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Aマッソ加納 ホリケンに「普通に話したほうがいい」と怒られた。「芸人は売れると笑わなくなる説」など日常の関心事を語る【インタビュー】

  • 2026.7.11

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お笑い芸人としても、エッセイや小説の書き手としても活躍の場を広げるAマッソの加納愛子。一度触れたらクセになる独自の表現はどんなところから生まれるのだろうか。6月24日発売の最新エッセイ『パルト』(筑摩書房)の刊行を記念したインタビューでは、収録された文章を通じて、著者の関心事や考え方について伺った。最新エッセイと同時にチェックしてもらえたら、本作の楽しみ方が広がるかもしれない。

「THE W」に対する答えを出していないのがセコいなと

——本作には、連載「何言うてんねん」(webちくま)に掲載されたエッセイが収録されています。書き下ろしの「インガスンガスン」には加納さんが影響を受けたギャグについて書かれていますが、このお話を書こうと思った理由とは?

加納愛子さん(以下、加納):年末に放送されてた「THE W」って女芸人の大会なんですけど、その存在意義を自分なりにどう思っているのかに答えを出していないのがセコいなと、なんとなく思っていて。自分の中でずっと向き合ってることだし、今後も考えることがあるだろうという気持ちを伝えたいと思いました。この本が出るのが6月やし、直後に出して乗っかったわけではなく。

——女芸人の存在意義についてはこれまでも語られていますから、それについて向き合った今現在の気持ちがここに書かれているということでしょうか。

加納:一片ですけどね。

その人を知る上で、人の家族の話を聞くのが好き

——最近打ち切り報道が出た「THE W」について、加納さんの考え方がわかる貴重なエッセイだと思います。本作では家族の話もたっぷり語られていますが、ご自身の話はもちろん、友だちの家族の話も面白くて。「人の家族の話を聞くのが好き」と感じるのはどうしてですか?

加納:人を知れるっていうのかな。たとえば、タイトルにもなってる「パルト」に出てくる“いもちゃん”って、その場に5人とか6人おったら絶対喋れないタイプなんですけど、1対1で「最近お母さんどう?」って聞くと、明らかに雰囲気が変わるし、お母さんの面白い話をしてくれたりするんですよ。家族に向ける感情って逃れられないものだし、それがたとえ憎しみや悲しみだったとしても、体重を乗せざるを得ないというか。その人を知る上ですごく私は好きですね、人の家族の話。

——たしかに、家族には何かしらの感情を持っているし、素直に話してしまうような気がします。

加納:喋りたくない人もいっぱいおるやろうから、強制的に家族の話せえよ、みたいなことにならないように気をつけないとダメですけどね。自分からつつくというより、相手から出てくるのを待つ。それで出てきたということは「伝えてもいい」と選択してもらったものだろうから、もうちょっと理解を深めたいという気持ちになりますね。

お笑いを優先するとヴィランになりがち

——「ジャースティス!」では、ご自分のことを「ヒーローというガラではない」と語っていました。それもあってヴィランなのだと。普段もそう感じることが多いですか?

加納:最近はそうでもないんですけど、これまでの十数年は笑いを最優先するような行動が求められてたし、自分もそうあろうとしていたので。ずっとお笑いをしていると、場面場面で露悪的になるというか。それゆえに、ここ数年は特に、日々の細やかな感情みたいなのを無視していたりとか、ひとつひとつに誠実に対応できてなかったなっていう自責があります。意識してたわけじゃないですけど、お笑いって、精査せずに笑いを優先すると、そうなりがちなジャンルだという気はしますね。

芸人は後輩にアドバイスなんてしないほうが得策?

——「今日久しぶりに一〇キロ走ってみいひん?」では、自分と遠ざかってしまったジョギングとの関係を“倦怠期”にたとえていました。「Aマッソ加納のキウイチャンネル」(YouTube)でも作家さんに恋人っぽい振る舞いをする回がありますが、恋愛っぽい切り口が面白いですね。これはどんな想いから?

