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「あなたのミスでしょ、1割引いて」返金では収まらなかった客。だが、店長の正論に諦めた瞬間

  • 2026.7.22

返金では終わらなかった会計

買い物かごを提げてレジに並んだとき、前のほうから同じ言葉が何度も聞こえてきました。

「あなたのミスでしょ、1割引いて」

レジに立っていたのは、まだ勤めて日が浅そうな店員でした。

カウンターの向こうで、レシートを手にした女性が身を乗り出しています。

「2回打ったんだから、負けなさいよ」

横で聞いていて、ようやく事情が分かりました。

同じ商品を二重に読み取ってしまったのだそうです。

店員はそれを認めて、何度も頭を下げていました。

「申し訳ございません。二重に打ってしまった分は、この場で全額お返しいたします」

返金の硬貨は、もうトレーに載っています。

女性は、それに手を伸ばそうとしません。

「迷惑をかけたんだから、それくらいするものでしょう」

隣のレジに応援が入って、列の何人かがそちらへ移りました。

私は動けずに、そのまま同じ場所で待っていました。

店員は一度だけ息を吸って、まっすぐ前を向きました。

「お返しするのは、打ち間違えた分です。それ以上のお値引きは、いたしかねます」

「責任者を呼びなさいよ」

二人の答えがそろった瞬間

呼ばれて出てきた店長は、早足でしたが慌ててはいませんでした。

女性の話を、途中で切らずに最後まで聞いています。

「この子が間違えたの。1割は割引してよ!」

店長はレシートを両手で受け取ると、順に目を通してから顔を上げました。

「お返しするのは、打ち間違えた分です。それ以上のお値引きは、いたしかねます。ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」

店員が言ったばかりの言葉と、まったく同じでした。

言い方も、頭を下げる角度も変わりません。

女性の顔から、勢いが抜けていきました。何か言いかけて、口を閉じます。

「……もういいわ」

言葉はそれだけでした。トレーの硬貨をつかんで、袋を抱え上げます。

財布にしまう間も惜しいという足取りで、出口のほうへ歩いていきました。

店長は、その背中に向かって最後にもう一度頭を下げました。追いかけも、言い足しもしません。

私の一つ前にいた年配の男性が、レジ台に商品を並べながらつぶやきました。

「ちゃんと返してもらったのにね」

周りにいた何人かが、小さくうなずきました。声を上げた人は、ひとりもいません。

自分の番が来ると、店員は落ち着いた声で商品を通してくれました。指先が少しだけ震えていましたが、動きは止まりませんでした。

袋を提げて外へ出ると、店内では店長がそのレジの横に立って、袋詰めを手伝っているところでした。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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