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【笑い飯・哲夫さんにインタビュー】「頭を木魚に」に込めた思いとは? “仏教的メンタル術”で理不尽な毎日を軽やかに

  • 2026.7.17

仕事に家事、育児ー。現代の働く女性は、いくつもの役割を抱えながら日々奮闘しています。でも、どれだけ頑張っても理不尽な出来事に巻き込まれたり、人間関係にモヤモヤしたりすることは誰にでもあるもの。そんな日々を少しラクにしてくれるヒントが、実は仏教の教えの中にあるのかもしれません。

出典:シティリビングWeb

今回、小説「頭を木魚に」を発売した笑い飯・哲夫さん(以下、哲夫さん)にインタビュー。作品に込めた思いや、働く女性に向けた“仏教的メンタル術”について伺いました。

(取材・文/サンケイリビング新聞社 荒井文子)

「誰もが天寿を全うしたくなる物語」を書きたかった

編集部 まず、この小説を書くことになったきっかけや、作品に込めた思いを教えてください。

哲夫さん 出版社さんから「仏教の教えをベースに、死という最大の苦しみを乗り越えられるような小説を書いてほしい」という依頼をいただいたのがきっかけです。ただ、僕は自殺ゼロを目指していますから、死の苦しみを克服しすぎて「死ぬことなんて怖くないわ」と自殺者が増えてしまうような作品にはしたくなかったんです。そうではなくて、苦しみを乗り越えながら、「やっぱり最後まで生きたいな」「天寿を全うしたいな」と思える物語にしたくてこの小説を書きました。

編集部 作中では主人公が理不尽な出来事に巻き込まれ続けますよね。読んでいて「なんでこの人ばかり…」と胸が苦しくなる場面もありました。

哲夫さん そうなんです。でも、みんな似たような経験をしていると思うんですよ。仕事でも家庭でも、「なんで自分ばっかりこんな目に遭うんやろ」って思うことあるじゃないですか。この小説は、そういう人が「自分だけじゃないんやな」と思える物語にもしたかったんです。

編集部 主人公のエピソードには、哲夫さんご自身の体験も含まれているのでしょうか?

哲夫さん ありますよ。タクシー運転手の話なんかはまさにそうです。アクセルを踏んだり離したりを繰り返す運転が昔から苦手で。普段は我慢しているんですけど、妻が陣痛で病院へ向かうときだけは「すみません、一定で踏んでもらえますか」と言わせてもらいました。そういう日常のモヤモヤも、そのまま物語に入れています。

出典:シティリビングWeb

笑い飯・哲夫さんの小説「頭を木魚に」

モヤモヤしている暇なんかない―哲夫さん流「仏教的メンタル術」

編集部 日常の理不尽さに悩んでいる人は多いと思います。哲夫さんご自身はどうやって気持ちを整理していますか?

哲夫さん 仏教の根幹にある「諸行無常」ですね。すべてのものは移ろいゆく。だから、この理不尽も今がピークかもしれない。今はしんどいけど、1年後も同じように苦しいとは限らない。そう自分に言い聞かせています。

編集部 そう考えるだけでも少し楽になれそうです。

哲夫さん もちろん、僕の場合は「M-1チャンピオンやしな」って思ってしまうこともあります(笑)。でも根っこにあるのは、「今の苦しみも永遠には続かない」という考え方ですね。

編集部 人間関係に悩む人も少なくありませんが、おすすめのメンタル術はありますか?

哲夫さん それなら、お釈迦様のエピソードがヒントになります。昔、お釈迦様が人から1時間ほどずっと罵詈雑言を浴びせられたことがあったんです。相手が喋り疲れて黙ったとき、お釈迦様はこう言いました。「もしご近所さんにお土産を持って行って、相手が受け取らなかったら、そのお土産はどうしますか?」と。相手が「家に持って帰ります」と答えると、お釈迦様は「それと同じです。私はあなたの言葉を受け取っていませんから、そのままお持ち帰りください」と言われたんです。

編集部 良くない言葉は受け取らなければいい、ということですね。

哲夫さん そう。SNSでもそうですけど、嫌な言葉を全部受け取る必要はないんです。「私は受け取りません」でいい。そう思えるだけで、だいぶ生きやすくなると思います。また、仏教には「自他平等」という考え方があります。自分と他人の間にある塀をなくしてしまう考え方ですね。人の喜びを自分の喜びとして感じる。そうすると世界中の誰かがどこかで喜んでいる限り、自分も幸せでいられるんです。

編集部 具体的には?

