や消化器内科を受診し、アニサキスに対するアレルギー検査(血液検査)を受けてください。
特に、過去にアニサキス症の経験がある場合は要注意です。食物アレルギーと同様に感作されているかもしれないと知っておいてください。


※息苦しさ、意識障害、強いめまいなどの症状がある場合は、ためらわずに救急車を要請してください。また、本記事は一般的な情報提供を目的としたものです

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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