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不合格だった事務所から再オファー、“総理の息子”として始まった人気俳優。24年後、刑事シリーズの顔になるまで

  • 2026.8.1
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2001年8月、インタビューを受ける小泉孝太郎(C)SANKEI

俳優として一度も作品へ出演していないのに、名前と顔はすでに知られていた。小泉孝太郎が芸能界へ入ったとき、父・小泉純一郎は現職の内閣総理大臣だった。2001年、父が首相へ就任すると、「首相の長男が芸能界を目指している」という情報に報道陣が殺到。多数の芸能事務所から声がかかり、翌2002年、孝太郎は俳優としてデビューした。

それから24年。現在の小泉孝太郎は、“総理の息子”として紹介されるだけの俳優ではない。5度の連続ドラマ化と複数のスペシャル版が制作された『警視庁ゼロ係』で主演を担い、長く愛される刑事シリーズの顔になっている。

父が首相になった途端、不合格が覆った

小泉家は、祖父や父が国会議員を務めてきた政治家一家だ。孝太郎も幼い頃から、周囲に「父の跡を継ぐのだろう」と見られていたという。しかし、本人が憧れたのは政界ではなかった。きっかけは、幼稚園の頃に見た映画『E.T.』。スクリーンの中で生きる俳優たちに魅了され、自分も向こう側へ行ってみたいと思った。

政治という現実的な世界で生きる父を見ていたからこそ、映画の非日常へ引かれたのではないかと、後に本人は振り返っている。俳優を目指し、オーディションを受けたものの落選。政治家の息子であっても、最初から芸能界への切符を用意されていたわけではなかった。

ところが、父が首相へ就任すると状況は一変する。首相の息子が芸能界を志望していると報じられ、数多くの事務所から誘いが届いた。その中には、一度自分を落としたところもあったという。不合格だったはずが、父の肩書によってオファーへ変わる。孝太郎は当時、「世の中ってそういうものか」と感じたことを率直に明かしている。

二世であることが扉を開いた。その事実をごまかさずに受け止めたところから、小泉孝太郎の俳優人生は始まったのである。

「総理の息子」と演技力の差に苦しんだ20代

2002年、ドラマ『初体験』(フジテレビ系)で俳優デビュー。事前に本格的な演技レッスンを受けていたわけではなく、初めての撮影では、テレビで見ることと実際に演じることの違いに圧倒された。周囲の俳優やスタッフが迷いなく仕事を進める中、自分だけが取り残されているように感じた。憧れて入った世界だったからこそ、自分のふがいなさが情けなく、苦しかったという。

しかも、世間が見ているのは「小泉純一郎首相の長男」だった。作品へ出演するたびに父の名前が付いてくる。爽やかな容姿や礼儀正しい受け答えも、政治家一家で育った“好青年”という印象を強めた。

それでも孝太郎は、俳優の道を離れなかった。『ナースマン』や映画『踊る大捜査線』シリーズなどで経験を積み、『ハケンの品格』(2007年)では誠実な会社員を演じた。2013年のNHK大河ドラマ『八重の桜』では徳川慶喜を演じ、権力者の孤独を、政治家である父の姿と重ねたという。

さらに2015年のTBS日曜劇場『下町ロケット』では、主人公たちを追い詰める嫌みな役に挑戦。爽やかな二世俳優というイメージを逆手に取り、冷たさを感じさせる悪役でも存在感を示した。父の影を消そうとするのではなく、自分の経験も印象も、役へ使えるものに変えていったのである。

“エリートなのに空気が読めない”刑事役

小泉孝太郎の代表作となったのが、2016年に始まった『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』(テレビ東京系)だ。演じる小早川冬彦は、東大法学部卒のキャリア警視。肩書だけを見れば隙のないエリートだが、周囲の気持ちを考えずに発言する“究極のKY”でもある。

空気は読めないが、事件は読める。

丁寧な口調と人当たりのよい笑顔で、相手が触れてほしくないことまで平然と口にする。その冬彦と、松下由樹演じる口の悪いベテラン刑事・寺田寅三との掛け合いが、シリーズの大きな魅力となった。

政治家一家出身の小泉に備わった上品さや、爽やかな好青年という印象が、世間知らずなキャリア警視という役に説得力を与える。一方で、赤いシャツを着て自由に振る舞い、寅三から怒鳴られても気にしない冬彦は、それまでの小泉にはなかったコミカルさを引き出した。本人も回を重ねる中で、自分を縛っていたものを外し、冬彦を軽やかにしていったと語っている。

『警視庁ゼロ係』は連続ドラマとして5シーズンが放送され、スペシャルドラマも制作された。2022年の“さよならSP”を経た後もシリーズは終わらず、2024年には『警視庁ゼロ係~スカイフライヤーズ~』として復活した。開始から8年を経ても新作が作られたことは、小早川冬彦が小泉孝太郎以外には考えにくい役になった証しだろう。

父の名前ではなく、役名で待たれる俳優へ

2025年にはドラマ『失踪人捜索班 消えた真実』(テレビ東京系)へ出演し、捜査をめぐる秘密を抱えた警視庁捜査一課の刑事を演じた。若い頃の爽やかな青年役から、悪役、権力者、コミカルな変人刑事、捜査一課のエースへ。年齢を重ねるごとに、任される立場も広がっている。

小泉孝太郎が芸能界へ入る際、父の存在が大きな追い風になったことは間違いない。本人も、その幸運を隠そうとはしていない。しかし、父が首相でなくなった後も俳優生活は続き、デビューから24年が過ぎた。今では「小早川冬彦が帰ってくる」ことを喜ばれる、長寿シリーズの主演俳優である。

二世という肩書は、最初に人の目を向けさせることはできる。だが、同じ役で何年も新作を待ってもらうことまではできない。2002年、世間は小泉孝太郎を“総理の息子”として見た。それから作品を重ねた現在、彼は父の名前ではなく、自分の役名で帰りを待たれる俳優になっているのである。


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