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かけおち・青木マッチョのエッセイ連載「青木マッチョの三十年史」【第14回】「東京でのバイト生活」

  • 2026.7.11

>>「中学時代①」はこちら

お疲れ様です。かけおちの青木マッチョです。

前回、自分が消防士を辞めて、実家でのニート期間を経て足立区の北千住という街に上京したところまで書かせていただきました(第13回連載)。

読んでくださった方ありがとうございます。

読んでいない方は読んでください。お礼を言います。

とりあえず、自分はいろんな考えがありながら2020年6月に無事上京し、引っ越しもある程度片付きました。

ですが、芸人の養成所に行くにも翌年の4月まで1年弱あります。

消防士時代の貯金があるとはいえ、何かバイトをしなくてはなりません。

まず自分のバイト遍歴はというと、中学3年の時に借金をして20万円の電子ドラムを買ったので、それを返すために新聞配達をやったのと、高校の部活を引退して消防士への就職も決まって、時間が余ったので引っ越しのバイトをしたぐらいしかありません。

なぜそんなに割としんどめなバイトをしていたのかは、まるで記憶がございません。短い時間で給料が良かったからでしょうか(すみません記憶ありました)。この引っ越しのバイトは、自分の人生の中でもかなり上位に来るしんどさでした。めちゃくちゃ怒られましたし、自分は持久力もなかったですし、朝も早いしで辛かったです。

なので今でも街で引っ越し業者を見かけると、素直に尊敬の気持ちを抱きます。それなのにここ3年、毎年1回のペースで引っ越ししてすみません。せめてもの情けで、全部引っ越し業者は変えています。

そんなバイトしか(そんな言い方したら失礼ですよね。そのようなバイトしか)してこなかったので、せっかく東京に来たわけだし、まずはなかなかできないバイトをしたいなと思い、「レンタル彼氏」に目をつけました。レンタル彼氏とは、女性の方から指名をいただいて、お金をもらってその依頼者の方とデートをするというものです。

人の多い東京で、近くに知り合いがいないので誰かに会うかもしれないという不安もなく、しかも何かネタになる経験もできるんじゃないかということですぐに応募したいと思いました。

また、まだ俳優の道を諦めていなかったので、何か演技力がつきそうな仕事をしたいと思っていたのも理由としてあります。

まずはネットでレンタル彼氏の応募方法を調べました。すると、簡単なプロフィールや個人情報を入力して、自分の顔写真や全身写真を事務所に送って書類審査となるとのことでした。自分はすぐさま応募して、無事に書類審査を通り、電話での面接がありました。

その電話の面接もなんと合格し、事務手数料の2万円を振り込めばレンタル彼氏生活のスタートです! やったー! すぐに振り込みました。

指名ちゃんとされるのかな、どんな人が指名してくれるのかな、恋愛経験そんなにないけど大丈夫かな、でも逆にウブなのが売りになったりするのかな、やっぱり東京だからとんでもなくお金持ちの人も登録してて、タワマンなんかに入れたりするのかな、やっぱりお台場というところでデートするのかな……そんな思いを胸にワクワクで登録を待ちました!

登録されませんでした。はい。

振り込みしてから1ヶ月、2ヶ月と残酷にも時は進みましたが、まるで登録される気配がありませんでした。

騙されました。いや、東京とはそういうものなんでしょう。

「これが東京か」

そう思い、落胆しそうでしない変な感覚でした。東京はそうでなくっちゃ、とさえ思っていました。ここで、速攻で地元に戻るメンタルではなくて良かったです。

結局、バイト探しは振り出しに戻ります。

今まで新聞配達だったり、引っ越しのバイトをしていた自分からしたら、正直若い男女のいるバイトをするだけでもなかなかワクワクするものです。

そういう男女がいるバイトってどんな雰囲気なんだろうと胸を躍らせながらバイトを探します。

そのようなバイトで個人的に王道だと思うものは、居酒屋や焼肉屋(牛角)のイメージがあるのですが、その辺りは陽キャすぎて怖かったので避けて、その焼肉でも高級焼肉だったら少し落ち着いている「ちょうどいい」男女混合バイトなんじゃないかと思い、叙々苑のバイトを探しました。

