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新生「フェンディ」は“引き算”で魅せる。身体を解放する新時代のオートクチュール

  • 2026.7.21
(C)FENDI

今年2月にベールを脱いだ、マリア・グラツィア・キウリによる新生「フェンディ」。デビューコレクションでは、インスタ映えを狙った過剰な演出ではなく、現実に根差したワードローブと誠実な仕立てでゲストを魅了した。その姿勢は、今回発表した初のオートクチュールでも一貫している。100年にわたり受け継がれてきたメゾンのクラフツマンシップを、現代の身体性と結び付けながらこの上なく軽やかなラグジュアリーを描き出した。

Luca Sorrentino / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

会場はローマ国立近現代美術館。ショーに先立ち、ゲストは1985年にカール・ラガーフェルドが同館で開催した展覧会を再構成した「After - 仕事を通じた歩み / カール・ラガーフェルド 1985」を巡る。約180点のスケッチやパターン、トワルを通してメゾンが築いてきた創造の軌跡を体感した後、ショーへと導かれる構成だ。アメデオ・モディリアーニやレナート・グットゥーゾをはじめとする近現代美術の名作が並ぶ展示室が、そのままランウェイへと姿を変えた。

Launchmetrics.com/spotlight

コレクションの着想源となったのは、1977年にカール・ラガーフェルドが「フェンディ」初のプレタポルテ発表に合わせて制作したショートフィルム『Histoire d’Eau』。ローマを舞台に水辺を軽やかに駆け抜ける女性の姿は、今季のキーワードである“欲望”のイメージへとつながる。それを現代の視点で読み替えるキウリは、身体が自由であることから生まれる自然なセンシュアリティを追求した。象徴となったのが、オープニングを飾った黒白ストライプのシフォンカフタン。コルセットから女性を解放するためにデザイナー、エミーリエ・フレーゲが考案したリフォームドレスに着想を得て、100年以上前に生まれた“自由な衣服”の思想を現代へと呼び起こした。

Launchmetrics.com/spotlight
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続くルックでも、キウリの「フェンディ」は身体を締め付けることはない。ロング&リーンのシルエットを軸に、ドレープだけで身体を包み込むロングドレスや、流れるようなベルベットドレスがしなやかな身体の動きを引き立てる。ジャケットは帯を締めない着流しの着物のように羽織られ、身体の動きに寄り添うよう設計されている。そのどれもが、建築的な造形美よりも、身体の動きが生み出す自然なラインを優先している。

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ダブルフェイスのカシミヤコートにはアーカイブの幾何学モチーフを繊細なインターシャで描き、オーガンザにはレースとレザーで葉や羽根、花のアラベスク模様を立体刺しゅうで幻想的に表現。モノトーンを基調とした控えめなカラーパレットに、コルセットから女性を解放した1920年代を想起させるアールデコのディテールやフラッパードレスを取り入れ、スキントーンのゴールドがほのかな官能性を漂わせた。

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これらクチュールならではの卓越した技術を惜しみなく注ぎ込んだ華やかなルック以外にも、ディテールにクラフツマンシップが存分に発揮されている。シフォンドレスは軽さを最大限に引き出すためバイアスカットで仕立てられ、通常の約3分の1という極細の縫い代をすべて手縫いで仕上げることで、まるで空中を漂うような優雅な動きを実現した。

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ドラマティックなボリュームや圧倒的な技巧で競い合うようなオートクチュールが展開された今季。その中で、引き算の美学を貫いたキウリによる「フェンディ」は、ひときわ洗練された存在感を放っていた。余分な要素を徹底的にそぎ落とし、壮大なスペクタクルではなく、身体と職人技が織りなすクチュール本来の美しさをたたえて。より自由に、より流れるように、より現代的に――メゾンが育んできた美学は、キウリの手によって新たな時代へと受け継がれていく。

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