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歯科医「そのままにしないで」→実は『口腔がん』のリスクを高めるかも…“ただの傷”と放置しがちな「危険な口の変化」とは?

  • 2026.9.19
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「口の中にできた傷や口内炎が、なかなか治らない……」そんな悩みを抱えたことはありませんか?「ただの口内炎だから、薬を塗って様子を見よう」と放置してしまいがちですが、実はその影に、口腔(こうくう)がんなどの深刻な病気が隠れていることがあります。

そもそも、なぜ口の中に治りにくい傷ができるのでしょうか。また、どのような状態であれば病院を受診すべきなのでしょうか。

今回は、歯科医師の鷹巣多紀さんに、口腔がんを引き起こす意外なリスクや、市販の口内炎薬を使うときの注意点、そして自宅で簡単にできるセルフチェックの方法について詳しくお聞きしました。あなたのお口の健康を守るためのヒントが詰まっています。

口腔がんを招く生活習慣とは?「歯が当たる傷」にも要注意

---口腔がんのリスクを高める生活習慣には、どのようなものがありますか?また、歯が当たることでできる傷も関係しているのでしょうか?

鷹巣 多紀さん:

「口腔がんの発症に関わる生活習慣のなかで、とくに影響がはっきりしているのは、喫煙と飲酒です。たばこの煙には発がん性物質が含まれ、口の粘膜もその影響を受けます。お酒の場合は、分解される途中にできる『アセトアルデヒド』という物質が、細胞の遺伝子を傷つけることなどが発症に関わると考えられています。さらに、喫煙と飲酒の両方の習慣があると、どちらか一方だけの場合よりもリスクが高くなる点にも注意が必要です。

少量のお酒で顔が赤くなる方は、アセトアルデヒドを分解しにくい体質かもしれません。この体質の方が飲酒を続けると、分解する働きが十分な方に比べ、同じ量でも口や喉のがんのリスクが高まります。『飲んで慣れれば大丈夫』と考えず、無理に飲まないようにしてくださいね。

一方、『歯が当たるところが、何度も傷になる』というお悩みも、そのままにしないでほしいものです。欠けた歯や合わない詰め物、入れ歯などで、食事や会話のたびに粘膜がこすれると、傷が治りきらない状態が続くことがあります。ただし、こうした刺激そのものががんを引き起こすかどうかは、喫煙や飲酒のように十分には確かめられていません。

大切なのは、『歯が当たっているから、この傷もそのせいだろう』と決めつけず、傷と歯の両方を診てもらうことです。歯や詰め物を調整したあとも、粘膜がきちんと治るかまで確認しましょう。傷が残るときは、別の病気が隠れていないか調べる必要があります。『調整してもらったのに、また相談していいのかな』と遠慮せず、再診してください。

日常では、禁煙と飲酒を控えることを基本に、口の健康を守るための丁寧な歯磨きや定期的な歯科受診も続けましょう。ただ、こうした習慣に気を配っていても、発症を完全に防げるわけではありません。口腔がんは中高年に多いものの、若い方や、たばこ・お酒の習慣がない方にも起こります。年齢や生活習慣だけで『自分には関係ない』と思わず、治らない傷があるときは、身近な歯科で相談してみてください。」

「市販薬で痛みが消えたから安心」は禁物?口内炎薬の正しい使い方

---口内炎ができたとき、市販の軟膏やパッチを使う人も多いと思います。薬を使う際に気をつけるべきことは何ですか?

鷹巣 多紀さん:

「口内炎がしみると、食事も歯磨きもつらいですよね。そんなとき、軟膏やパッチで少しでも楽にしたいと思うのは自然なことです。薬には炎症を抑えるものや、患部を覆って刺激をやわらげるものがあり、症状に合っていれば役立ちます。ただ、痛みが軽くなったことと、傷そのものが治ったことは、必ずしも同じではありません。

少し楽になったときも、『傷は小さくなっているかな』『赤みや白い部分は残っていないかな』と、見た目の変化を確かめてみてください。気をつけたいのは、薬を使っている安心感から、治らない原因を調べる機会が遅れてしまうことです。

口腔がんは、初めのうちは強く痛まないことがあり、傷や口内炎のように見える場合もあります。また、白い斑点のように見える『白板症』など、将来がんに変わる可能性のある粘膜の病気が隠れていることもあります。『もう少し薬を塗ってみよう』と様子見を重ねると、こうした病気の診断や、必要な経過観察が遅れるおそれがあるのです。

もしがんだった場合、進行すると切除する範囲が広がったり、複数の治療が必要になったりすることがあります。治療の範囲によっては、食べたり話したりする機能に影響が残ることもあるため、受診を先延ばしにしないことが大切です。早めに原因を確かめるのは、病気を見つけるためだけでなく、治療後の暮らしへの負担をできるだけ小さくするためでもあります。