すると、叙々苑のスカイツリー店を見つけました。スカイツリーは北千住からも割と近いし、そもそもスカイツリーで働くというのがまさに上京した感じがあってめちゃくちゃいいなと思いました。しかも賄いは食べたことのない叙々苑の焼肉で間違いないでしょう。

意を決して連絡してみると「今は募集していない」とのことでした。これバイトあるあるなんですけど、求人には載っているのにいざ連絡すると当たり前に断られることがあるんです。今思っても叙々苑でバイトしてみたかったなと思います。叙々苑でバイトしている人、賄いの内容だけでも教えてください。

焼肉屋のバイトをしようとした時に思った「賄いで肉が食べられる」というのはかなりいい発想だなと思い、それを満たすバイトを探し始めました。東京でのフリーター時期はめちゃくちゃ筋トレをするつもりだったので、無料でタンパク質補給をできたらだいぶありがたかったからです。

焼肉屋、ステーキハウス、肉屋、いろいろ探しましたが、なかなか自分の条件を満たすバイトが見つかりません。タンパクバイトの道のりは思ったより厳しいものでした。

そこで自分は思い出しました。自分が上京する際に、消防士時代の先輩や家族に言っていたことを。

「東京で日本一のパーソナルトレーナーになります」

そうでした、一応みんなにトレーナーになると言っていたのに、やれ叙々苑だ、ステーキだ何を言っていたんだと。特に最初のレンタル彼氏はなんだったんだと。とりあえずトレーナーにならなくては! トレーナーのバイトをするために、北千住エリアのジムを探し始めます。

まずは、かの有名なゴールドジム。ここは世界一大手と言っても過言ではないぐらいですので、給料や研修もしっかりしています。家からもかなり近いですし、普段ゴールドジムに通っていたのでバイトになれば無料でジムが使い放題。こんないい条件はありません。

ですが、もう一つ同じエリアにジムがありました。東京には数店舗しかないローカル的な24時間ジムでした。ゴールドジムに比べるまでもなく、ここはまだできたばっかりですし、ジムの客層もそんなにガチ勢みたいな人はおらず、割と健康志向のジムでした。

そう考えると、ゴールドジムにするのかなと思うかもしれませんが、自分は運命みたいなものを信じるタイプです。迷ったら運命みたいな。すみません、意味がわからないと思いますが、家から近い方のジム、つまり後者の24時間ジムでバイトをすることにしました。

自分が住んでいた家は、正直いろいろと内見して選んだわけではなくて、不動産屋から「ここしかないです」と言われて住んだ家だったので、何かと「この家は運命的に住んでいる」と思っていたんです。なので、その運命的に住んでいる家から近いジムもまた、運命的なジムなんです。書きながら、伝わっているか不安です。

そういう何かに迷ったときは、自分で選ばずに運命に従った方がなんだかんだうまくいくと思っています。自分で選んで失敗すると悔しいですけど、運命で失敗したら「それも運命」で逃げられますからね。常に逃げることを考えている。

他にも、その24時間ジムの方が若い男女がいそうだし、筋肉や筋トレの知識には自信があったので、失礼ですが少しランクを下げた方がみんなから一目置かれるかなと思ったのもあります。まあ、全てひっくるめて運命ですね。

そしてそのジムでバイトをすると決めて、ネットで応募して面接。ここで実感しましたが、元公務員というのは経歴としてとんでもなく強いです。さらに自分は「初対面の人間とは朗らかに話せる」という特殊能力がありますので、正直余裕で面接を通りました。

後から聞いた話ですが、本当はそのジムでバイト募集していなかったから断ろうとしていたみたいです。ですが、元公務員で十分すぎる筋肉量、そして明るい好青年だったので入れてくれたらしいです。やっぱり叙々苑もいけたんじゃないかな。

ここまでうまくいってましたが、バイト初日に想定外のことが起きてしまいました。

日本一のトレーナーになると言って東京に出てきたことへの言い訳のために始めたジムでのバイトでしたが、トレーナーとして採用されたのではなく、ジムの清掃のバイトとして採用されていました。そんなことあるのか。

