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「貯金1,500万円あるから…」年金を“70歳で繰り下げ受給”することに→1年後、66歳妻を待ち受けていた“想定外の落とし穴”

  • 2026.8.6
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、家計・資産形成・相続など、お金に関するご相談をお受けしている、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

年金の受給開始を70歳まで遅らせると、原則として42%増額されます。しかし、待っている間に遺族年金を受け取る権利が生じると、当初の予定どおり増えない場合があります。

66歳で夫を亡くしたTさんは、その後も4年間、老齢年金を請求しませんでした。70歳で手続きをした際に知ったのは、想定額との年約40万円の差です。この年金計画が変わった理由を今回は見ていきましょう。

貯蓄1,500万円を頼りに、70歳受給を選んだ妻

今回の事例は、66歳のTさんです。

Tさんが65歳を迎えた時点で、老齢基礎年金と老齢厚生年金のうち、繰下げによる増額の対象となる金額は年120万円でした。月額に直すと10万円です。

夫は老齢厚生年金を受け取っており、夫婦の預貯金は約1,500万円ありました。Tさんの年金をすぐに受給しなくても、しばらくは家計を維持できると考えたのです。そこでTさんは、自分の年金を70歳まで繰り下げることにしました。

老齢年金は、受給開始を1カ月遅らせるごとに、原則0.7%が加算されます。65歳から70歳までの60カ月を待つと、増額率は42%です。年120万円を基準にすると、42%増額後の年金は年170万4,000円です。1カ月当たりでは14万2,000円になります。

Tさんは、70歳までは夫の年金と貯蓄で暮らし、それ以降は増えた自分の年金を生活費に充てるつもりでした。
ところが、Tさんが66歳になり、繰下げによる増額率が8.4%となった時点で、夫が亡くなります。

そのため、夫が亡くなった時点で、Tさんには遺族厚生年金を受け取る権利が生じました。夫の死後、Tさんは葬儀や相続、銀行などへの連絡に追われます。遺族年金の手続きまで手が回らず、請求を後回しにしていました。

Tさんには、「遺族年金を請求していない間は、自分の老齢年金も増え続ける」という思い込みがありました。

そのため、自分の老齢年金についても手続きをせず、当初の計画どおり70歳まで待ったのです。夫が亡くなってから約4年後、Tさんは70歳を迎えました。月14万2,000円を受け取れると考え、年金事務所で請求手続きを進めます。

ところが、そこで案内された増額率は42%ではなく、8.4%でした。Tさんの場合、夫が亡くなるまでの繰下げ月数は12カ月です。1カ月につき0.7%なので、増額率は次のようになります。

  • 0.7%×12カ月=8.4%

年120万円に8.4%を上乗せすると、老齢年金は年130万800円です。月額では10万8,400円になります。Tさんが見込んでいた月14万2,000円との差は、月3万3,600円です。年間では40万3,200円の開きが生じます。

つまり、Tさんが70歳以降に受け取る自身の老齢年金は、当初の想定より年約40万円少なくなったのです。

※今回の事例は、夫の厚生年金加入歴に加えて、Tさんの収入や、夫婦が生計を同じくしていたことなど、遺族厚生年金を受け取る条件を満たしています。
※なお、この金額は、Tさん自身の老齢年金が42%増えた場合と、8.4%で固定された場合を比べた差です。遺族厚生年金を含む実際の受給総額が、そのまま年約40万円少なくなるという意味ではありません。

請求を後回しにしても、増額期間は延びない

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Tさんが見落としていたのは、増額率を決める基準です。66歳に達した日より後の繰下げ待機中に、遺族年金や障害年金を受け取る権利が生じると、その時点で老齢年金の増額率が固定されます。

基準になるのは、遺族年金を請求した日ではありません。受け取る権利が生じた時点です。そのため、遺族年金の手続きを遅らせても、老齢年金の増額期間が延びるわけではありません。

一方で、Tさんが66歳から70歳まで受け取らなかった老齢年金が、すべて失われるわけでもありません。

今回の事例は、8.4%増額された老齢年金を、遺族年金の受給権が生じた月の翌月分からさかのぼって受け取れることになります。請求まで約4年のため、原則5年の時効にかかる期間はありません。

年齢だけで決めない 家族の年金も確認を

繰下げ受給を考える際は、「何歳まで待てば何%増えるか」だけで決めるのは避けたいところです。自分の年金見込額に加えて、配偶者の厚生年金加入歴や、将来、遺族年金を受け取る可能性も確認する必要があります。

配偶者の死亡などで家族の状況が変わったときは、当初の計画をそのまま続けず、自分の老齢年金にどのような影響があるのか、年金事務所などで早めに確認しましょう。


※事例はプライバシー保護のため、内容を一部変更しています。実際の受給額は本人と配偶者の年金記録などによって異なります。

※制度の説明は2026年8月時点です。2025年の年金制度改正により、2028年3月31日時点で遺族厚生年金の受給権があり、65歳に達していない方については、2028年4月から老齢年金の繰下げ受給の扱いが変わることとされています。今回のTさんは対象外です。

執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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