加納:恋愛の話を書くことがあまりないので、こういうところで恋愛っぽくして遊んでいるかもしれないですね。年齢も年齢なんで、別に恋愛の話を書くこともないんですけど(笑)。ジョギングは後輩と走ることが多いんですけど、こんなふうに後輩と友だちみたいに遊んでるのって、芸人ならではかもしれないですね。今日誰と遊ぼう…って思えるのって、かなり稀有な職業だなって思うんで。事務所に所属しているメリットだなと。

——後輩に対して友だちみたいな感覚があるんですね。

加納:芸人仲間とはいえ、一緒に何かを作っているわけではなく遊ぶだけの後輩もいっぱいいるので、仕事を円滑に進めるために仲良くするのとは違うし。変な感じですね。

——後輩が増えてきていると思いますが、悩み相談を受けるようなこともありますか?

加納:いや、ないですねぇ。ないな〜って思ってますよ、私も。聞いてきたらええのに。でも、私からは言えないですね。何年か下の女性芸人のコンビが、ちょっとコンビ関係で悩んでるみたいな時に「もうちょっとネタ書いたほうがいいんちゃう」とか「もうちょっと頑張ったほうがいいんちゃう」とか喉元まで出たこともあったけど、言えなかったですね。日頃遊んだりはできるけど、説教とかアドバイスってガラじゃないっていうか。苦手ですね。

——偉ぶってる感じになりますか。

加納:そうですし、別に頑張ってるやつが売れるわけじゃないし、この業界。チャンス掴めばポンッて売れることもある。私はこういう自分のやり方でやってきたっていうだけで、人それぞれいろんな売れ方があるから。「TikTok撮ってるだけやな、こいつ」とか思ってても、売れていくやつは売れたりする。そうすると、偉そうに言ってたのに立場がひっくり返るじゃないですか。恥ずかしいでしょ。だからアドバイスとかはあんまり言わない。この業界では、そのほうが得策。

——ご自分が先輩からアドバイスを受けることもあまりないですか?

加納:可愛い後輩として扱われるような先輩付き合いがそこまで多いほうじゃなかったんで。昔、ホリケンさん(ネプチューンの堀内健さん)とご飯に行ったとき、ボケたりしていたら、「普通に話せるようになったほうがいいよ」って怒られたことはありますけどね(笑)。

——ホリケンさん、いい方ですね(笑)。どうしてボケようと?

加納:後輩ってそういうもんやと思ってたというか。ふざけて喋ってたら怒られました(笑)。もう10年くらい前のことですけど。

大人になると笑わなくなる? お笑いと子ども心の関係

——「大人な精神」は、ラジオのお便りで増えた「大人になること」の相談に対して、どうして「めっちゃ子ども」な自分に聞いてくるの? という内容でした。芸人さんは子ども心を忘れない人が多いですか。

加納:好きなことしてるやつって、あんま「大人になりたい」って言ってないような気がするんですけどね。どうなんやろう。でも自分も含めて、「やっぱ子どもやねん」って思うことはめっちゃありますね。勝手なイメージですけど、おじさんってあんま笑わなくないですか? あと、売れた芸人もあんまり笑わなくなる。「前ご飯行ったときはもっと笑ってくれてたよな」みたいな。

——芸人は売れると笑わなくなる説(笑)。

加納:めっちゃ主観ですけど(笑)。逆もありますけどね。MCクラスになると笑ってくれるようになるんですよ。昔はそっけなかったけど、MC側にいってからすごく優しく笑ってくれるようになったなって。やっぱみんな、自覚してないところで役割があるんでしょうね。

——立場をわきまえているというか。

加納:そうですね。笑うことって結構、現実をあらわしてるんやなって、今喋りながら思いましたね。養成所のときだったら、ライバルのネタで笑いたくないとか。後輩に笑かされるのは悔しいけど、全然ジャンルの違うギャガーやったら笑えるとか。大先輩だったら素直にめっちゃ笑うけど、2〜3年上の先輩だったら悔しいとか、あると思うし。芸人って「笑う」っていう行為にかなりの情報量が詰まってるなって思うんですよね。

——面白いですね。大人はあんまり笑わないですか?

加納:あんまり笑ってへん感じがします。芸人ってバカみたいにゲラゲラ笑うじゃないですか。めっちゃ子どもやなって感じ。笑うっていうことに執着してる時点で大人じゃない感じもしますね。だけど、劇作家の宮沢章夫さん(本作収録のエッセイ「大きなテーブル」に登場)はめっちゃ笑うんですよ。

——どんな場面で笑う方でしたか?