ですが、せっかく採用していただいたのでちゃんと真面目に働きました。

気づけば一応買って行ったメモ帳は、清掃の仕方のメモ書きでパンパンになっていました。知らなかったのですが、そのジムは「清潔さ」を特に売りにしているジムだったらしく、かなり細かく清掃について学びました。

シャワールームは基本的に冷水で洗う(これは漫画「外道の歌」でも出てきましたね)、鏡は鏡を拭く用のウェットシートがあるのでそれを使う、ハンガーは全て端に寄せておく、などなど……すみません清潔さを売りにしてるジムってなんなんですか。

そのようになかなか細かいところもあって、ジムの清掃は大変ではありましたが、仕事は内容よりも「人」が大事だと思っています。

そのジムの先輩たちは基本的に若くて、大学生も多かった覚えがあります。

みんな結構テンションも高く、しっかり馴染めたかと言われたらそこまで馴染めていませんでしたが、ハブにされていたわけでもないので、居心地が悪かったということはなかったかなと思います。

さらに、こんなことを言うのは気持ちが悪いと思いますが、女性スタッフは可愛い人や綺麗な人しかいなかったです。気持ちが悪いとは思いますが。

自分は学生時代、そして消防士時代も身近な女子と絡むことは基本的になく、生まれて初めての男女の職場で、女子と絡まざるを得ない環境が嬉しかったのは事実でございます。初めての経験はなんでも嬉しいですよね。

まあ結局は、一番良くしてくれていた一つ年上の女性の先輩は別のスタッフと付き合ってましたし(ここに関しては同棲してた)、仲良くしてくれていた同い年の後輩女子(速攻で自分よりも上の立場になった)は、そのあと入ってきた男子大学生と付き合ったし、大学に入ったばかりの女子のめちゃくちゃ純粋だった後輩は、日に日に髪色が明るくなっていって、気づけばかなり奔放な恋愛事情を聞かされるようになって日に日にしんどくなったりと、消防士をやっていたら経験できない感情になることができました。必要だったかはさておき。

本当に自分はどこに行っても何も浮いた話が出ないなあと、よりいろいろと諦めることができました。

やはりびっくりしたのは、筋肉が物を言うはずのジムで働いて、誰よりも筋肉があっても本当に誰にも興味を持たれないし、何も起きないということでした。自分はモテるために筋トレしていなかったからノーダメージで済みましたけど、もしモテるために筋トレをしていたらジムの清掃中に鏡を叩き割るぐらいはムカついていたと思います。

ちなみにそのジムの忘年会の二次会でカラオケに行き(人生初の男女混合カラオケ)、現役女子大生とDAOKOさんと米津さんの「打上花火」を一緒に歌い(人生初のデュエット)、朝までカラオケにいたのですが(人生初のカラオケオール)、終わりの会計中に男の先輩から「なんかすみませんでした」と謝られたのはいい思い出です(人生初のなんとも言えない悲しさ)。

そんなジムのバイトもやり続けていたのですが、他のスタッフが増えていくにあたってシフトが制限されてきました。そこでそろそろ別のバイトも始めないとなあと、普段はあまり歩くことのない、家から駅とは反対側の道を歩いていた時のことです。

「○月○日オープン! オープニングスタッフ募集中」と貼られている「まいばすけっと千住柳町店」を偶然見つけました。

まいばすけっとというのは、関東を中心に店舗を構えるイオン系列のお店で、コンビニほどの広さの小さいスーパーです。

まさか自分がスーパーで働くとは夢にも思っていませんでしたが、運命を大事にするタイプの自分は即決でそのまいばすけっとに連絡を入れていました。もちろん面接は余裕で通り、研修を受けてその店舗へと配属になりました。

そこのまいばすけっとは、働く時間帯が朝・昼・夜と3種類あり、夜だけ少し時給が高かったので夜帯のシフトに入れていただきました。夜帯と言っても23時ぐらいまでですが。