哲夫さん 例えばファミレスで目の前の人がおいしそうにステーキを食べている。「よっしゃ、今ステーキ食べられてるわ」と思う。そうしたら自分はドリンクバーだけでも幸せですから。極端な話ですけど、人との境界線をなくせば、苦しみはかなり減ります。

編集部 仕事で落ち込んでいるときに、同僚の成功を喜べるようになったら気持ちも変わりそうです。

哲夫さん その考え方になると、怖いものがなくなります。僕なんて、舞台の上でスベるのが本当に怖くなくなりましたから。自分一人でスベッてるんじゃなくて、劇場にいる全員で一緒にスベッているんだと思えるので(笑)。塀をなくせば、人の悩みにも寄り添えるし、自分のしんどさも抱え込みにくくなりますよ。

「お父ちゃん、まだ持ってる?」家族が教えてくれる幸せの正体

編集部 本作では、理不尽な社会が描かれる一方で、家族の存在の温かさも描かれていますね。

哲夫さん 僕が作った煮浸しを妻が「おいしい」と言ってくれるとか、子どもが「お父さんのお米おいしい」と言ってくれるとか。そういう何気ないことですね。「ああ、いい家族やな」と思います。

編集部 特に印象に残っている家族との時間はありますか?

哲夫さん 子どもが自転車に乗れるようになる瞬間ですね。補助輪を外すとき、後ろを持ってあげるじゃないですか。「お父ちゃん、まだ持ってる?」って聞くから、「持ってるよ」と言うんですけど、実は手を離してる(笑)。すると、子どもだけがどんどん前へ進んでいく。僕にはあの道が滑走路に見えるんですよ。子どもが飛び立っていくための滑走路。あれほど切なくて愛おしい成長の瞬間はないですね。

編集部 小説の中では、息子が父親のルーツを探る場面も印象的でした。

哲夫さん あれは自分の経験と重なる部分があります。昔、家を建て替えるときに押し入れを整理していたら、ひいじいちゃんが書いた写経が出てきたんです。家系図を調べたら、若くして亡くなった子どもが何人もいた。きっと供養のために、お経を書いていたんだろうなと思いました。そのとき、「自分の仏教好きも、どこかこの人につながっているのかな」と感じましたね。

編集部 哲夫さんの仏教好きのルーツがそんなところにあったとは! お笑いのルーツに関してはいかがですか?

哲夫さん それはまだ不明です(笑)。両親は静かで真面目な人ですから。

「今がピークかもしれない」―働く女性たちへのメッセージ

編集部 仕事や家事、育児など、たくさんの役割を担いながら頑張っている女性読者の皆さんへメッセージをお願いします。また、「頭を木魚に」を通して届けたい思いも聞かせてください。

哲夫さん まず、日本の未来、世界の未来のためにありがとうございます。本当に尊敬しています。それと、もし今しんどいことがあるなら、「今がピークかもしれない」と思ってほしいですね。諸行無常ですから。ずっと同じ苦しみが続くわけじゃない。だから今日一日をやり切る。その積み重ねで十分やと思います。「頭を木魚に」の主人公も理不尽なことにたくさん巻き込まれるんですけど、それでも前に進んでいくんです。読者の皆さんにも、「自分だけじゃないんやな」と思いながら読んでもらえたらうれしいですね。そして、読後はスカッとしながらモヤモヤしてほしいんです。

編集部 スカッとしながらモヤモヤ、ですか?

哲夫さん そう。野球でいうと、めちゃくちゃ飛んでるのに場外ファウルみたいな。人生もそんな感じやと思うんですよ。すっきり割り切れないこともあるけど、それでもちょっと笑えて、明日も生きてみようかなと思える。そんな感覚を楽しんでもらえたらうれしいですね。

出典:シティリビングWeb

理不尽な出来事に振り回されながらも前を向いて生きる主人公の姿は、仕事や家庭で奮闘する私たち自身とどこか重なります。「頭を木魚に」は、哲夫さんらしいユーモアと仏教の知恵を通して、「今の苦しみは永遠には続かない」と教えてくれる一冊。モヤモヤを抱えている人ほど、“頭を木魚に”してみたくなるかもしれません。

【「頭を木魚に」書籍概要】

<著者> 笑い飯 哲夫

<発売日> 2026年5月13日

<定価> 1,760円

<判型・ページ数> 四六判・256ページ ISBN:978-4-07-461310-6

【Amazon】https://www.amazon.co.jp/dp/4074613107

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