また、市販薬ならどの口内炎にも使える、というわけではありません。ステロイドを含む口内炎薬は、主に、白っぽい丸い傷ができて周囲が赤くなる『アフタ性口内炎』に使う薬です。一方、カンジダというカビの仲間や、ウイルスなどが原因の場合は、ステロイドで悪化することがあります。白いものが口の中に広がる、水ぶくれがいくつもできる、発熱を伴うときは、自己判断で使い続けずに診てもましょう。

説明書に書かれた、中止・相談の目安も忘れずに確認してください。例えば、ステロイドを含む口内炎用軟膏のなかには、5日間使っても改善しない場合や、1〜2日で悪化した場合は使用しないよう記載されたものがあります。製品ごとの注意事項に従い、薬を替えて様子見を延ばさないことが大切です。『市販薬を使っても治らない』は、受診する十分な理由になります。傷に気づいた日と、使った薬の名前・期間を伝えて相談してみてください。」

鏡の前で1分!おうちでできるお口のセルフチェックと受診の目安

---お口のトラブルに早く気づくために、自分で行えるチェック方法や、病院に行くべき目安を教えてください。

鷹巣 多紀さん:

「明日の歯磨きのときに、歯だけでなく、舌や頬の内側まで鏡で見てみませんか。セルフチェックは、自分でがんかどうかを判断するためではなく、『いつもと違う状態が続いている』と気づくためのものです。明るい場所で、手を洗ってから始めましょう。入れ歯を使っている方は、外しておいてください。

まず、唇や頬を指でやさしくよけて、内側の粘膜と上下の歯ぐきを見ます。続いて舌を前に出し、左右に動かして両脇も確認しましょう。舌がんは舌の横側に多いため、表面を見ただけで終わらないことが大切です。舌先を上あごにつけるように持ち上げると、舌の裏側や、その下の粘膜も見やすくなります。

気にかけてほしいのは、同じ場所に残っている傷やただれ、周囲と違う赤い部分・白い部分、盛り上がりです。清潔な指でそっと触れ、周りと違って硬いところがないかも確かめてみてください。ただし、白い部分を爪で削ったり、傷を何度も強く押したりする必要はありません。気になるところは写真を撮り、気づいた日も残しておくと、受診時に変化を伝えやすくなります。

見るときは、痛みの強さだけでなく、『少しずつ治っているか』にも目を向けましょう。よくあるアフタ性口内炎は、通常1〜2週間ほどで治ります。同じ場所の傷が2週間たっても残っているなら、痛みが弱くても歯科を受診してください。これは『2週間を超えたらがん』という意味ではなく、治りにくい原因を一度確かめるための目安です。薬を使い始めた日ではなく、症状に気づいた日から数えるようにしましょう。

ただし、硬いしこりがある、傷や腫れが大きくなる、出血を繰り返す、しびれる、舌を動かしにくいといった変化があれば、2週間を待つ必要はありません。あごの下や首に、なかなか消えないしこりがある場合も、早めに相談してください。

受診先は、かかりつけの歯科医院や歯科口腔外科で構いません。傷やしこりの状態を診てもらい、必要に応じて専門の医療機関で、組織の一部を採って調べる検査などを受けます。鏡や写真だけでは、良性の傷とがんを区別できないこともあるため、自分で答えを出そうとしなくて大丈夫です。『いつもの口内炎と少し違う気がする』『なかなか治らなくて気になる』と、気になっていることをそのまま伝えてみてください。」

日々のセルフチェックと早めの相談が、お口の健康と未来を守る

ただの口内炎だと思って軽く考えがちな口の中の傷ですが、そこには私たちの健康に関わる大切なサインが隠されていることがあります。タバコや過度な飲酒といった生活習慣を見直すことはもちろん、丁寧な歯磨きや定期的な歯科受診を心がけることが、お口の健康を守る基本です。

そして明日からは、歯磨きの際に鏡を使って、舌の横側や頬の内側までそっと観察する「セルフチェック」を習慣にしてみましょう。もし「2週間経っても治らない傷」があるなら、それは一度歯科医師に診てもらう大切な目安です。市販薬を漫然と使い続けて様子見を長引かせず、かかりつけの歯科医院や歯科口腔外科へ相談に行くことが、将来の健康的な暮らしを守ることにもつながります。

お口の異変にいち早く気づき、治療後の負担をできるだけ小さくするためにも、まずは鏡の前でお口の中をのぞき込むことから始めてみませんか。


監修者:鷹巣 多紀

大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として子育てと仕事に奮闘しています。

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