夜帯の勤務する人はあらかた決まっていて、社員のMさんと、早稲田のお笑いサークルに入っている人、吉本以外の養成所は全て入ったというフリーの芸人の人、タバコをめっちゃ吸う大学生、そして次の4月から吉本の養成所に入ろうとしている自分の5人で回していました。

失礼ですが、全員普通に暗い男性で構成されていて、ジムのバイトとはまるで雰囲気は違いましたが居心地はかなり良かったのが悔しいところです。

まいばすけっとは基本的に楽しかった覚えしかありません。

業務は、覚えてしまえばあとは誰がいつ何をやるのかというのが事前にタブレットで指定されているので、超指示待ち人間の自分からしたらこれほどやりやすいものはなかったですし、周りの人も良かったです。

同じ店舗の同じ時間帯に2人もお笑いを志している人がいることも心強かったですし、大学生とはタバコを一緒にめちゃくちゃ吸いましたし、社員のMさんは見た目と雰囲気、話し方が死ぬほど怖いのですが(完全に見た目がシリアスモードのゾロでした)、話してみると普通に優しくて、気さくでした。常に業務に追われて忙しそうでしたが、バイトの自分たちに当たることは一切なく、接しやすかったです。

今思えば、自分が上京して初めにある程度親密になったのはMさんかなと思います。

バイト終わりに一緒に自転車でMさんおすすめのラーメン(田中商店)を食べに行ったり、バイト前に銭湯(ニコニコ湯)に行ったり、節分にまいばすけっとで売ってる恵方巻きを喫煙所で一緒に恵方を向いて食べたり、大晦日にコンビニで買ったお酒を喫煙所で一緒に飲んだりしました。俺は上京して何をしてるんだ。

でも自分はそんな、他の人からしたら当たり前みたいな、誰かと二人で気楽に行動するということをできなかった人間なので、25年間生きてきて初めて、そういう学校帰り的な「楽しさ」を感じていた気がするので、これだけでも上京した甲斐があったなと思っていました。

そんな青春を送っていた自分でしたが、だんだんとその店舗で勤務することが少なくなっていきます。

自分が「ヘルプ要員」になってしまったからです。

店長から他の店舗のヘルプを頼まれた際に、全く嫌な顔をせず少し遠めの店舗まで自転車を走らせてヘルプに行くのを謎に評価されて、人員が足りなくなったらすぐに自分が呼ばれるので、もともと入った千住柳町店に勤務することがほぼなくなってしまいました。

ヘルプ先ではいろいろありました。治安が悪すぎて、自分が商品を陳列している最中に外国人に肩パンを挨拶がわりに話しかけられたり、レジを打っている最中にヤンキーグループが商品を遠くから買い物かごにフリースローしてきたり、シンプルに喧嘩を売られたりしました(全て「すみません」と言うことで乗り越えました)。

そのあたりは全て筋トレへのモチベーションに繋がったから良かったのですが、クリスマスに他店にヘルプに行った際に、可愛い雰囲気の女子大生と二人きりの勤務になってしまって、何もないのはわかっているんですけど、勤務中ずっとソワソワして普通にミスをしまくり、その女子大生からはイラつかれて閉店後自分がトイレに行っているタイミングで帰られた時はなかなか来るものがありました。やっぱり自分は柳町店が好きだ。

そんなバイトの思い出が大半を占める上京1年目でした。

あとは、とにかく筋トレをめちゃくちゃ頑張って、筋肉のことしか考えていない食事を自炊して、バイト先に手作りの筋肉弁当を持っていったり、一人で富士急ハイランドに行ったり、河川敷でオカリナを吹く動画をYouTubeにあげているぐらいでした。

高校卒業してすぐに就職した自分からすると、給料は少なく、将来の不安はものすごかったですが、一番自由で、希望以外何もなく、失うものも何もない、素敵な1年間だったと思います。

自分の30年の人生の中でも、はっきりと「宝物」と言えるような、キラキラとした1年間でした。

そんな宝物の1年間をより輝かせたいので、レンタル彼氏事務所さん。

2万円返してもらってもいいですか。

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