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27年前、終了を宣言した3人が終わらせ方ごと描き直した 「単なる再結成」ではない"したたかさ"

  • 2026.7.31
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1999年10月、トーキョーベイNKホールでライブをおこなったTM NETWORK(C)SANKEI

いまもこの3人は、TMNETWORKとしてステージに立ち続けている。当たり前のようにその名を掲げて歌う姿を見ていると、この名義が一度、はっきりと終わりを宣言されていた事実を忘れそうになる。1994年、TMNとして活動を終了させたとき、それは撤回の余地がない終わりのはずだった。だが1999年、彼らは同じ3人でステージに戻ってきた。しかも「復活」というより、もっとねじれた理屈を携えて。

TM NETWORK『10 YEARS AFTER』(作詞・作曲:小室哲哉)ーー1999年7月28日発売

再始動そのものの第1弾ではない。この曲が世に出たのは、先に放たれたシングル『GET WILD DECADE RUN』の、わずか6日後のことだった。連続で撃ち込まれた2発目という位置づけこそが、この曲の成り立ちを読み解く鍵になる。

終わらせ方まで自分で書き換える

TMNという名義が終わりを告げたのは1994年のことだ。当時、ファンの多くは彼らが終了の際に語った「還暦になる」までは復活はないだろうと、そのまま活動の幕引きとして受け止めていた。

再始動の発端は、1997年9月、ロサンゼルスにさかのぼる。小室哲哉が木根尚登に声をかけたのが始まりだったという。同じ年の12月、深夜ラジオの生放送でその意志が公にされ、1999年5月には正式な発表の場が持たれた。

ここで興味深いのは、彼らが持ち出した理屈だ。終了を宣言したのはTMNという名義であって、TM NETWORKという名義そのものが終わったわけではない。そう整理し直すことで、彼らは矛盾なく舞台へ戻ってきた。撤回でも、なかったことにするのでもなく、名義の輪郭を後から描き直す。この後付けの論理こそが、彼らの再始動を単なる懐かしの再結成とは違うものにしている。終わらせた側が、終わらせ方ごと自分たちで書き換えたのだ。

彼らのようなコンセプチュアルなユニットであれば、終了の宣言というのは後戻りのできない一線だ。一度そこへ線を引いてしまえば、戻るときは決まって「再結成」という新しい看板を掲げ直すことになる。だがこの3人は、看板を掛け替えるのではなく、もともとの看板の読み方を変えてみせた。TMNは確かに終わった。だがTM NETWORKという広い名前は、最初から終わっていなかった。その解釈のねじれをそのまま公の場に持ち出せる胆力に、この再始動特有のしたたかさがある。

遠く離れた場所からひとりで仕上げる速さ

『10 YEARS AFTER』は、小室哲哉がハワイに所有するスタジオで書き上げた。当時としては先進的な方法で、ハワイと東京をネット回線でつなぎながら制作が進められたという。この身軽さは、当時の小室哲哉の立ち位置を映してもいる。プロデューサーとして数々のヒットを生み出した全盛期の直後、彼はTMという原点に戻り、かつての仲間との共同作業に短い時間だけ手を止めた。

派手な制作エピソードで飾らずとも、この一点だけで、彼が抱えていた制作のスピード感と、TMという場所への向き合い方が伝わってくる。作詞・作曲・編曲・プロデュースをひとりで手がけること自体は、小室哲哉にとって特別なことではない。むしろその手数の速さと、TMという古巣に戻ってなお崩れない集中力にこそ、この曲の発見はある。

思えば、離れた土地から音楽を作り上げるという発想そのものが、当時としてはまだ珍しい部類だった。かつて大所帯のプロジェクトを渡り歩いてきた男が、原点であるTMに戻るときだけは、驚くほど身軽な手つきに戻る。その落差にこそ、彼のTMへの向き合い方が透けて見える。

別々の道を歩んだ末に並び直す三人

歌詞の視点は、地球を俯瞰するような大きな景色から始まり、少しずつ地上の、たったひとりの心情へとズームインしていく構成を持つ。80年代のTMが好んだ、どこか幻想的で抽象度の高い言葉選びとは違う質感が、ここにはある。1999年の小室哲哉は、もっと地に足のついた、実感のこもった言葉でこの曲を書いている。

TMN終了後、3人はそれぞれ様々な道を歩んでいた。小室哲哉はプロデューサーとしての全盛期を駆け抜けた直後で、宇都宮隆はミュージカル『RENT』の舞台に立ち、木根尚登はソロ活動と執筆業に軸足を移していた。

畑の違う時間を過ごしてきた3人が、示し合わせたように同じ場所へ戻ってくる。これは特別な人たちだけに起きる出来事のようでいて、実のところ、離れていた時間の分だけ違う顔を持ち帰り、それでも同じ名前の下でもう一度並び直す、という誰にでも覚えのある感覚に近い。学生時代の仲間と何年かぶりに集まったとき、それぞれの近況を持ち寄って場が始まる、あの感触だ。読者自身のここ10年と重ねてみたくなる曲でもある。

面白いのは、3人がそれぞれ別のジャンルの現場を踏んできたことだ。音楽と流行を行き来してきたプロデューサーの現場、舞台という生身の現場、文章という言葉の現場。異なる場所を経たからこそ、再び合流したときのサウンドの重なりには、以前とは違う厚みが生まれている。同じ3人がただ元の場所へ帰ってきたのではなく、それぞれが持ち帰った経験の分だけ、TM NETWORKという名前の中身も更新されている。

終わりを終わりのままにしない

『10 YEARS AFTER』は、派手な数字や記録で語られる曲ではない。むしろ、終わらせた名義を自分たちの手で描き直し、その理屈ごと持ち帰ってきたという一点にこそ、この曲の価値がある。

2026年4月、TM NETWORKは「TMNETWORK」へと名前を更新した。TM NETWORKが終わったのか、TM NETWORKとTMNが再び合流したのか、そこはまだよくわからない。この先、彼らがどんな色を見せてくれるのか、彼らの生み出す夢の続きを見ていたい。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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