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右下の“奥歯2本”を失った50代男性→「左側で噛めるから大丈夫」放置したところ…ある日、停電の夜で痛感した“思わぬ代償”

  • 2026.9.19
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。歯科医師の鷹巣多紀です。

備えていた非常食が、いざというとき自分の歯では噛めなかったら、どうでしょうか。

災害時は、食材を小さく切ったり、やわらかく煮たりできるとは限りません。「食料がある」と「自分が食べられる」は別の話です。

家族は食べられたのに、自分だけ手が止まった

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

50代男性のDさんは地震の報道を見て、賞味期限の長いクラッカーや乾パンを家族分そろえ、棚へしまいました。

Dさんは数年前、右下の奥歯を2本失っていました。歯を補う方法について説明を受けましたが、痛みはなく、左側で噛めるから大丈夫ため相談を先延ばしにしていたのです。

普段は肉を小さく切り、根菜をやわらかく煮ていました。外食では硬いパンを残し、繊維の多い物を選ばなくなっていましたが、本人は「食べ方の好みが変わっただけ」と受け止めていました。

ある夜、地震で停電し、断水も重なりました。家族がクラッカーを食べる横で、Dさんも口に入れましたが、硬い生地を左側ばかりで噛むうちに顎が疲れ、食べ切れません。乾パンにも手が伸びず、ゼリー飲料とそのまま飲めるスープで済ませました。

棚には食料があるのに、自分が食べられる物はわずかでした。電気が戻った後、Dさんは「賞味期限は見たのに、一度も試食していなかった」と振り返り、歯医者にも相談しました。

 奥歯がない影響は、残った歯の本数だけでは決まらない

食べ物を細かくする力は、残っている歯の本数だけでなく、どの位置で上下の歯が噛み合うかにも左右されます。奥歯を失っても普段の食事に困らない方がいる一方、硬い物を避けるうちに、食べられる物の幅が狭くなる方もいます。

反対側で噛めていると、自分では大きな不便を感じにくいものです。ただし、奥歯を失ったままにしてよいかは、失った原因や噛み合わせ、隣や向かいの歯、歯茎の状態まで調べて判断します。

Dさんは残っている奥歯と歯茎、噛み合わせに加え、噛む力も調べてもらいました。検査の結果は「奥歯の欠損に伴う咀嚼機能(噛んで食べる働き)の低下」でした。左側で補えていた噛みにくさが、硬い非常食を前にして顕著に表れたと説明を受けたのです。

非常食は「食べる予行演習」までが備え

農林水産省は、高齢者や食べる機能が弱くなった方の備蓄として、やわらかいレトルトごはんやおかゆ、食べ慣れた食品などを挙げています。歯の欠損や噛みにくさがある方にも、同じ視点が役立ちます。

確認したいのは次の4点です。

① 常温のままでも噛め、飲み込めるか
② 開封に道具や強い力が要らないか
③ 水、加熱、戻し時間がどれだけ必要か
④ 主食だけでなく、やわらかい主菜や汁物も組み合わせられるか

平常時に1食分を開け、停電を想定して食べてみましょう。硬ければ、やわらかいレトルト食品などへ一部を入れ替えてください。使った分を補充するローリングストックなら、噛みやすさや好みの変化も見直せます。

むせが増えた、飲み込みにくい、体重が減った場合は、噛む問題だけではないことがあります。食べ物の硬さを自己判断で変えるだけで済ませず、歯科や医療の担当者へ相談してください。

非常食は、今の自分が食べられるかで選ぶ

Dさんが非常食を食べにくかった主な理由は、右下奥歯の欠損による咀嚼機能の低下でした。相談のうえ、部分入れ歯で奥歯を補う治療を始め、非常食も家族と一緒に試食しました。

硬くて食べにくい物は家族用に分け、常温でも食べやすいやわらかい食品を追加しています。賞味期限と量を確認したら、次は1食分を実際に食べてみる。それが、今の自分に合う備蓄を見つける近道です。


執筆・監修:鷹巣 多紀

大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として子育てと仕事に奮闘しています。
歯科医師ママkiki|note: https://share.google/uUYsDiSMnkNKZCrOw X: https://x.com/kikimama0405 

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