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【小関裕太が探す 癒やしのデザイン】「旧渋沢邸」に刻まれた、時を超えるメッセージ

  • 2026.7.6
MASAAKI INOUE

第7回は建築史家・倉方俊輔の案内で、幾度もの移築を経て現存する「旧渋沢邸」を訪ねた。


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日本近代資本主義の父、渋沢栄一の自邸として1878年に竣工し、4代にわたり一家が暮らした「旧渋沢邸」。増改築と3度の移築を経て、現在は清水建設のイノベーション拠点「温故創新の森ノヴァーレ」内にその姿を残す。

<写真>中央が、1878年に深川に竣工し、後に三田、青森、潮見と3度の移築が行われた「表座敷」。控えめな意匠ながら、格調の高さが感じられる日本建築だ。清水建設では、毎週木曜日にガ
イド付きの見学ツアー(予約・抽選制)を開催している。

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「この建物は、明治初期に竣工した和風建築の表座敷と昭和初期に建てられた洋館が一つに融合した造りになっているのですが、どちらも当時の一般的な建築と比較するとかなりモダンなんですよね」

大阪公立大学教授で建築史家の倉方俊輔の案内で表座敷の2 階客間に上がった小関裕太が、天井を見上げて「ん?」と声を上げる。

「天井の目地が畳の割り付けと同じかたちになっているような気がします」

小関の着眼点に感心しながら、倉方が解説を続ける。

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「部材の構成だけで先進的な感覚を表現する。施主と設計者の意識の高さが随所に見られますよね」

数寄屋造りの簡素な美を踏襲しつつ、欄間や階段の手すりなど、要所に施されたオリジナルの工夫に小関は「時代の変化を見据えながら、建築全体を一つの作品として考えているように感じますね」と話す。

<写真>畳の割り付けと天井の格縁の配置を連動させる手法「畳うつし」を施した表座敷2階の客間。視線を上げるとまるで鏡に映る景色のような対称性が広がる。

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<写真>表座敷の欄間を手掛けたのは彫刻家の堀田瑞松。1階には葡萄(写真)、2階には桃のモチーフが彫られている。

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<写真>表座敷の2階廊下にたたずむ小関。欄干の下には、2枚の板を左右にスライドすることで光や風を通す伝統的なスリット「無双窓」が設けられている。

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1階の和室が続く長い渡り廊下を抜けると、洋館へと直結。石膏パネルの高い天井や寄せ木張りの床、部屋の傍らには暖炉と洋風のしつらえが並ぶ一方で、日本的な感覚も見え隠れすると倉方は指摘する。

「西洋の様式を取り入れつつも、装飾性は控えめに。さらに所々を左右非対称にすることで、自由な感覚や日本独自の美学を表現しています」

西洋との交流が盛んになり、社会が劇的に変化していくなかで、いかに日本が近代化し、発展していくかを模索し続けた渋沢栄一。この家は、時代の変化を柔軟に受け止め、新たな価値を生み出そうとしたその思想を体現しているようにも見える。

<写真>洋館客間の暖炉の前で語り合う倉方と小関。

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<写真>洋館でひときわ目を引く、繊細なレリーフで彩られた天井装飾。既存レリーフを型取りし、資料をもとに丁寧な復原が施されている。

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<写真>洋館の食堂の窓にはめられたステンドグラス。控えめな色彩や構成で、空間全体の雰囲気と調和している。

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建築は歴史と文化、そして人の思いをつなぐ

「旧渋沢邸」が歩んだ歴史を振り返りつつ、小関がふと「この家は何度も移築されながらも、なぜこんなにきれいに現存しているんでしょうか」と、素朴な疑問を投げかける。これには清水建設と渋沢家との親密な関係が関わっている。

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「実は、表座敷を手掛けたのは清水建設の礎を築いた大工棟梁の二代清水喜助。洋館を設計したのも、清水建設の前身である清水満之助店の元技師、西村好時です。人が作った歴史を人が伝え残す。こうした背景もあり、後身である清水建設が建物を受け継いでいるのです。建築は文化的価値だけでなく、人の思いを受け継ぐ役割もあるのではないでしょうか」

そう話す倉方のそばで、小関は「この家の中で、人が何を考え、どんな時間を過ごしていたのか。ここにいると、どんどん想像が広がっていく。そんな建築の見方も楽しいですね」とつぶやいた。

<写真>庭の水盤には、表座敷の美しい立ち姿が映り込む。水盤は建物を火災から守る放水設備の一部としても機能する。

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小関裕太が撮影した、色褪せることのない建築の独自性

「客間にかけられた欄間や飾り障子、階段の手すりなど、現代の感覚で見ても新鮮なデザインが随所に取り入れられていて、その独創性と統一感、そしてはずしのバランスが絶妙でした」(小関)

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今号のオフショットも!

丁寧に手入れされた広大な庭を望む、2階の客間にて。窓辺に腰を下ろした小関は、しばし静かに景色を見つめながら、「渋沢さんもここに座って、同じように景色を眺めていたんでしょうか」とひと言。時代を超えて受け継がれてきた建物の空気感に思いを馳せる、印象的なひとコマだった。

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小関裕太(Yuta Koseki)

1995年東京都生まれ。2003年に俳優デビュー。ドラマや映画、舞台などで活躍するほか、2024年にはフォトグラファーとしての作品集『LIKES』、2025年には30歳を記念したアーカイブブック『Y』を発売。現在、NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』に出演中。

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Photo : MASAAKI INOUE Text : HISASHI IKAI Styling : SATOSHI YOSHIMOTO Hair & Make-up : CHIKA HORIKAWA

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