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地震は人の手で起こせる?人工地震の正体とは……専門家に聞きました

  • 2026.7.24

大地震が起きるたびに、「誰かが人工的に引き起こした地震だったのでは?」という投稿がSNSに広がります。地震の研究者でつくる日本地震学会でも、今年に入り、学会のホームページ上で地震に関する一般向けのFAQ(よくある質問と回答)のなかに人工地震の解説を付け加えました。そもそも人工的に大地震を起こすことは可能なのでしょうか? 日本地震学会の広報委員を務める小泉尚嗣・滋賀県立大学名誉教授に聞きました。

地震学会がホームページ上で人工地震を解説、注意喚起

――学会として人工地震の解説を付け加えたのはなぜでしょうか?

「過去にも日本地震学会あてに人工地震に関する質問が来たこともありますし、大きな地震が発生して被害が起きるとインターネット上でも繰り返し話題になるので一度、きちんと説明した方がいいということになり、学会の広報委員会で議論した上でFAQ(よくある質問と回答)の「地震被害」の項目の中にいれることになりました」

――誰にも気づかれずに大被害を起こすような人工地震を起こすことはできるのでしょうか?

「地震の規模を示すマグニチュード(M)という言葉を聞いたことがあると思います。例えば、2024年の能登半島地震はM7.6、東日本大震災を起こした地震はM9.0にもなりました。日本で建物や人的な被害が起きるような地震のほとんどはM7クラスかそれ以上の地震です。このような地震の震源は、一般的に地下10kmより深いところになりますので、自然地震と見分けがつかないような人工地震を起こすとすると、まずは深さ10kmくらいの孔(あな)を掘る必要があります」

――なぜ地震が起きる深さは決まっているのですか?

「多くの地震は、地下で徐々に岩石に力が加わり、限界になった時に一気に破壊が広がる現象です。このように物質に力が加わった時にほとんど変形せず、限界になると一気に破壊される性質を脆(ぜい)性(せい)といいます」

――ガラスがバリンと割れるイメージですね。

「岩石は周囲の圧力が高いほど脆性は大きくなります。他方、岩石は温度が高くなるほど脆性が小さくなり変形しやすくなります」

――こちらは粘土のイメージでしょうか。

「一般に地下深くになればなるほど、地下の圧力は高まりますが温度も高くなります。地下浅部では圧力増加の影響がより強く作用するので、深くなるほど岩石の脆性は大きくなりますが、地下深部になると温度上昇の効果が上回って岩石の脆性は小さくなります。結果として、大規模な脆性破壊を起こせる領域(大地震を起こせる場所)の深さには上限も下限もあることになります.

――地下深くでは、バリッと割れるというより、ぐにゃっと曲がるイメージですか?

「そうとらえていただいて構いません。ある程度圧力が大きく、あまり温度が高くない場所でしか地震は起きません。例えば、日本列島の内陸部だと、深さ十数㎞の温度が概ね300~450℃になります。ここまで温度が高くなると、大地震につながるような岩石の急激な破壊はほぼ起きないと考えられています。このため、いわゆる直下型の大地震というのは地下数kmから十数kmのところで集中的に起きています」

「日本近海のプレートが沈み込んでいる海溝と呼ばれる部分では、これよりさらに深い、地下数十~100㎞でM7クラス以上の大地震が起きることがあります。このような場所は、日本列島の内陸直下の同じ深さの所に比べて温度が低いので脆性が大きく大地震が起こるのだと考えられています」

――場所によって違うのですね。いずれにしても大規模な人工地震を起こすには相当な工事が必要そうですね。

「これまで人類が掘った最も深い孔として知られているものは、旧ソ連がコラ半島という場所で掘った超深度掘削孔で深さ約12.3kmです。コラ半島は、ロシア北西部の北極圏にある半島で、旧ソ連政府の科学プロジェクトとして約20年にわたり掘削されましたが、地中が高温であったため技術的に掘削を継続することが困難となり、掘削計画は1992年に停止されました」

「ドイツでは1990年代に深さ約9.1kmまでの掘削が行われました。近年では、中国のタリム油田で「深地塔科1井(Shenditake-1)」という掘削孔が2024年に掘削開始後279日で深さ10㎞に達したとの報告があります」

「旧ソ連と中国のケースでの費用は不明ですが、ドイツの超深度掘削孔(KTB)でかかった費用は約498~528百万ドイツマルク、当時の為替レート換算で数百億円規模(約350~480億円)でした。深さ10㎞以上の孔を掘るためには多くの時間と経費がかかるのです」

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――莫大な費用ですね。

「しかも深さ10㎞の孔を掘ろうとすると、高さ数十mのやぐらが必要です。そのようなやぐらが特定の場所に存在し続けることになるので、これを隠し続けるのは難しいと思います」

――孔を掘っただけでは地震は起こせないですよね。

「地上や地下で爆発を起こすと地面が揺れ、人工地震として各地で観測されます。火薬を用いて生じた最大クラスの人工地震は、1947年にイギリス海軍が6700tの火薬を用いておこなったもので、この時の規模はM4.6と推定されています。核実験によって生じた最大クラスの人工地震は、1971年に米国アラスカ州でTNT火薬換算で500万tに近い核弾頭を用いたもので、生じた地震のMは6.9とされておりM7クラスの地震に相当します」

――ものすごい規模の核実験をしたのですね。

「そういう規模の実験をすれば、必ずわかってしまいます。爆発による人工地震は、その波形を見ると、自然に起きた地震と違うことがすぐにわかるからです。地震は最初にカタカタと縦揺れが起き、その後、大きな横揺れが起きますよね。最初の揺れを起こす波をP波、続いてくる大きな横揺れを起こす波をS波と言いますが、爆発による人工地震では、自然地震に比べてP波がより強く観測されます。北朝鮮の核実験で起きた人工地震が日本の地震観測網でとらえられることがありますが、波形が明らかに自然に起きた地震と違います」(参考:北朝鮮付近を震源とする地震波の観測について)

――お話を伺うと、自然地震と区別がつかない地震を人工的に起こすのはすごく難しそうですね。

「そうなんです。深さ10㎞くらいの孔を掘り、そこで大規模な核爆発を起こす必要があると思えます。地下深くで、このような核爆発を起こす技術は確立されていませんし、多量の核爆薬を秘密裏に準備するのも極めて困難ですよね」

――小さな人工地震を起こすことで、本物の大きな地震を引き起こすことはできるのですか。

「可能性はありますが、適切に制御できる理論や技術がありません。遠くで地震が起きたことをきっかけに、ある地域の地震活動が活発化することがありますし、大きな地震が起きたけれどその近くで全く地震が起きないこともあります。なぜそうなるのか、理由は十分にはわかっていません」

――陰謀論の一種として、リアルな地震が起きるたびに人工地震が話題になる理由を、科学者はどう見ていますか。

「一つ一つ考えていけば、自然に起きる地震と同じような大地震を誰にも知られずに人間が引き起こすことは極めて困難だとわかっていただけると思います。こうした地震の本質が、社会に十分には理解されていないことを残念に思います」

――私たちの素朴な疑問に真剣に向き合い、懇切丁寧にお答えいただき、本当にありがとうございました!

<防災ニッポン編集部 館林牧子>

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