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船舶免許を取得→ヨットレースまで“10年主催”した大物司会者。“海の上”でも止まらない探究心

  • 2026.8.1
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2021年9月、「キリンプラズマ乳酸菌関連発表会」に出席したタモリ(C)SANKEI

鉄道、地形、坂道、古地図、断層。タモリの趣味を並べると、その知識の広さに驚かされる。だが、彼が強い関心を持つ場所は、陸の上だけではない。タモリは船舶免許を取得し、長年にわたってヨットを愛好してきた。芸能界を代表する司会者が船を操縦できるというだけでも意外だが、さらに興味深いのは、タモリにとって船が単なるぜいたくな遊びではないことだ。

船に乗るためには、風を読み、潮の流れを知り、海図から自分の位置を把握する必要がある。それは、目の前に広がる景色の奥にある仕組みを読み解く行為でもある。考えてみれば、いかにもタモリらしい趣味なのだ。

船に乗るため、海図まで読み込んだ

船舶免許は、車の運転免許とは性質が異なる。どこを進めばよいのか、目の前の景色だけでは判断できない場所もある。浅瀬や岩礁、航路、灯台などを海図から読み取り、周囲の目印と照らし合わせながら現在地を確認する。天候や波、ほかの船の動きにも注意を払わなければならない。

タモリが免許を取得したのは、現在とは区分が異なり、1級から4級まで存在していた時代だったという。2026年に秋元康とラジオで船舶免許について語った際には、船上から煙突などの目標物が何度の方向に見えるかを測り、自分の位置を割り出す試験があったと振り返っている。

さらに、海図について「眺めているだけで」楽しめるという趣旨の発言もしていた。目的地へ着くための道具であるはずの海図を、それ自体で楽しめる。この感覚は、地図を見ながら土地の成り立ちを想像し、街を歩けば高低差や暗渠に目を向けるタモリの姿と重なる。

何もない海にも、見えない情報がある

一見すると、海の上には何もない。山も建物も線路もなく、同じような水面がどこまでも続いている。しかし、海図を開けば、そこには水深の違いや海底の地形、船が通る航路、危険な場所が細かく記されている。何もないように見える場所に、実は膨大な情報が隠されているのだ。

タモリが興味を示してきたものにも、同じ特徴がある。

普段何げなく歩いている坂には、土地が削られてきた歴史がある。街中の曲がった道には、かつて流れていた川の痕跡が残る。電車の路線や駅の位置にも、地形や都市計画の事情が反映されている。表面だけを見れば、ただの風景にすぎない。だが、少し角度を変えれば、そこに理由や規則が見えてくる。

タモリは知識を集めて自慢するのではなく、目の前のものが「なぜそうなっているのか」を知ることそのものを楽しんできた。海もまた、その探究心を刺激する巨大なフィールドだったのだろう。

ヨットレースを“日本一楽しい大会”にした

タモリの海への愛情は、自分で船に乗るだけにとどまらなかった。2000年代後半からは、自らの名前を冠したヨットレース「タモリカップ」を主催。沼津、横浜、福岡、富山などを舞台に、約10年にわたって大会が開かれた

掲げられたのは、「海を愛するタモリの日本一楽しいヨットレース」という言葉だった。本格的な競技でありながら、速さだけを競う息苦しい大会にはしない。参加者が海を楽しみ、レース後には食事や音楽を囲んで交流するところまで含めて、ひとつの催しにする。

この雰囲気もまた、タモリが作ってきた番組に似ている。専門家だけが知識を披露するのではなく、詳しくない人も置き去りにしない。面白がりながら話を聞いているうちに、いつの間にか鉄道や地形、音楽の奥深さへ引き込まれている。

難しいものを難しいまま見せず、遊びに変える。タモリカップは、そんな彼の姿勢が海の上にまで広がったものだったのかもしれない。

ただ「乗り物」が好きなわけではない

船舶免許を持っていると聞けば、タモリは乗り物好きなのだと思うかもしれない。もちろん、鉄道や船への関心は深い。しかし、タモリが本当に引かれているのは、乗り物そのものだけではないのだろう。鉄道を知ろうとすれば、線路が敷かれた土地や都市の歴史が見えてくる。

船を操縦しようとすれば、海図や天候、風、潮の流れを理解しなければならない。ひとつの対象を入り口にして、その背後にある世界全体へ関心を広げていく。だからタモリの趣味は、どこまでも深くなる。

船舶免許も、肩書を増やすために取った資格ではない。海を眺めるだけでは届かない場所へ進み、自分の力で海を読み解くための手段だったのではないだろうか。地上では坂道や線路をたどり、海へ出れば風や海図を読む。タモリにとって世界は、ただ通り過ぎる場所ではない。そこに潜む仕組みを見つけ、面白がるための、終わりのない教材なのである。


※記事は執筆時点の情報です

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