加納:自分で言ってることにも笑うし、こっちが言ったことにも笑うし。大人の男の人で、一緒に喋っててこんなに笑ってくれる人いないなって思ってた記憶があるんですよ。それを子ども心というなら、宮沢さんは無邪気な子ども心を持った人だったし、笑うっていうことに重きを置いてた人なんだなという感じはします。

3〜4年前の気持ちは爽やかなものじゃなかった

——「何言うてんねん」99回目の「第二章」には、相方のむらきゃみさんに対する想いなどが綴られています。今はむらきゃみさんが産休を取られていますが、ここまで長くお仕事で離れることはなかなかないのでは?

加納:この前も会いましたけどね。ただ、2年くらい前から、子どものことを視野に入れるっていう話はなんとなくしていて、村上(=むらきゃみ)も去年は仕事をセーブしていたし、私も個人の仕事が多かったし。いきなりカットアウトでひとりになったっていう感じは全然ないですね。

——99回目でどうして相方について書こうと思ったんですか?

加納:編集者さんから村上をテーマにしようと仰っていただいたので、3〜4年前の「我々はこの先どうなるんだろう」って思ってたときの気持ちを書きました。十数年も劇場でがむしゃらにネタをやってきて、仕事もちょっと増えてきたけど、そんなに突き抜けているわけじゃない現状で、でも賞レースとかには出られない経歴になってきて。私もネタ以外にやりたい仕事がいっぱい増える中で、2人はどうなっていくんだろうって、1〜2年くらい模索してた時期があって。村上が母親になるってことでまたステージが変わったんですけど。ちょっと迷いみたいなものが抜けたタイミングと、この連載が終わるタイミングが重なって、今だったら書けるかなと。だから、書かせてもらえたのはありがたかったですね。

——いろんな変化があって、「第二章」でまた始まるんですね。

加納:とりあえず、ひとりでまた頑張らないと。村上の復帰はいつからって決めてなくて、彼女のいいようにというか。子育てってどうなるかわからないですからね。人の命ですから、それを最優先で。子どものことは彼女がずっと望んでたことだし、今は幸せなことしかないなって思いますね。

——小学5年から二十数年の付き合いって相当長いですし、どんな存在なんだろうって思うんです。もう一緒にいるのが当たり前という感じですか?

加納:そんなベタベタもしないですけどね、うちら。相方以外の言葉がないんです。ビジネスパートナーって言い切ったら冷たいし。かといって、別に友だちでもないので。家族でもないけど、幸せなほうがいいとは思いますね。失敗しろとか、そんなんは思わないです。

「私の言葉も届けたい」というファンの気持ちが嬉しい

——「何言うてんねん」は100回目で完結しますね。“若手芸人”として連載を始めてから8年。ここまで走り抜いた感想は?

加納:連載自体がすごくありがたかったですね。最初はほんとに何も仕事がない状態で、SNSもやってなかったんで、月1回の連載が私の名刺がわりだったし、私の届ける言葉すべてだった。あとは劇場でネタ見てもらうみたいな状態が何年も続きましたから。これをきっかけに文章のお仕事をいただいたし。

ファンレターを見てると思うんですけど、やっぱり言葉を発信すると、相手も言葉を発信してくれるようになるんですよね。言葉を、自分が信じたら信じた分だけ「私の言葉も届けたい」と思ってくれるっていうか。その関係は表に出る人間の醍醐味でもあるし、そういうふうに文章を介してみんなから気持ちを受け取れたのはすごく嬉しいことですね。やっぱり人間って、どうしても言葉を残したいんだと思う、それが虚実どちらにせよ。

芸人としてのスタンスがブレることや、葛藤、反省もありながら、自分も含めて、読んでくれた人も含めて、肯定できた8年だったなと。私の軸となる存在としてずっと横にいてくれたのはありがたかったですね。

——読み返して恥ずかしくなるようなことはありますか?

加納:恥ずかしくはないけど、懐かしい。うわあ、そうか、今年ライブ出てないけど前はライブ出てたな、みたいな気持ちとか。この頃こいつとつるんでたな、みたいなことはありますね(笑)。

取材・文=吉田あき、撮影=後藤利江

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